第20話 男なら、誰もが夢見る膝枕
ロロに膝枕されながら、モニターでみんなの様子を見ているユーキ。
(アイ君の相手は炎使い……メル君の相手は女性……パティには弱ってる僕の側で戦わせて……みんなそれぞれの弱点を突いて来ている……でもセラは? いくらヒーラーで戦いに向いてないとはいえ、何で魔装具の具現化すらしてないんだ?)
ー セラVSノーム ー
魔道士タイプの魔装をしたノームの魔法弾がセラに襲いかかるが、それを何とかかわしているセラ。
「フフ……魔装具も無しに、よく頑張りますね?」
「当たり前ですぅ! ユウちゃんの命がかかってるんですぅ、絶対に負けられないんですぅ!」
「とは言っても回復出来ないのでは、時間の問題ですよ! 私がちょっと本気を出せば!」
魔法弾をかわすセラの前に、転移して来るノーム。
「ほら、追い付いた」
「くっ!」
至近距離から放たれた魔法弾をモロに受け、倒れ込むセラ。
「ぐうっ‼︎」
「もう終わりですか? まあ当然と言えば当然の結果ですが」
「痛いですぅ!」
倒れた状態からノームの足を蹴りに行くセラだったが、当たる寸前でまたしても転移するノーム。
「また消えましたぁ」
少し離れた場所に現れるノーム。
「フフ、惜しかったですね……あとちょっとでしたよ」
「さっきから転移ばっかりしてぇ! 魔法の使えない私がそんなに怖いんですかぁ?」
「安い挑発です……油断はしないと言った筈ですよ? 私が1番警戒しているのは、あなたなんですから……セラさん」
「買い被り過ぎですぅ!」
ー メルクVSエスト ー
すでに魔装しているメルクとエスト。
エストの魔装は黒い忍者装束の様な魔装だ。
エストの投げるクナイを弓で防御するメルク。
1本や2本ではなく、数十本単位でどんどん投げて来るエスト。
(いったい何本持って……? いや、もしかしてこのクナイって……)
「気付いたかい? そう! このクナイは魔力で具現化した物だ……だから僕の魔力がある内は、何本でも出す事が出来るのさ!」
「なら、作る隙を与えなければっ!」
接近して、弓に付いている刃で斬りつけるメルクだったが、クナイで受けるエスト。
距離を取ろうとするエストだったが、追撃するメルク。
再び打ち合った後、距離を取る2人。
「どうしたんだい? さっきから接近戦ばかりで、全然矢を射って来ないじゃないか? 君……もしかして、僕が女だからって手を抜いてるのかい? だとしたら大変な侮辱だよ! 君はレベル3、僕はレベル5だ! ナメてたら死ぬよ?」
「……そうですね。ユーキさんの危機だってのに、甘い事言ってる場合じゃないですね。失礼しました、ここからは本気で行かせてもらいます!」
「期待するよ!」
ー アイバーンVSザウス ー
鎧から武器まで、全く同じタイプのアイバーンとザウス。
ザウスの火炎弾の猛攻に耐えているアイバーン。
「ハハー‼︎ ほらどうした? 団長さんよー! さっきから防戦一方じゃないか! あんたの実力はそんなもんか⁉︎」
「まったく……何故炎使いは、こうも暑苦しい奴ばかりなのか? 少し黙りたまえ‼︎」
アイバーンが剣を一閃すると、ザウスの放った火炎弾が凍りついて地面に落下する。
「何ぃ⁉︎ バ、バカな! 俺の火炎弾を一瞬で凍りつかせただとー?」
驚くザウスの目の前に居たアイバーンの姿が消え、次の瞬間にザウスの隣に現れる。
「攻撃が単調なのだよ!」
「なっ‼︎」
剣を横薙ぎに振り払うアイバーン。
かろうじて盾で受けるザウスだったが、受けた盾ごと左腕が凍りつく。
「くっ、マズイ!」
慌てて距離を取り、燃える剣で凍った左腕を溶かすザウス。
「受けただけでこれかよ……」
ー パティVSビスト ー
2人ほぼ同時に魔装具を構える。
「魔装‼︎」
「魔装‼︎」
エストと全く同じ忍者風の魔装衣を装着するビスト。
だが一方のパティは何故か魔装されていなかった。
(え? 魔装出来ない? 何で?)
「どうしたんだい? パティちゃん……魔装もせずに戦うつもりかい?」
「い、今から見せてあげるわよ!」
だが、魔装の動作を何度繰り返しても、全く反応しない魔装具。
(まさか魔封じの結界? ……いや、それなら魔装具の具現化自体出来ないはず……ハッ、あのオヤジー! まさかしくじったんじゃないでしょうねー‼︎)
魔装具屋がランクアップを失敗したのではないかと疑うパティ。
魔装しないパティを警戒するビスト。
(何で魔装しないんだ? 作戦? 僕を油断させるつもりか?)
「パティちゃん! そのままでいいのかい?」
「う、うるさいわねー‼︎ あんたなんかこのままで充分なのよ‼︎」
「ふーん、そう……同じレベル5の僕を相手に、魔装もせずに戦うって言うんだ? ナメられたもんだね。まあそっちがいいって言うなら、遠慮なく行かせてもらうけどね!」
「ちょうどいいハンデだわ! 遠慮なくかかって来なさい!」
(あいつもレベル5なの? バ、バカッ‼︎ ちょっとは遠慮しなさいよー‼︎)
強がってはいるが、内心非常に焦っているパティであった。
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