第6話 ユーキ嬢争奪戦! 再び

 10時になると、マイクらしき物を持ったメイドがステージに上がる。



「皆様! 本日は当イベントに、多数参加していただきありがとうございます! スタート時の混乱を避ける為、抽選によりスタート地点を8ヶ所に割り振らせていただきます! それでは、順番にクジをお引きください!」


「え、抽選? それじゃあアイ君と別々のスタート地点になっちゃうの?」

「ふむ……どうやらそうなる可能性が高いね」

「ヤバイってー」

「もし別れてしまったら、まずは合流する事を最優先しないといけないな」



 そうこうしてる内に、ユーキの番が回って来た。

 引いたのはFと書かれたボールだった。


「ガ○ダムF91のFだ」

「ハイ、ユーキさんはFエリアからのスタートとなります」



 その様子を見ていた周りの参加者がざわつく。



「ユーキちゃんはFエリアだってよ!」

「どうか俺もFを引きますように!」

「同じエリアになって、お近付きになりたい!」

 各々に祈る参加者達。



 アイバーンが引き終わり、戻ってくる。


「アイ君、どこだった?」

「私は変態のHだったよ……実に私らしい」

「いや、自分で言うなよ!」


 ステージ上のモニターに映し出された地図を見る。

 山を真上から見た状態になっており、北にAエリアがありそこから時計回りにHまで、8ヶ所に別れている。

 今ユーキ達が居る場所は南のEエリアなので、ユーキのスタート地点は南西のFエリア、アイバーンのスタート地点は北西のHエリアとなる。


「うーん、2つ隣かー……まあ近いっちゃあ近いか」

「ふむ……開始と同時にお互い南北に移動すれば、すぐに合流出来るだろう」

「じゃあゴッドガ○ダムのGエリアで合流って事で」

「了解した」



 全員クジを引き終わったようだ。



「くそー! エリアBかよ! ユーキちゃんの居る所と真逆じゃないかー!」

「よっしゃあ‼︎ Fエリア引いたぞー‼︎」

「なにぃ‼︎ うらやましい‼︎ なあ、俺と代わってくれよー!」

「やだよ! せっかく引いたんだ、この機会にユーキちゃんとお友達になるんだ!」



 そんな周りのやり取りを、冷ややかな目で見ているユーキ。

「あいつら、まだやってる……うーん、僕ってそんなに言う程かわいい、のか?」

 そのかわいい娘が自分自身なのが、ちょっと残念な気もするユーキだった。



「それでは、みなさん! 各々のスタート地点へ移動を始めてください! 明日の正午に、またこのエリアでお会いしましょう! 頑張ってくださーい‼︎」



 移動を始める参加者達。


「それじゃアイ君、Gエリアで……」

「うむ……気を付けて」



 Fエリアに到着したユーキ。

 周りの男達がユーキに声をかけてくる。



「ねえユーキちゃん、俺と一緒に行かない?」

「あ、いや……連れが居るので」


「一緒に居たイケメン?」

「うん、そうだよ」


「あのイケメンって彼氏?」

「え? いや、違うよ?」


「じゃ、じゃあ俺達にもチャンスある?」

「えと、ゴメン……僕、誰とも付き合う気は無いから」



 スピーカーより、先程のメイドの声が響き渡る。



「参加者の皆様‼︎ 開始10分前となりました‼︎ 電光掲示板をご覧ください」


 デジタル式の数字がカウントダウンしている。


「この数字がゼロになったらイベントをスタートしていただき、その時点より24時間のカウントダウンが始まります。そして24時間経ったら、また始めのEエリアに集合してください……そこで獲得した魔石の合計額を計算して、優勝者を決めたいと思います。それでは、イベント開始まで今少しお待ちください」




 懲りずにまた男達が声をかけてくる。


「ねえユーキちゃん! 俺こう見えても結構強いから、ユーキちゃんを守ってあげられるよ? だから一緒に行こうよ!」

「大丈夫だよ! 僕だって強いんだから!」


「へえ、なら俺と勝負してみる? それでもし俺が勝ったら、俺と一緒に行くってのはどう?」

「ふーん、言うじゃない……いいよ、なら勝負してみる?」


 それを聞いていた周りの男達が騒ぎ出す。


「オイ‼︎ ユーキちゃんと勝負して勝ったら、ユーキちゃんと一緒に行けるってさ‼︎」

「え、マジか? じゃあ俺も挑戦するぞ‼︎」

「よし! 僕もやるぞー!」


「え? この展開って……」


 段々おかしな話になって行く。


「なにぃ! ユーキちゃんに勝ったら彼女になってくれるだってー?」

「いや、誰も彼女になるとは……」


「え? ユーキちゃんを倒したら好きにしていい?」

「いい訳ないだろ!」


「ユーキちゃんと結婚出来る?」

「出来るかっ‼︎」


(マズイ……何だかまた変な方向に話が進んでるぞ? どうしよ?)


 ユーキの考えがまとまる前に、カウントが10秒前になる。


「さあみなさん! まもなくスタートです! 10秒前からカウントダウンを始めたいと思います! 10! 9! 8……」


(ああ、マズイマズイ! 始まっちゃうよー! どうしよどうしよ!)


「……3! 2! 1! ゼロ‼︎ 魔石争奪サバイバルマッチ、スタートでーす‼︎」



「さあユーキちゃん! 勝負だ!」

 男達が身構えるが、すでにユーキの姿は無かった。


「あれ? ユーキちゃんどこ行った?」

 辺りを見渡す男達が、数メートル先を走っているユーキを発見する。

「居た‼︎ あそこだー‼︎」



「冗談じゃない! あんな大勢相手にしてられるか!」

「ユーキちゃん待てー‼︎」

「卑怯だぞー‼︎ 逃げるなー‼︎」


「いや、勝手な事言ってんじゃねー‼︎」



 かくして、再びユーキ嬢争奪戦が勃発する。

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