第10話 おかしかったら笑えばいいさ
どこかで見た事があるような定番の罠を、何とかクリアして行くユーキとアイバーン。
そして、ようやく洞窟の最深部に到達する。
祭壇の様な所に置かれている宝箱を、罠を警戒しながら開け、中から景品の目録を取り出すユーキ。
「やった! 景品ゲットだぜ!」
「……? 何か聞こえないかね? ユーキ君」
「もう、そういう事言うのやめてよねー……別に何も……」
だがユーキが耳をすますと、確かに何か機械音の様な物が聞こえる。
「ああ、これはあれだ……宝物を取ったから、何か仕掛けが発動したとかそういう奴だ」
ユーキ達が辺りを警戒していると、宝箱が置かれていた祭壇が下に収納されて奥の壁が開く……するとそこから、こういうシーンでよく見かける黒い巨大な鉄球が転がり出て来る。
「いいっ! 逃げろー‼︎」
目録をリュックに入れて、大急ぎで逃げ出す2人。
2人を追いかける様に転がって来る鉄球。
「ど定番の罠やめろー‼︎」
「ユーキ君ー‼︎」
「何ー?」
「あの鉄球、おかしくないかねー?」
「おかしいなら笑えばー?」
「ハハハハハ! いや、そのおかしいでは無くてだねー!」
「じゃあどのおかしいー? クッキーとかー?」
「いや、それはおかしいでは無くてお菓子だよー! もうええわっ‼︎」
寒い漫才をしながら何とか出口までたどり着き、外に出た瞬間、左右に飛ぶ2人。
その2人の間を転がって前の岩壁に当たった鉄球が、ポーンと軽い感じでバウンドして跳ね返って来る。
「……いや、作り物かよっ‼︎」
「ふむ……やはり偽物だったか」
「アイ君、気付いてたの?」
「ああ、あれ程巨大な鉄球にしては動きが軽過ぎると思ったのでね」
「もう! それなら早く教えてよ!」
「ん? 私は教えようとしたぞ?」
「え? あ……ゴメン……」
思いっきり心当たりがあったので、素直に反省するユーキだった。
洞窟の入り口に壁がスライドして来て塞がり、その壁に攻略済みの文字が書かれている。
「さて、どんな景品かなー?」
ゲットした景品の目録を開けて、中を確認するユーキ。
「ゴールドカートリッジ……残念、ゲーム機じゃ無かったかー」
「いや、大当たりだと思うがね?」
「いやまあ、そうなんだろうけど……僕が欲しいのはゲーム機だからさ」
「いらないなら、俺達がもらってやろうか?」
「え?」
突然声をかけられ振り向くと、そこには数人の男達が居た。
「君がユーキ・ヤマトだな?」
また来たかという感じで、ゲンナリした顔をするユーキ。
「あ、いえ……人違いです!」
「え? 違うのか?」
「じゃ! 僕達は行くんで」
「ああ、悪かったな! 気を付けて……って待ていっ‼︎」
「チッ!」
「今、舌打ちしただろー! 何さりげなく行こうとしてんだっ! ホラ、この写真と同じじゃないか! 間違いない! 君がユーキ・ヤマトだ‼︎」
「何だよ! 写真持ってるならいちいち聞かなくても分かるじゃないか」
「い、一応確認の為に聞いたんだよ!」
「それで? 僕に何か用?」
「あ、ああ……では改めて……俺は四天王が1人! 紅蓮のザウスだ!」
「四天王?」
「そうだ!」
「あれ? いち、にぃ、さん……5人居ますけど?」
「あ、いや……こいつらは四天王じゃない、俺の部下だ! 四天王は俺だけだ!」
「え? 君だけ? 1人なのに四天王とか言ってんの?」
「え? いやだから! ほ、他の3人は今ここに居ないだけで、ちゃんと向こうで待機している!」
「待機してんだ……めんどくさそう……」
「面倒くさいとか言うなー‼︎」
「ユーキ君……何をからかっているのかね?」
「いやー、彼のリアクションが面白いからつい……」
「ユーキ・ヤマト! 大人しく俺達と来てもらおうか!」
「え? 何で?」
「俺達の雇い主が、君をいたく気に入っているからだ」
「雇い主って誰さ?」
「いやそれは……く、来れば分かる」
「こんな威圧的な誘われ方されて、行く訳無いでしょ? 用があるなら、そっちから来いって言っといて!」
「そう、それにユーキ君は私の彼女なんだ……私は断固拒否するね」
そう言ってまた後ろからユーキを抱きしめるアイバーン。
「ヒッ‼︎ だから違うって……言ってるだろー‼︎」
後頭部頭突きからの一本背負いでアイバーンを投げ飛ばすユーキ。
「ぐおっ‼︎」
「そして……いちいち脱ぐなあああっ‼︎」
追い討ちのエルボードロップが、アイバーンのみぞおちに突き刺さる。
「ぐぼおっ‼︎」
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