第22話 いわゆる、キン肉マンパターンだね
ザウスが敗北した事に怒るリッチ。
「バカな! ザウスは四天王一の使い手だぞ! それをいとも簡単に⁉︎ ……さすがは王国騎士団の団長、と言う事か……」
(ええー! アイ君って団長さんだったの⁉︎ ……この国、大丈夫か?)
驚くユーキ。
(アイ君って団長だったの? てっきり1番下っ端だとばかり……この国大丈夫なの?)
えらい言われようのアイバーンだった。
モニターに気を取られているパティに向けて、ビストが風をまとったクナイを投げる。
「危なっ!」
それを寸前でかわすパティ。
「戦いの最中によそ見なんて……随分余裕だね? パティちゃん!」
「あんたなんか、よそ見しながらで充分なのよ!」
「言ってくれるじゃないか!」
(あっぶなー! 魔装無しであんなの食らったら、ひとたまりもなかったわ)
めちゃくちゃ焦っているパティだった。
ー メルクVSエスト ー
エストの投げたクナイをメルクが弓本体で弾き、メルクの放った矢をエストがクナイで弾くといった攻防が繰り返される。
「中々やるじゃないか、メルク君!」
「どうも」
「ところで、一つ提案なんだけど?」
「何です?」
「メルク君って言いにくいから、メル君って呼んでもいいかい?」
「え? あ、ハイ……それは別に構いませんけど。ユーキさんやパティさんにもそう呼ばれてますし」
「ハハ、ありがとう! 今からそう呼ばせてもらうよ」
「じゃあメル君! こんなのはどうかな?」
エストがクナイを2本横並びに投げるが、メルクの体の左右を抜けて行く軌道だ。
(投げミス? いや!)
何かを察知したメルクが咄嗟に弓を縦にして構えると、メルクの体を通過する時に、何も無い空間で突然水が弾ける。
「ハハ! よく気付いたね⁉︎ そう! 今のはクナイとクナイの間に、極限まで細くした水の刃を張ってたんだ……防御してなかったら、真っ二つとまでは行かなくても、かなりのダメージを受けていただろうね」
「じゃあ次は、こんなのはどうだい?」
そう言って見当違いの方向に、多数のクナイを投げるエスト。
(また水の刃を張ってる?)
防御姿勢を取るメルクだったが、投げられたクナイがいきなり方向を変えてメルクに向かって来る。
「何っ⁉︎」
素早くその場を離れるが、更に方向を変えてメルクを追撃して来るクナイ。
矢を何本か放ちクナイに当てるが、一瞬動きが止まるだけでまた追いかけて来る。
(落とすとこまでは行かないか⁉︎)
矢を放ちつつ、クナイをかわして行くメルク。
(追尾型? いや、それにしては反応がおかしい)
エストの方を見て何かに気付き、エストの手元を狙って矢を放つメルク。
「くっ!」
エストが慌てて矢をかわすと、メルクを追尾していたクナイが全て地面に落ちる。
「やはり!」
「へえ、いつ気が付いたんだい?」
「クナイの動きがおかしかったから、もしかしてと思ったんですよ」
「おかしい? ちゃんと操作したつもりだったんだけどなぁ?」
「反応が良過ぎたんですよ……まるでこちらの動きを先読みしてるみたいに。追尾型なら、必ず目標が動いてから反応する筈ですからね」
「なるほどねー! 失敗失敗! でも普通はそんな些細なとこ気付かないけどね……大したもんだよ」
「どうも」
「ではお返しに……僕も似た様な技を持ってるんで、お見せしますね。と言っても最近パティさんに教わったばかりなんですが」
「へえ、何だい? 楽しみだなー」
弓を力一杯引き、叫ぶメルク。
「ホーミング、アローズ‼︎」
メルクが弓を放つと、5本のアローズがエストめがけて飛んで行く。
それを寸前でかわすエスト。
「当然帰って来る訳だ!」
弧を描いて帰って来るアローズを、再びかわすエスト。
