第12話 小説だからこそ出来るネタがある
「何だい? 君は……関係無い人は引っ込んでてくれないかなぁ?」
「関係ありまフ! ユーキたんは僕のお友達でフ! ユーキたんは僕が守りまフ」
「キスパー……」
(うーん……その気持ちは嬉しいんだけどなー……)
かつて自分が一撃で倒した相手だけに、不安を感じるユーキ。
そんなユーキに小声で語りかけるキスパー。
「ユーキたん……今、魔石は持ってないでフか?」
「魔石? さっきゲットした奴ならあるけど?」
「後で返すから、ちょっと僕に貸してほしいでフ」
「う、うん……それはいいけど、どうするの?」
「僕の本当の能力をお見せするでフ」
「本当の能力?」
リュックを降ろし、数個の魔石をキスパーに渡すユーキ。
「ありがとうでフ」
「逃げる相談は終わったかい? それとも2人で戦うつもりかな?」
「2人じゃないでフ」
「ん? お仲間でも居るのかい? 近くに気配は感じないけど」
「ちゃんとここに居るでフ」
「何? どういう……」
キスパーが胸のペンダントを引くと、魔道書らしき本が現れる。
キスパーがその本を手に取ると、勝手に本が開かれパラパラとページがめくれて止まる。
すると、キスパーの前方の地面に魔方陣が出現する。
その魔方陣に魔石を置き叫ぶキスパー。
「召喚でフ‼︎」
魔方陣が光を放ち、地面より魔石を包むようにサイクロプスが数体現れる。
「サイクロプス? キスパー、君ってまさか……」
「僕は召喚士でフ」
「召喚士! 以前パティに聞いた事がある……この世界の魔獣はみんな召喚士が生み出した物だって……え? じゃあ何で前に僕と闘った時は召喚しなかったの?」
「ああいう一対一の試合形式の時は、召喚士は出場出来ないんでフ……数が不公平になるからって……」
「そうなんだ? それで丸腰で突っ込んで来たんだ?」
「あの時は何とかユーキたんに勝って、お友達になってほしかったんでフ」
「そうだったのか……」
「召喚士? 中々レアなキャラじゃないか……どうだい? 良かったら君、僕達の仲間にならないかい?」
「お断りしまフ! 僕はユーキたんを守るって決めたんでフ!」
「そっか、残念……でもそのユーキちゃんももうすぐ僕達の仲間になるんだ、そうすればずっと一緒に居られるよ?」
「勝手に決めんな‼︎ 誰も行くなんて言ってないだろ‼︎」
「……いや、やっぱりお断りしまフ」
「オイ! 君、今ちょっと考えただろ?」
「そうか……なら仕方ない! 君にはここで寝ててもらうね……みんな! やっちゃってよ!」
部下達がキスパーに襲いかかる。
本を閉じ、両手で操るようにサイクロプスを動かすキスパー。
今までユーキが見て来たどの個体よりも、遥かに機敏な動きで敵をなぎ倒して行くサイクロプス達。
「凄い! 召喚士が直接操ったら、こんなにも早い動きをするんだ?」
「なるほど……これは厄介だね……なら召喚士を直接倒すまでだ!」
忍者が使う、くないの様な武器をキスパーに向けて数本投げる。
「ウインドウォール‼︎」
ユーキが風の壁を発生させて、くないを弾くが。
「ぐうっ!」
弾いた筈のくないが背後から飛んで来て、ユーキの身体をかすめて行く。
「え? 何で後ろから? アローズみたいな誘導式なのか?」
ユーキが後ろを振り返ると、先程まで正面に居た筈のエストが後ろに居た。
「え? ついさっきまで前に居たよね?」
再びユーキが前を見ると、何故かそこにもエストが居る。
「え? 居る?」
前と後ろを交互に見て、両方に居る事を確認するユーキ。
「え? え? 確かにどっちにも居るぞ! 幻術? いやでも、実際喋ってたし……確かに後ろから攻撃もされたし……」
ユーキが困惑していると、前に居たエストが口を開く。
「ああごめん、僕の自己紹介がまだだったね……僕は斬撃のビスト! エストの兄だ!」
「双子かよっ‼︎」
「やあ! ビスト兄さん……手間をかけさせたね」
「しっかりしてくれよ、エスト」
「ゴメンゴメン、でも必ず兄さんがフォローしてくれると思ってたからね」
「まったく、困った妹だ」
並んで立つ2人。
顔は勿論、身長から体型、髪の色まで全く同じだ。
「待て待て! 見た目はともかく、何で喋り方まで一緒なんだよ? ややこしいだろ!」
「僕はエスト!」
「僕はビスト!」
腕を組んでくるくる回転してから止まり。
「どっちだ?」
「どっちだ?」
「どこかの双子のネタやめろー‼︎」
「そうか……だから後ろに居た筈のエストがいきなり前に現れた様に見えたのか……」
「そう、最初に君に会ったのが僕で」
「待ち伏せしてたのが僕だ」
「そして前からくないを投げたのが僕で」
「後ろから投げたのが僕だ」
「ああ、因みに今ここに居るのは僕の部下達だ」
「小説だとどっちが喋ってるか分かんねーわ! せめて一人称ぐらい変えろー‼︎」
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