第23話 女の嘘は、許すのが男だ! って誰かが言ってた

 メルクとエストの戦いを見たリッチ。


「フフフ! これで一勝一敗ですね……残り時間はあと30分ってとこですか。ユーキさん! そろそろ苦しくなって来たんじゃないですか? 結婚していただけるなら、すぐ楽にしてあげますよ?」


「絶対! やだー‼︎」



 リッチの言葉を聞いて、パティが心配する。


「ユーキ! 苦しいの? 大丈夫?」

「だ〜いじょ〜ぶ〜!」

「ゴメンね! もうちょっとだけ我慢しててね!」

「う〜ん! パティ、ふぁいとぉ〜!」



 そんなやり取りをしていると、エストが転移され帰って来る。



「調子はどうだい? ビスト兄さん!」

「やあエスト! そっちは勝ったようだね」

「うん、正直かなり危なかったけどね」

「こっちも結構手間取ってるんだ」

「手伝うよ、兄さん」



「そういえば、そっちはもう帰って来たのに、何で先に勝ったアイ君がまだ帰って来ないのよ‼︎」


 リッチに対して文句を言うパティ。


「アイ君? ああ、あの団長さんの事ですか? 彼ならほら……」


 そう言って、アイバーンが戦っていた場所の映像が、再びモニターに映し出される。


「今、四天王の部下達を相手に戦っていますよ」


「なんですってー‼︎ ちょっと、どういう事よ? 4対4の戦いじゃなかったの?」

「はて? 僕は4人対4人なんて、一言も言ってませんが? 僕は四天王達とあなたたちって言ったんですよ!」


「こんのぉ! ああ、そういう事言うのね……分かったわ、あんた! 楽しい死に方を考えておきなさい!」



「終わった? じゃあそろそろ僕達の相手をしてよ」

「メル君の次は君の番だよ? パティちゃん」


「フンッ! あたしをあんな、軟弱優柔不断男と一緒にしないでくれる?」





「ハクシュッ‼︎ 何だか悪口を言われてる気がしますー」





「ところであんた達!」

「ん?」

「何だい?」



「同じ顔が揃ったのなら、消えなさいよ‼︎」

「いや、ババ抜きじゃないんだから」






 ー セラVSノーム ー


「いつまで逃げるつもりですか?」

「当たったら痛いんだからぁ、逃げるのは当たり前ですぅ!」

「でもこのままだと時間切れでユーキさんが死んでしまいますよ?」


「分からないのはぁ、そこなんですぅ」

「何がですか?」


「あのオーナーはぁ、ユウちゃんと結婚したいんですよねぇ?」

「そうですよ」

「なら何でぇ、結婚したい相手に死の呪いなんてかけるんですかぁ?」


「あの方はちょっと変わってましてね……自分の物にならないのなら、殺してしまえって考える人なんですよ」

「頭のネジが飛んでますぅ」

「フフ、私もそう思います」


「何であなた達はぁ、そんな飛んでる人の元で働いてるんですかぁ? 何か弱みでも握られてるんですかぁ?」

「何でと言われましても……ただ大金を貰えるから、ですかね」


「はあ……単にお金の為ですかぁ……何かもっと事情があるのかと思ってましたぁ……ガッカリですぅ」

「何とでも言いなさい! あなた達を倒せば、しばらく遊んで暮らせるだけのお金が貰えるのよ! こんな楽な仕事は他に無いわ‼︎」



「楽な仕事?」


 急にセラの雰囲気が変わる。


「あなた如きが私を倒せると思ってるの?」


 目を見開いて睨むセラに、ゾクッとなるノーム。


「な、何よ! いくら凄んだって、魔法が使えないんじゃ何も出来ないでしょ⁉︎」


「ホントにそう思ってる?」

「ど、どういう意味かしら?」

「私が何の対策もしないで乗り込んで来たと思ってる?」



 セラの言葉に迷い始めるノーム。



(どういう事? 彼女もあらかじめ自分自身に魔封じの結界を張ってるの? い、いや、それなら何で魔法を使わないの? 使えないと思わせて、私を油断させる為? いや、元々私は油断なんかしていない。なら考えられるのは時間稼ぎ……そうよ! ハッタリを仕掛けて私を動揺させて、仲間が助けに来るのを待ってるんだわ!)



