第13話 描いた物を出せるなら、絶対アニメキャラを描くよね

「さあ! おふざけはここまでだよ」

 くないを構えるエストとビスト。


「サイクロプス! 行くでフ‼︎」

 四天王の2人にサイクロプスをけしかけるキスパー。


「甘いよ……エアバインド‼︎」

「ウォーターニードル‼︎」

 ビストが風でサイクロプスの動きを封じておいて、エストが圧縮させた水でサイクロプスを貫くと、いとも簡単に消滅するサイクロプス。


「ぶフッ‼︎ 一撃でフか?」

「魔装無しで? この双子、強い……」

 驚くユーキとキスパー。



「別に驚く事じゃ無い……召喚する所を見せてもらったからね……魔石を狙えば簡単に倒せるさ」


「だとしても、サイクロプスの体を貫くには相当な魔力が必要でフ」

「僕達は魔力レベル5だからね……それぐらい訳ないさ」


(レベル5……パティと同じか……つまりパティクラスを2人同時に? ……うん、ムリ! そんなのとてもじゃないが、魔装無しでどうにかなる相手じゃない……でもこんな所で魔装なんかしたら、絶対最後まで保たない……となると、やはり方法は1つ!)


「キスパー」

「何でフ? ユーキたん」

 キスパーに耳打ちするユーキ。

「分かったでフ」



「何だい? 作戦会議かい? それとも、また逃げる相談かな?」

「レベル5の2人を相手に逃げ切るのは難しいだろうからね……戦ってやるさ!」

「できれば大人しく付いて来てくれるのが一番いいんだけど……まあ、仕方ないね」



 魔装具を構えるユーキとキスパー。

 戦うのかと思われた時。


「フラッシュボム‼︎ フライ‼︎」

 強烈な閃光の後に風が巻き起こり、砂埃の中から、キスパーを連れたユーキが飛び上がる。


「フフッ! やると思ったよ‼︎」

 見透かしていたように目をつぶり、飛び上がったユーキ達にくないを投げるエスト。


 ユーキ達に当たると思われた瞬間、くないがユーキ達の体をすり抜けて行く。

「幻術? なら2人はどこに?」

「エスト! あそこだ!」


 エストが見上げてる空と逆方向を指差すビスト。

 ビストの指差す方を見ると、遥か上空に飛行型魔獣のグリフォンに乗ったユーキとキスパーを発見する。


「嘘じゃボケー‼︎」

 ダ○ンタ○ンの松っちゃんばりの捨てゼリフを吐きながら、飛び去って行くユーキ達。


 くないを構えるエストだったが。

「ダメだ! あの高さでは届かない……まいったなー、また逃げられちゃったよ」

「仕方ない、とりあえず他の四天王と合流しよう」

「そうだね……まあ、どこに逃げても分かるしね」



 その頃、ユーキを探していたアイバーンが、飛行するグリフォンの背にユーキの姿を発見する。


「あれは、ユーキ君か? 何故魔獣に乗ってるんだ? いや、とにかく追いかけなくては」




 随分飛行した所で、地上に降りるユーキとキスパー。


「ふう! これだけ離れれば、そう簡単には見つからないよね……ありがとう、キスパー! 僕1人だったら逃げ切れなかったと思う……助かったよ!」

「そんな事無いでフ! ユーキたんが本気で戦えば、あんな奴ら目じゃないでフ」


「いや……もし今回勝てたとしても、それで魔力切れになってたら意味無いしね……せめてPSをゲットするまでは、リタイアする訳にはいかないんだ!」


「PS? ゲーム機でフか?」

「そうだよ、知ってるの?」

「勿論でフ……僕も昔はよく遊んでたでフ」

「昔は? 今はやってないの?」

「今は……色々あって、やってないでフ」

「そっか……じゃあお互いゲーム機ゲット出来たら一緒に遊ぼうよ!」

「一緒に? いいんでフか? 僕なんかと……」

「いいに決まってるだろ? 友達なんだから」

「ユ、ユーキたーん‼︎」


 ユーキに抱きつこうとするキスパーを、サラリとかわすユーキ。

「だから! それはやめろっての!」




 キスパーの魔道書を見せてもらっているユーキ。


「へえー、これ全部君が描いたんだ?」

「そうでフ、特殊なペンでこの魔道書に描いた物を召喚する事が出来るんでフ」

「凄く色んな種類があるんだねー」

(え? この魔獣って……)


 ユーキがふと見つけたのは、以前メルクを刺し、もう少しで死に追いやる所だった、レイスのイラストだった。


「あ、えと……キスパー? この魔獣って?」

 レイスのイラストを指差すユーキ。

「あ……い、いや、これは……」

「あ、ああゴメン! つい最近見たもんだから、ちょっと気になってさ! 別に同じタイプの魔獣だからって、同じ人が召喚したとは限らないもんね? さっきのサイクロプスだって今回は僕達の味方だったし」



 必死にキスパーを擁護するユーキだったが、キスパーの表情が段々暗くなり。


「最近見たレイスって言うのは、あの弓タイプの魔装具を持ってた人を刺したレイスでフか?」

「え……? な、何で知ってるの?」

「当然知ってまフ……だって、あのレイスは僕が召喚した物だからでフ」

「え? そ、それってどういう……」


 突然の告白に動揺するユーキ。


「レイスだけじゃ無いでフ……その前のガーゴイルも、街道に出たウロボロスも、採掘場跡に出たワイバーンも、みーんな僕が召喚した魔獣でフ」


「え? あ、いや……ちょ、ちょっと待ってよ……それってつまり……」


「今の話は本当かね?」

「え?」


 混乱しているユーキの元に、キスパーの話を聞いて険しい表情のアイバーンが現れる。

「ア、アイ君?」


「確か、キスパーと言ったな? 今の話は本当かと聞いている!」

「ほ、本当でフ……みんな僕が作ったんでフ」

「……そうか……ならば私は、貴様を見逃す訳にはいかない」


 そう言って、魔装具を具現化させるアイバーン。



「ちょっ! ちょちょちょーっと待って! アイ君‼︎」

 アイバーンの前に立ち塞がるユーキ。


「どきたまえ‼︎ ユーキ君! 側に居ると怪我をするぞ!」

「何する気だよ? アイ君!」

「その男を殺す‼︎」

「こ、殺すって……ダメだよ、そんな事!」


「その男が作った魔獣が私達を襲った……更にはメルクまで手にかけて……私はメルクの仇を討たねばならない‼︎」


「いや仇って……メル君、死んでないからー‼︎」





「ハクシュッ‼︎」


 メルクの食べカスがパティの顔一面に飛び散っていた。


「ふーん……メル君、どうやら死にたいらしいわね……」

「うわああ‼︎ ご、ごめんなさいパティさーん‼︎」


「殺しちゃあダメですよぉ、パティちゃん」

「セラさん」

「いくら私でもぉ、死んじゃった人は治せませんからぁ、せめて半殺しまでにしてくださいねぇ」

「セ、セラさぁん‼︎」

「大丈夫よ……死なない程度には加減してあげるから……多分……」


「いやああああ‼︎」




 今まさに、命の火が消えそうなメルクであった。

 

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