第5話 ユーキは変態好き?

 宿屋に戻って来たユーキ達。



「ふう、ただいま」

「おかえりなさい……え? どうしたの? 2人共そんなに汗だくになって」

「いや、ちょっと走って帰って来たもんで」

「走って? トレーニング?」

「ハハ、まあそんなとこ」


(結婚を迫られたなんて言ったら、イベントに出るなって言われそうだしなー)


(分かってるな! セラ)

 余計な事は言うなよ! と、表情で語りかけるユーキにうなずくセラ。


「2人共、お風呂入って汗を流してらっしゃい! 何ならあたしが背中を流してあげるわ」

「いやだから、僕はおっさんなんだってば」

「もう、まだそんな事言ってる……あなたも飽きないわねー」


「やだなぁユウちゃん……おっさんである可能性は極めて低いってぇ、さっきの結界で分かったじゃないですかぁ……あ……」

 しまったという表情のセラ。


「ん? セラ、今のどう言う事?」

(セーラー!)

 キッとセラを睨みつけるユーキ。

「ねえユーキ、どう言う事? 何かあったの?」



「あ、僕お風呂入って来るねー!」

「あ、私もぉ!」


「2人共ー、ちょおっと待ちなさーい!」

 ユーキとセラの首根っこを掴むパティ。

「ヒイッ‼︎」

「ヒイッ‼︎」





 その頃、ようやく落ち着きを取り戻した前夜祭会場。

 リッチの部屋に入って行くメイド。


「リッチ様、やはりユーキさんはどこにもいらっしゃいません」

「くそー! 何だったんだ? さっきの停電は!」


「いかがいたしましょう? リッチ様」

(こうなったら力尽くで僕の物にしてみせる!)


「四天王を呼べ‼︎」


「ハイ!……プッ、四天王て……」

「ん? 何か言ったか?」

「いえ! 直ちに呼んでまいります!」




 再び宿屋では、前夜祭での出来事を洗いざらい白状させられたユーキとセラ。



「け、け、け、結婚ですってえええ‼︎」

 出かけようとするパティ。


「どこへ行こうというのかね? パティ君」

「そのゲルトって奴の息の根を止めて来るわ!」

「やめたまえ! プロポーズしただけでは、罪にはならない」


「だぁってー‼︎」

「だぁってじゃない‼︎」



「あのー、明日のイベントなんだけど……」

 恐る恐るたずねるユーキ。


「ダメよ‼︎ そんな危ない奴が主催してるイベントなんかに、あなたを行かせられないわ‼︎」

「ほらやっぱり、だからパティには知られたくなかったんだ」

 小声でボソッと言うユーキ。


「まあまあパティ君! 今回は私も参加するんだ……ユーキ君に下手な手出しはさせないさ」

「大丈夫だよ、あくまで闘技場のイベントなんだ、そんな危ない事にはならないよ」



 腕を組んで少し考えるパティ。



「ふう、分かったわ……ユーキの事はアイ君に任せるわ」

「やた! じゃあ出てもいいんだね?」


「仕方ないわね……ただし、もしユーキに何かあったらアイ君……覚悟しなさいよ……」

 アイバーンを笑顔で睨みつけるパティ。

「あ、ああ! 肝に命じておこう」





 そして、翌朝の午前9時。




「じゃあ行ってくるよ」

「もう行くの? まだ早いんじゃない?」

「開始2時間前に集合しないといけないんだ」

「そう、なの?」


「ユーキ! くれぐれも自分が超絶美少女なんだって事、忘れちゃダメよ?」

「普段、あまり自分の姿見ないからなぁ」


「自分も男だから大丈夫なんて思わない事!」

「だって、おっさんの頃の記憶しか無いし」


「絶対に1人にならない事!」

「アイ君と居るから大丈夫だよ」

「それはそれで危険だわ!」

「いやどっちだよ!」



「ハンカチとティッシュ持った?」

「ちゃんとポケットに入れてるよ」


「お弁当と水筒持った?」

「リュックに入ってる」


「酔い止めの薬は飲んだ?」

「いや、何も乗らないから」



「パティちゃん、お母さんみたいですぅ」



 出発するユーキ達の後ろから。


「ちゃんと先生の言う事聞くのよー!」

「遠足かっ‼︎」




 イベントが行われる山のふもとに到着したユーキ達。

 ユーキが来たのを知った周りの参加者達が騒ぎ始める。



「来た! ユーキちゃんだ!」

「オイ! 隣に居る男、誰だ?」

「凄いイケメンだけど……まさかユーキちゃんの彼氏?」

「昨日は金持ち、今日はイケメンかー……何だかショックだなー」


 周りの声を聞いていたユーキ。

(何だか周りの僕のイメージが、金持ち好きのイケメン好きみたいになってるぞ? いや、別に周りにどう思われようといいんだけどもね)


 だが周りの声が突如驚きと悲鳴に変わる。


「キャー‼︎ 何? あの人!」

「変態よ! 変態が居るわ!」


(ん? 変態?)


 ふと横を見ると、いつの間にかまた海パン一丁になっているアイバーン。

「な、何で君はまた脱いでんだー‼︎」


「いやー、私は注目されると興奮して身体が火照ってしまうのだよ」

「だからっていきなり脱ぐなー‼︎」


(最近のアイ君は結構真面目な言動してたから忘れてたけど、そういえばこういう奴だった)



 周りの参加者がまたざわつき始める。



「あれってどう見ても変態だよな?」

「ああ、イケメンだけど変態だ!」

「と言うことは……ユーキちゃんの好みは、金持ちでイケメンで変態な奴って事か?」



「変態は好きじゃねーよ‼︎」

「いや金持ちやイケメンが好きって訳でもねーよ‼︎」

「いやそもそも男の好みなんてねーわー‼︎」


 新技の三段ツッコミを炸裂させるユーキであった。

 




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る