第19話 四天王VSユーキを愛し隊
「セラさんが凄腕のヒーラーだと主より聞いていたので、呪いを解除してもらおうと思ったんですが、どこかに連れて行かれちゃったのです」
「相手もそれは知っていたみたいね……だから真っ先にセラを引き離した。こうなったら正攻法で行くしかないわね」
「ユーキちゃんを奪われちまったか……まあいい、どの道今回ばかりは逃げねえよなー? 金の、おっと! 黄金の変態さんよ‼︎」
「当然だ……全てのカギを奪い取るまで、我々が去る事は無い‼︎ さあ! 私達も始めようか!」
「いいぜ! だがここは狭過ぎる……もっと広い場所に行かねーか? その方が、お互い全力を出せるだろ?」
「……よかろう」
「じゃあこっちへ来な!」
そう言うと、ザウスの足下に魔方陣が現れる。
「先程と同じ、転移魔法か……」
魔方陣に入るアイバーンを心配するユーキ。
「アイ君!」
「少しだけ待っていてくれ、ユーキ君……すぐに帰って来る」
「気を付けてねぇ!」
ザウスと共に消滅するアイバーン。
「ノームとリーダーが行ったか……じゃあ僕達も行こうよ! メルク君」
「ご指名なら行かない訳にはいかないですね」
エストの前にも魔方陣が現れ、その中に入るメルク。
「メル君‼︎ 頑張ってねぇ‼︎」
「ハイ‼︎ 行ってきます! ユーキさん」
転移されるメルクとエスト。
「さて、それじゃああたしも行ってくるわ……ちょっと待っててね、ユーキ」
「うん……気を付けて、パティ」
「ロロ!」
「ハ、ハイです!」
「ユーキをお願いね……」
「ハイなのです! ユーキさんはロロが責任を持って幸せにするのです!」
「何をだよ〜!」
ビストの前に立つパティ。
「さあ、あたし達はどこへ飛んで行くのかしら?」
「フフ……いや、僕達はどこへも行かないよ」
「どういう事?」
「だって君にとっての最大の弱点は、ユーキちゃんだろうからね……ここで彼女の苦しむ姿を見せるのが、君には1番効果的だと思うんだ」
「ユーキが最大の弱点ですってー?」
キッとビストを睨むパティ。
「もうそうなのよー! あたしはユーキの為なら例え火の中水の中! ユーキが望むなら、神にでも悪魔にでも嫁にでも愛人にでもなってあげるわー‼︎」
「いや、望まないからぁ〜」
「もうっ、ユーキったら! 照れ屋さんねー!」
「照れてな〜い!」
「ロロ君! 僕を裏切るのかい?」
先程ロロに吹っ飛ばされたリッチが起き上がって来る。
「ロロはあなたに仕えた覚えは無いのです! ロロの主は1人だけなのです!」
「ふう……まあいいさ……僕は結果的にユーキさんさえ手に入れれば満足なんだ」
「残念ね! その願いが叶う事はないわ! あたし達が全力で阻止するからね!」
「フフ……なら仲間達が倒される様子を見せてあげましょう」
そう言ってリッチがリモコンを操作すると壁に3つのスクリーンが現れ、様々な場所に転移したアイバーン達の姿が移し出される。
「アイ君! みんな!」
「仲間達が死に行く様を見れば、ユーキさんの考えも変わるでしょうからね」
「ホント最低ね‼︎ あんた‼︎ あんな奴に仕えてるあんた達も、程度が知れるわ!」
「いやー、耳が痛いよ! でもこれも仕事だからね……さあ、僕達もやろうか!」
魔装具を具現化するビストとパティ。
「さあ! 私達ユーキを愛し隊の力、見せてあげるわ! かかって来なさい‼︎」
「変な名前付けるなぁ〜!」
密閉された部屋に居るセラとノーム。
セラが部屋の違和感を感じ取る。
「フフ、気付かれましたか……そう、私達が転移した瞬間にこの部屋全体に魔封じの結界を張りました。これであなたは魔装具を具現化させる事すら出来ません」
「でもそんな事したらぁ、あなたも魔法が使えなくなるでしょぉ? あー、それともあなたはぁ、格闘技のチャンピオンか何かですかぁ?」
「普通の人間ですよ。ご心配には及びません……私はあらかじめ、自分自身の体にも結界をかけていますので、部屋にかけられた結界の影響は受けないんですよ」
「ブゥー! そんなのズルイですぅ!」
「レイスを一撃で倒す程の実力……とてもレベル3とは思えない! だから油断はしません」
(レベル3? ああそういえばぁ、そういう設定でしたぁ)
イベントが行われた山のふもとにある川の側に転移したメルクとエスト。
「メルク君、君も水使いだよね? 同じ属性同士、ここなら思いっきり力が使えるでしょ?」
「そうですね……ここなら遠慮せずにあなたをぶっ飛ばせそうです」
「言うじゃないか!」
「一つ、聞いてもいいですか?」
「初めてキスした場所かい?」
「いえ、聞いてないです」
「失礼ですが、あなたは女性ですか? 男性ですか?」
「ホントに失礼だなー! こんなかわいいレディに向かってー!」
(女性だったんですね……困ったなー、やりにくいなー)
メルクと同じく、イベントが行われた山の頂上の火口付近に転移しているアイバーンとザウス。
「よりにもよってこんな熱苦しい場所とはね」
「悪く思うなよ! 相手の弱点を突けっていうオーナーの命令だからよぉ!」
「初めから私の事を知っていた訳だ……大した役者だよ!」
「知っているさ……王国騎士団団長! アイバーン・サン・クルセイド‼︎ 普段のとぼけた言動とは裏腹に、恐るべき実力を秘めた王国最強の氷使い‼︎ あんたを倒せば、俺の名も一躍有名になるってもんだ!」
「そこまで知っているのか……だが一つ、肝心な事が抜けている」
「……? 何だ?」
「黄金の変態という称号だ‼︎」
「いやその称号いらねえだろー‼︎」
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