第25話 空気を読める人と読めない人の末路
まだ倒れているパティを起こそうとするユーキ。
パティの魔装はとっくに解けていた。
「ほらパティ、大丈夫? 起きてよ」
「ユーキ? あたしもう死んでもいいわー」
まだ意識がハッキリしない様子のパティ。
「もう、しっかりしてよパティ! ほら、帰るよ!」
そう言ってパティをおんぶするユーキ。
「ああっとー! 前回の逆で、今回はユーキ嬢がパティ嬢をお持ち帰りだー‼︎」
「だから、変な言い方すんなー‼︎」
「皆様! 今回この闘技場を大いに盛り上げてくれた2人の美少女に、もう一度盛大な拍手をー‼︎」
「ユーキー‼︎ パティー‼︎」
「2人とも凄かったぞー‼︎」
「私2人のファンになったよー!」
「他の街に行ってもまた応援に行くからなー!」
「ユーキー! 結婚してー‼︎」
「パティお姉様ー!」
大歓声に包まれながら、退場するユーキ。
「さあ、我々も行こう!」
「ハイ!」
「早く2人をぉ、治療してあげなきゃですぅ」
ユーキ達を追って闘技場を後にするアイバーン達。
宿屋に帰って来たユーキ達5人。
遠征に行っていた間の出来事を聞くパティとアイバーン。
「そうか……そんな大変な事が……」
セラにきちんと正対するアイバーン。
「セラ君……この度はメルクが大変世話になった……もし君が居なかったら、私はかけがえのない友を失う所だった……ありがとう!」
深々と頭を下げるアイバーン。
「礼なんていいですよぉ」
「僕からも改めてお礼を言わせてください……この度は無い命を救って頂き、本当にありがとうございました」
同じく頭を下げるメルク。
「もう! 礼はいいですってばぁ」
「あ、そうだ! 僕も今回はセラの魔装と作戦のおかげでパティに勝てたんだ、ありがとう! セラ」
「だからぁ! 礼なんか言われるとぉ、こそばゆくなるからぁ、やめてくださいぃ」
顔を赤くしながら、体をかくセラ。
「まさかレベル7だとはね……どおりであたしの技がいとも簡単に返された訳だわ」
みんなの話を聞いていたであろうパティが、ようやく起き上がって来た。
「パティ、傷は大丈夫?」
「ええ、綺麗さっぱり治ってるわ……さすがはレベル7の治癒魔法ってとこね」
「ふう、あたしに嘘ついた事怒ろうかと思ってたけど、メル君の命の恩人じゃあそうもいかないわね」
「さてパティ君、これからどうするね?」
「ああそうね……見事にユーキにも負かされた事だし、王都を目指しましょうか!」
「ついに王都へ……ゲーム機へ……」
「あ! ゲーム機で思い出したわ!」
そう言って、部屋の隅から何か箱を持って来るパティ。
「はいこれ! あたしに勝ったご褒美よ」
「え、何? 開けていい?」
「ええ」
ユーキが箱を開けると中に入っていたのは、あと一歩でゲット出来なかったあのゲーム機、ニテンドー3GSだった。
「え? これって……え? 何で?」
「ユーキが欲しかったのってそれでしょ?」
「うん、そうだけど……いったいどうして?」
「先日、ウロボロス討伐に行く条件として、パティ君がギルドの人に取り寄せてくれるよう、頼んでいたのだよ」
「パティ……」
「まあ、あたしもちょっと悪い事したかなーって思ったから……ゴメンね」
「んーーーー‼︎ パティ、大好きー‼︎」
パティに飛びつきハグをするユーキ。
その勢いのまま倒れこむユーキとパティ。
「ああ、あたし幸せ……」
また顔を真っ赤にしながら、幸せそうな表情のパティ。
その様子を見ていたアイバーン達。
「ふむ……闘技場でユーキ君が最後に何を言ったのか、これで分かったよ」
「確かにパティさんには1番効きそうですね」
「ユウちゃん、罪な女ですぅ……ああ、おっさんかも知れないんでしたぁ」
「それはそうと、出発はいつにするかね? パティ君」
「まだ式も挙げてないのに、新婚旅行なんて早いわよー……ねー、ユーキー」
「いや何の話だね! しっかりしたまえ! パティ君」
「もう何よー、アイ君! せっかく人が幸せな気分に浸ってるのにー」
「ああすまないが、今後の予定を決めたいのだが?」
「そうねー、明日は道中の食料やら何やらの買い出しをしたいから、あさって出発ってとこかしら?」
「ふむ……皆はそれでいいかな?」
「うん、いいよ」
「ハイ!」
「オーケーですぅ」
「セラ君は街を出る事になるが、本当にいいのかね?」
「ハイィ、私はユウちゃんにぃ、ずっと喰らい付いて行くってぇ、決めましたからぁ」
「いやだから、食うなっての!」
「ふむ……レベル7の優秀なヒーラーが共に来てくれるなら、これ程心強い事はない……よろしく頼むよ」
「頼まれましたぁ」
「では、全員他にやり残した事があれば、明日中に済ませてくれたまえ」
「やり残した事……」
考えるユーキ。
そして大事な事を思い出す。
「ああー‼︎」
「ど、どうしたんですか? ユーキさん!」
「魔法サーカス団……」
「ああ、そう言えば……色々あって、すっかり忘れてたわね」
「魔法サーカス団? それなら私達もチケットを持っているが?」
「あぁー! 私も持ってますぅ」
チケットを見せるアイバーン達3人。
「え? 確か凄い人気で、入手困難だってパティが……」
「いや? 道具屋の主人にもらったぞ? タダで……」
「ちょおっとアイ君、こっちいらっしゃい‼︎」
アイバーンの腕を引っ張り、部屋の外へ連れ出すパティ。
「ん? どうしたんだね? パティく……うぐっ! ぐあっ! な、何をするんだパティ……ぐうっ! や、やめ……ぬあああああ‼︎」
アイバーンの声が聞こえなくなった。
「ア、アイバーン様‼︎」
アイバーンの様子を見ようと入り口のドアに手をかけようとすると、スウッとパティが入って来る。
「ヒッ!」
そして形だけの笑顔でメルクに質問する。
「メル君? サーカスのチケットって、どうやって手に入れたの?」
命の危機を察したメルク。
「あ……えと……ど、道具屋のご主人に頼み込んで譲ってもらいました!」
「うん、よろしい」
何とか危機を脱し、廊下に出て行くメルク。
「ア、アイバーン様ー!」
ジロッとセラの方を見るパティ。
「セラちゃん?」
「ハイぃ‼︎」
「セラちゃんはどうやって手に入れたの?」
「あ、はい! えとえとー」
恐怖のあまり、めちゃくちゃ早口になるセラ。
「私私、とても行きたかったんですけど、もの凄く人気だって聞いたから、発売日の3日前から徹夜で並んでやっと手に入れましたー‼︎」
「うん、そうよねー……みんな手に入れるの大変だったのよねー……分かった? ユーキ?」
「ハイー‼︎ 大変よくわっかりましたー‼︎」
「うん、それじゃあ明日に備えてそろそろ寝ましょうか」
「イエス、マム‼︎」
部屋の中では、ユーキを真ん中にして、両側にパティとセラが寝ている。
そして、廊下でそのまま寝ているメルクとアイバーン。
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