第三章 愛と勇気の大冒険

第1話 プレイしましょう

「マナー! ほら、こっちよ! 早くいらっしゃい!」

(ん? マナ? どこかで聞いたような?)


「待ってよー! セラお姉ちゃん!」

(セラお姉ちゃん? セラって……あのセラ?)


「ほら、ここよ……」

「うわぁ! 小鳥さんだー! セラお姉ちゃん、この子どうしたの?」

「さっき向こうの森で見つけたのよ……周りを見たけど巣も無いし親鳥も見当たらないから、多分他の動物に連れて来られたんじゃないかな?」


「かわいそう……」


「ケガをしてたから、私が治療してここに連れて来たの……ほっといたら死んじゃうから、マナ! この子が大きくなるまで面倒見てあげてくれる?」

「うん! 私、面倒見る!」


(姉妹の会話? セラがお姉ちゃんなら、マナって言う娘は妹?)






「……キ‼︎ ユーキ‼︎ 早く起きてよ‼︎」

「ん? 何?」


 目を覚ますユーキ。

 すると、今にもユーキに飛びかからんとしているセラを、必死で押さえているパティとアイバーン。


「え? 何これ、どういう状況なの?」

「セラがお腹空かせて、あなたに噛みつこうとしてるのよ!」


「え? お腹空かせてって……え? だってセラの食料だけでも10日分はあったよね? ベルクルを出発して、まだ2日しか経ってないよ?」


「我々もまさかこれ程とは思って無かったから油断していた……もっと食事のペース配分を考えるべきだった」


「もう食べ物は無いって言ったら、ユーキから美味しそうな匂いがするって言って噛みつこうとしたのよ! ユーキあなた、何か食べる物持ってるの?」


「え? 僕何も持って……」

 服のポケットを探すユーキ。

 すると、スカートのポケットの中から一口サイズのチョコレートが何個か出て来た。

「ああそうだ! オヤツに食べようと思って入れてたんだった!」


「早くそれをセラにあげてー‼︎」

「セラー! ほら、チョコだよー!」

 チョコを手の平に乗せてセラに見せるユーキ。


 飛び上がってユーキに迫り。

 パクっ‼︎

 チョコを持った指ごと噛み付くセラ。


「ギャアアアッ‼︎ それ指‼︎ 指だからー‼︎」



 


 とりあえず落ち着いたセラ。

 だが、まだユーキの指に噛み付いたままのセラ。


「あのー、セラ? 何でずっと僕の指に噛み付いてるの?」

「ユウちゃんの指を舐めてるとぉ、ダシが出て来て美味しいんですぅ」

「僕は昆布かっ‼︎」


「我慢しなさいユーキ、そうしてれば落ち着くみたいだから」

「もう、他人事だと思ってー」




「あ、みなさん‼︎ リーベンの街が見えて来ましたよー‼︎」

 メルクの声に、みんな馬車から顔を出して、前を見る。


「ふう、何とか辿り着いたわね……もうちょっとで誰かを生贄にしなきゃいけないとこだったわ」

「もうなってますけどー?」




 そして、リーベンの街に到着したユーキ達。


「さて、どうする? 普通ならまずは宿を確保して、ひとまず荷物を置いてくるのが……」

「ご飯‼︎ ご飯食べましょう‼︎」


 アイバーンの言葉を遮るようにセラがまくし立てる。

「宿屋なんて別にいつ行っても空いてるでしょうし、最悪満室でも馬車で寝ればいいじゃないですか! 今優先すべきは寝る場所じゃなくて食事です! 何しろこれはもう命に関わる事ですので、何よりも大事なのです! なのでご飯食べに行きましょう! 今行きましょう! すぐ行きましょー‼︎」


「わ、わかったよ……それじゃあまずは食事にしようか?」

「その方が良さそうね」

「異議なーし!」

「同じくです」



 まずは目先の危機を脱すべく食事を取ることにしたユーキ達。



「はあぁー! 生き返りましたぁ」

 何とかいつもの糸目プラス、粘っこい喋りに戻ったセラ。


「さて、セラ君もどうにか落ち着いたようだし、これからどうするね?」

「ああ、あたしはちょっと魔装具屋に行ってくるわ」

「魔装具屋? どこか調子が悪いのかね?」

「いや、そうじゃなくて……ウロボロス討伐でお金も入ったから、思い切って魔装具をパワーアップさせようかと思ってね」


「そうか……益々悪魔っぷりに磨きがかかってしまうな」

 ボソッと言うアイバーン。

「アイ君、何か言ったかしらー?」

「いやあ、私もうかうかしてられないなー」

 ごまかすアイバーン。



「では私は、宿屋の手配をしておこう」

「じゃあ僕は、宿屋に荷物を置いたらレンタル屋に馬車を返してきますね」

「馬車、一旦返すの?」

「ああ、すぐに次の街へ行くわけではないしね」


「そうなんだ……じゃあ僕は街の中を見学して来てもいい?」

「うーん、強くなったとは言え、1人は不安だわね」

「ああそれじゃあ、私が一緒に行きますぅ」


「そう? まあセラが一緒ならいいわ」

「僕って、まだ信用無いんだ……」

 落ち込むユーキ。


「あ、いや……ユーキってば、面白そうな事があるとすぐに首を突っ込むクセがあるからね」

「ぐっ……否定は出来ない……」



「では3時間後に、またこのレストランで落ち合うとしよう」

「了解」

「分かったわ」

 3方に別れるユーキ達。




 街中を歩いている、ユーキとセラ。

 


「おい! もしかしてあのピンク髪の娘って、ユーキちゃんじゃないか?」

「え? ホントだ! この街に来てたのか?」

「やっぱ、めちゃくちゃかわいいよ」

「ああー、付き合いてえー!」

「失礼じゃぞ、お主ら! あのお方は天使様なんじゃ」

「ありがたやー、ありがたやー」


 街の至る所で、ユーキの噂をする声が聞こえる。



「何だかぁ、みんなユウちゃんの事をぉ、話してるみたいですねぇ」

「え? 何でみんな僕の事知ってるの?」

「他の街の闘技場で話題になった試合はぁ、国中に放映されるのですぅ……したがってぇ、ユウちゃんの事は今や天使としてぇ、国中に広まっているのですぅ」


「なん……だと?」

「よぉっ‼︎ 有名人ー‼︎」

「みんなセラの策略だよねー‼︎」



 そうこうしてるうちに、闘技場に辿り着く。

「ああ、これがこの街の闘技場かー」

 少し景品が気になるユーキ。


「ねえセラ、ちょっと掲示板だけ見てもいい?」

「ええ、いいですよぉ」



 掲示板を覗き込むユーキ。

 そこにまたしても、目を疑う物を見つける。

 元の世界にあった携帯ゲーム機、プ◯イステー◯ョンV◯taだった。


「これってもしかして、PSV◯ta?」

 表示されてる名前を見ると。

「ん? PSAnta? また微妙に違うぞー?」


 知っているかは微妙だったが、一応セラに聞いてみるユーキ。


「ねえセラ……これってゲーム機?」

「ん? ああー、PLAYSHIMASHOW・Antaですねぇ、はいぃー、これはシマグループが作ったゲーム機ですぅ」


「ん? 今何つった? シマグループ? しかも、プレイしましょうあんた?」

「そうですぅ、しかもつい最近後継機であり、タッチパネルを採用した新型、PLAYSHIMASHOW・Anta・TAUCHと言うのが発売されたんですぅ」


「プレイしましょうあんた達……」





「いやどんなネーミングセンスだー‼︎」

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