「フフ! なるほどね! お仲間が助けに来るのを待ってる訳ですね! でも残念ながら、この場所はそう簡単には見つかりません!」


「はあ……残念なのはこっちよ。あなたはもっと頭のキレる人だと思ってたのに、そんな浅はかな結論に行き着くなんて」


「そ、その手には乗りません! 仲間が来る前にあなたを倒します!」



 魔法弾を連射するノーム。

 だが避けずに腕で払い落とすセラ。


「なっ⁉︎」

「あなたの力はこんなもんですか?」


 再び動揺するノーム。


(素手で払い落とした? そんなバカな⁉︎ 本当に魔法が使える? じゃないと素手で魔法弾を受けて平気でいられる筈が……)


 驚くノームがセラの不自然な動きに気付く。


(足を引きずってる? そ、そうよ! 今まで生身で魔法弾を受け続けて来たんだもの、ダメージが無い筈は無い……それはつまり治癒魔法が使えない証拠!)



「フフ! あなたもとんだ役者ですね」

「どういう意味?」

「やはりあなたは魔法が使えない! そしてあなたの目的はやはり時間稼ぎ! そうはさせない! 私の最大の一撃を持って、あなたを倒します‼︎」


「やめておきなさい! 後悔する事になるわよ!」

「もうあなたの言葉は届きません! くらいなさい‼︎」


「サイレンスダークネス‼︎」


 巨大な闇の塊が、ノームの頭上に現れる。


「この大きさなら、受ける事もかわす事も出来ません‼︎ 覚悟しなさい‼︎」


 セラに向かって飛んで行く球体。



「ンフフー、これを待ってたんですぅ」

「え?」



 ニヤリと笑い、魔装具を具現化させるセラ。


「バカな‼︎ 魔法が使える筈は‼︎」

「ところが使えるんですねぇ……魔装‼︎ マジックホール‼︎」



 魔装したセラの背中の羽が数本飛んで行き、空中に魔方陣を描く。

 その魔方陣に、ノームの放った闇魔法が吸い込まれて行く。



「そんな……私の最大の魔法が……い、いや! それよりも、どうして魔法が使えるんですか⁉︎」

「結界や呪い等の特殊能力型の魔法は、術者のレベルが相手のレベルを上回っていないと発動しません。当然知ってますよね?」


「勿論それは知ってます……だからレベル5の私がレベル3のあなたに結界を……ま、まさか⁉︎」


「そ! 答えは簡単! 私のレベルがあなたより上って事です……調査不足でしたね」

「じゃ、じゃああなたの本当のレベルは?」

「私はレベル7です! だから何人といえど、私に特殊能力型の魔法をかけるのは不可能なのです‼︎」

「そ、そんなー‼︎」



「アクセラレーション‼︎」


 空中の魔方陣が回転を始める。


「じゃ、じゃあ何で魔法が使えないフリをしてたんですか?」

「んん? 私はレベルは7でも治癒魔法専門だから、攻撃魔法は一つも持ってないんですよ。だからあなたが一撃で決まる様な大技を出すのを待ってたのに、細かい技をちょこちょこちょこちょこ出して来るもんだから、色々お芝居をしてみたんですよ」


「まんまと乗せられたという訳ですか」

「だから後悔するって言ったでしょ?」



「リフレクション‼︎」


 魔方陣より先程吸収した闇魔法が、更に威力を増して飛んで行き、ノームに直撃する。



「キャアアアア‼︎」


 直撃を受けて、倒れ込むノーム。


「この……ペテン師……」



 細目に戻っているセラ。


「ブゥー‼︎ 私はペテン師じゃないですぅ! ちょっぴり嘘つきなだけですぅ!」




 ー セラVSノーム ー


 セラの勝利。

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