「いくら追尾型でも、こんな単調な動きじゃ簡単にかわせるよ‼︎」
「では、これならどうです?」
メルクが指揮をとるように右手と指を動かすと、アローズが縦横無尽に動き出す。
「凄いね! そんなにも複雑な動きが出来るんだ⁉︎」
クナイで弾いたり体全体で避けたりしながら、なんとか凌いでいるエスト。
「こ、これはちょっとキツイかも……なら!」
「ヴォルテックス‼︎」
エストの周りを囲むように水流が起こり、アローズが全て巻き込まれて消滅する。
「アローズが水流に吸収された?」
水流を解除するエスト。
「これで君の矢は僕に届かない……どうする?」
「なら、その流れに負けないぐらい撃ち込めばいいだけの事です!」
「単純だね……試してみるかい?」
「ええ……行きます‼︎」
「無駄だって事を、思い知らせてあげるよ」
「ヴォルテックス‼︎」
再びエストの周りに水流が起こる。
「さあ! どこからでも来なよ!」
「サウザンドアローズ‼︎」
斜め上空に放たれた千の矢が大きく弧を描いて、エストが起こした水流のただ一点に集中して飛んで行く。
「くっ! 水流が追いつかない!」
全く同じ箇所に次々飛んで来る矢を防ぎきれず、ついに矢が水流を通り抜け、エストの右腕を貫く。
「うあああ‼︎」
右腕を押さえてうずくまるエスト。
「き、君、本当にレベル3かい?」
「? どういう意味ですか? 物足りませんか?」
「いやいや、逆だよ! 君、最近レベル測定してるかい?」
「え? そういえば、ここしばらくはしてないですね」
「じゃあ測定する事をオススメするよ……この強さは絶対レベル3なんかじゃない! レベル4……あるいはそれ以上……」
「ホントですか? 今度測ってみよ」
「ところでエストさん……その腕のダメージでは、もう戦うのは無理だと思いますが……降伏して、カギを渡してくれませんか?」
「ハハ! 僕もそうしたい所だけど、簡単に負けちゃうと兄さんがうるさいからねー……だからさ!」
「うぐっ!」
エストが話し終えた瞬間、どこからか飛んで来たクナイが、メルクの背中に刺さる。
「い、一体どこから? いや、いつの間に? くっ!」
うつ伏せに倒れ込むメルク。
背中に刺さったクナイは水になって消えていく。
「僕もこんな戦い方はしたくないけど、仕方ないんだ。ゴメンね……僕はビスト兄さんの加勢に行かないといけないから、じゃあね」
立ち去るエスト。
「ま……待て……行かせな……い……」
何とか起き上がろうとするメルクだったが、体に力が入らず、そのまま倒れ込んでしまう。
「メル君〜‼︎ しっかりしてぇ〜! 死んじゃダメだからねぇ〜‼︎」
モニターを見ていたユーキが、メルクの安否を心配する。
「メル君負けたの? まさか、死んじゃった?」
パティも信じられないといった様子だ。
「カギも奪えずに死ぬなんて……なにやってるのよバカ‼︎」
「パティ〜、そんな言い方酷いよぉ〜!」
だが、死んだかと思われたメルクが体を起こし、仰向けになる。
「何をやってるんだ僕は‼︎ 今回の戦いはユーキさんの命がかかってるってのに! 絶対に負けられない戦いだったのに!」
左腕で目の当たりを覆うメルク。
「くそっ! 情けない‼︎」
悔しさを噛みしめる様に、右腕で地面を殴るメルク。
その様子を見ていたユーキとパティ。
(良かった、メル君生きてる!)
安心するユーキ。
「メル君生きてたみたいね……良かったわ」
(何だよパティ、口ではあんな事言っときながら、やっぱり心配してるんじゃないかー)
「これで、あとであたしが直々に息の根を止める事が出来るわ!」
「パティぃぃぃ〜」
ー メルクVSエスト ー
エストの勝利。
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