第2話 という訳で

 魔装具屋に来たパティ。



「おじさん、こんにちはー!」

「おお! パティちゃん、久しぶりだねー! いつ戻って来たんだい?」

「ついさっきよ」


「この街まで帰って来たって事は、あっちでの用事は済んだのかい?」

「ええ……てゆうか、まだ継続中なんだけどね」


「ん? そうなのか? いやまあ、何にせよ無事に帰って来られたんだ、良かった良かった……それで、今日はどうした?」

「うん、実は……魔装具のランクを上げて欲しいの」

「いや、それは構わないけど……でも確かパティちゃん、今以上に魔装具ランクを上げるのは、師匠に禁止されてるとか言ってなかったかい?」


「いいのよ! あたしだって強くなったんだから……納得させてみせる!」

「いやまあ、パティちゃんがいいって言うなら、こっちは断る理由は無いけどね」


(暴走の危険があるからって禁止されてるんだけど、ユーキだって使いこなしてるんだから、あたしに出来ない筈はないわ)


「じゃあ、完成までに3日程かかるけど、いいかい?」

「ええ、お願いするわ!」


 魔装具の所有権を一旦店主に移すパティ。


「ハイ! 確かに預かったよ……じゃあ3日後の昼には出来てると思うから」

「ええそれじゃあ、頼んだわね」


 店を出て宿屋に向かうパティ。

「フッフッフッ、見てなさいユーキ……今度闘う時は、絶対負けないんだから!」


 結構負けず嫌いなパティであった。




 まだ闘技場の掲示板を見ているユーキ達。



「えっと、今回のイベントは? 敷地内の山を丸々使っての、魔石争奪生き残り戦……開始日時はあさっての正午、エントリー受付は明日の午前中までか」


(パティ達にも出て貰えば、ゲーム機ゲットの確率も上がるよなー……よし、帰ってみんなに頼んでみよ)


「じゃあそろそろ宿屋に行こうか? セラ」

「そうですねぇ、お腹もいっぱいになったからぁ、みんなと合流しましょぉ」


 ユーキ達も宿屋に向かう。

 その様子を見ていた影。


「ブフッ……逃さないでフ、ユーキたん」




 宿屋で全員合流した後、闘技場のイベントの事を話すユーキ。



「という訳で、是非みんなにも参加してもらいたいんだけど……どうかな?」

「いや、いきなりという訳で、とか言われても何の事か分からないわ……ちゃんと説明してくれないと」

「そこは説明したっていう体(てい)なんだから、いちいち突っ込まないで‼︎」



「ふむ……生き残り戦か……私は別に出ても構わないが……」

「ホント? ありがと、アイ君!」


「ああごめんなさい、あたしは無理だわ」

「ええ! 何でさ? パティ」

「あたし今、魔装具持ってないのよ……ランクを上げてもらう為に店に預けてるから……完成予定は3日後だから、間に合わないわ」


「そんなぁ」

 1番期待していたパティの、まさかの不参加で意気消沈するユーキ。


「私もぉ、戦いには向いてないからぁ、辞退しますぅ」

「うう……セラまで……」


「あ、僕は参加出来ますけど?」

 手を挙げるメルク。

「ホント? メル君!」


 喜ぶユーキだったが、セラがそれを邪魔する。


「ええー! メルちゃんが居ないとぉ、誰がご飯作るんですかぁ?」

「いや、ちゃんと宿で食事出るだろー?」

 反論するユーキ。


「いえ、この宿屋は朝食しか出ないんですよ……だから他は外食するか自分達で作るしかないんです」

「な、ならパティに作ってもらえば……」

「パティちゃんの料理を食べるとぉ、逆に体力を奪われるんですぅ!」


「ちょっとセラ、それどういう意味かしら?」

 顔が引きつっているパティ。


「メルちゃん、行っちゃイヤですぅ! パティちゃんと2人きりはぁ、色んな意味で命の危機ですぅ!」

 メルクに泣いてすがりつくセラ。

「セラちゃーん、後で裏に来なさい」


「わ、分かりましたよ、僕も残りますから……という訳で、ごめんなさいユーキさん」


「そう、か……ならしょうがないね……アイ君と2人で、何とか頑張るよ」


(ンフフー、まあ嘘ですけどねー……私だって料理は作れるのですぅ、でも前回はメルちゃんがぁ、ユウちゃんとの距離を縮めたからぁ、今回はアイちゃんの番なのですぅ)


 ユーキから見えないように、後ろを向いて悪い顔をするセラであった。




 翌日、闘技場にエントリーに来たユーキとアイバーン。


「イベントに参加される方ですね? ではこちらにお名前と、簡単なプロフィールをお書き下さい」

「うい」


 用紙に書き込むユーキとアイバーン。


「それと本日17時より、今回のイベントの為に私有地を貸していただいたオーナーのリッチ様の邸宅にて、前夜祭がおこなわれますので、どうぞご参加下さい」


「前夜祭? へえー、そんなのやるんだ?」

「ハイ、豪華な食事も用意されますので、是非いらしてください」

「セラの悔しがる顔が目に浮かぶよ」

「ハハ、そうだね」



 宿屋に帰り、前夜祭の事を話すと、やはりセラがとても悔しがる。



「ええー! 何ですかぁ、それぇ! 2人だけズルイですぅ! 私も豪華料理食べたいですぅ!」

「いや、そうは言っても行けるのは、イベント参加者だけだしなー」


 ふてくされるセラを見てアイバーンが。


「セラ君! もし良かったら、私の代わりに前夜祭に行ってくれないかね?」

「えぇ? いいんですかぁ?」


「ああ、私は元々そういう場が苦手でね……辞退しようかと思っていたんだが、ユーキ君1人で行かせるのも心配だったから、代わりにセラ君が行ってくれるのなら、安心だ」


「はぁーい! セラにお任せあれぇ!」


「でもユーキって今や結構有名人なんでしょ? そんな場に行って大丈夫なの?」

「へへー、その点はちゃんと考えてあるんだー」



 そして夕方。

 魔装せずに、直接ヤマトの姿に変身するユーキ。

 

「へえー、魔装しなくても変身出来る様になったのね?」

「ああ、魔装しなければこの姿のままで結構保つ事が分かったからな」

「まあ確かに、ユーキの姿に比べれば、ヤマト君の姿はほとんど知られてないだろうし」



「じゃあ、行ってくる」

「行って来まーす!」



 

「ところでぇ」

「ん? 何だ?」

「ヤマトちゃんってのは言いづらいからぁ、ヤマちゃんって呼んでもいいですかぁ?」



「いや、すまないが、ヤマちゃんはやめてくれ……何だか、声優やら芸人やらの顔が浮かんでくる」

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