第23話 ミーティアなんて聞くと、ガンダムSEEDを思い出す
「パティ選手から黒いオーラが溢れ出ているぞー‼︎ いよいよ漆黒の悪魔の本領発揮かー?」
「悪魔悪魔って……いい加減にしないと……みじん切りにするわよ‼︎」
実況者をジロッとにらむパティ。
「ヒィッ‼︎ み、みなさん! もしかしたら私、この試合が最後の実況になるかもしれません……悔いの無いようやらせていただきます!」
「さあ、行くわよ‼︎ そっちが水なら、こっちは雷よ」
「ライトニングストライク‼︎」
無数の落雷がヤマトを襲う。
「うおっ! 危ねっ! ホイッ! よっと!」
雷を紙一重の所で避けるヤマト。
「中々器用に避けるじゃないの、でもいつまで保つかしらね?」
「危ねーだろ? そんな離れた所に居ないで、降りて来いよ! 子猫ちゃん!」
「さっきから子猫子猫うるさいニャ‼︎」
「なぜ子猫と言う単語に毎回律儀に反応するんだ? パティ君は」
「実は気に入ってるんでしょうか?」
「これでもかわしきれるかしら? ウインドウォール‼︎」
ヤマトの周囲を、高さ5メートル程の風の壁が取り囲む。
(そろそろデカイのがくるか?)
弓を水平に持ち、リボルバーを回転させるヤマト。
(リボルバーを回した? また違う魔装に変身するつもり? この状況では空を飛んで逃げそうなものだけど、未だに飛行魔法を使わないって事は、アイ君が飛べないのと同じで、ヤマト君の時は飛べない?)
(ならば魔道士タイプしかない……もっとも、飛び上がった瞬間に雷の餌食にしてあげるけども……いや、もしかしたらすでにセラの魔装をコピーしてる可能性もある……でも例えそうだとしても、ヒーラーの能力でこの状況を回避出来るとは思えない……ならば、これで押し潰す‼︎)
「ミーティア‼︎」
パティの頭上に巨大な岩の塊が現れる。
「ああっとー! パティ選手の頭上に直径10メートルはあろうかという巨大な岩が現れたー‼︎ ヤマト選手! この大きさでは逃げ場が無いぞー‼︎」
「ふむ……周りは風の壁……あの岩のサイズだと、完全に壁を覆いつくす……空から逃げようとすれば雷に狙われる……撃ち落とそうにも、魔力を溜めていない以上、あれ程巨大な岩を破壊するだけの威力は出せないだろう……これは決まったか?」
「ユーキさん……もう打つ手は無いんですか? 何とか頑張ってください」
祈るメルク。
(ンフフー、ところがまだ奥の手があるんですよぉー……みんなのビックリする顔が目に浮かびますねぇ)
「おいおいパティ! そんなの食らったら死んじまうだろー?」
「なら降参しなさい! そうすれば、痛い目にあわずに済むわ!」
「それはできねーよ! だって今回は絶対にリベンジするって決めたんだから……なあ、それやめてくれるなら、後でキスしてやるぜ? 子猫ちゃん!」
「キ! ……そ、そうやってヘラヘラとー……あんたなんかユーキじゃ無いニャ‼︎ 痛い目にあって反省するニャー‼︎」
パティが杖を振り下ろすと、岩がヤマトに向かって落下して来る。
(ユウちゃん、今ですぅ)
弓を回転させて叫ぶヤマト。
「魔装‼︎」
魔方陣がヤマトの体を通り抜けるとヤマトが光に包まれ、その光が消えると正に天使を想わせる、全身真っ白な魔装衣と、背中に翼を付けたユーキが現れる。
ユーキが右手を広げて上にかざすと、背中の羽が6本飛んで行き空中で止まり、その羽をなぞる様に円が描かれ魔方陣が現れる。
「マジックホール‼︎」
魔方陣が光を放つ。
岩が魔方陣に触れた瞬間、まるで吸い込まれる様に消滅する。
「なんですってー‼︎ ミーティアが消滅した? 何? 一体どういう魔法なの?」
「アクセラレーション‼︎」
ユーキが叫ぶと、魔方陣が高速回転を始める。
その回転に引き込まれる様に、ユーキの周りの壁も魔方陣に吸い込まれて行く。
だんだん魔方陣の魔力が高まっている事に、パティが危険を察知する。
「よく分かんないけど、何かヤバイ‼︎」
パティが防御姿勢を取ろうとした時、ユーキが叫ぶ。
「リフレクション‼︎」
その瞬間、魔方陣から消えた筈のミーティアが、風をまといながら高速回転して現れ、パティに向かって飛んで行く。
「くっ‼︎ ウインドウォール‼︎」
とっさに防御魔法を発動させたパティだったが、威力を殺しきれず弾き飛ばされ、地面に落下した。
「あうっ!」
ざわつく客席。
だが、魔法に対してと言うより、ユーキの姿に驚いている様子だった。
「天使……」
「天使……」
「天使だ……」
「ウオオオオオ‼︎ 天使様だああああ‼︎」
「な、な、何とー‼︎ 美しい美しいとは思っていましたが! 我らがユーキ嬢は、本物の天使様だったあああああ‼︎」
「ウオオオオオ‼︎」
「天使‼︎ 天使‼︎ 天使‼︎ 天使‼︎」
会場が、大天使コールに包まれる。
余りの熱狂ぶりに呆気にとられるユーキ。
「え? え? 何? 何なの? 何でみんなこんなに騒いでるの?」
「あなたのその姿よ」
かなりのダメージを受けながらも、起き上がって来たパティが答える。
「え? どう言う事? この姿、どこか変なの?」
「変も何も……ユーキ、その魔装はセラの?」
「うん、そうだよ……セラの魔装をコピーしたんだけど?」
「そう……セラはその魔装の事、何か言ってた?」
「え? いや、僕も気になったから聞いてみたけど、ヒーラーなら当たり前の、ごく普通の魔装だって……え? 違うの?」
「ヒーラーは勿論、そんな天使みたいな魔装は今まで1度だって見た事無いわ」
「なっ‼︎ セ、セラめー! 僕まで騙したなー!」
客席のセラをキッとにらむユーキ。
プイッと顔をそらし、鳴らない口笛を吹くセラ。
(ンフフー、その魔装具はぁ、私の能力に合わせて作らせたぁ、特注品なのですぅ、だから世界中探してもぉ、そんな形の魔装はどこにも無いのですぅ。これでユウちゃんはぁ、天使としてぇ、その名を轟かせる事になるのですぅ)
「その魔装具もそうだけど、さっきの技……あたしのミーティアを完全に取り込んで跳ね返した……あの技もセラに教わったの?」
「う、うん……そうだけど」
「いくらその魔装具が特殊だからって、レベル5のあたしの技をいとも簡単に返せる訳がない……レベル3って事は無いと思ってたけど、少なくともあたしと同程度か、もしくはそれ以上……そうよね? ユーキ!」
「え? ああ、うん……まあ、ね」
「やっぱりね、とんだ食わせ者だった訳ね、あの娘」
「あ、えと……後でちゃんと話すけど、今回はセラに凄く助けられたんだ! だからセラの事、あまり悪く思わないでね?」
「悪く? とんでもない、その逆よ。今日のユーキの戦法、おそらくセラの入れ知恵なんでしょ? ホント大したものだわ……あたしをここまで追い込むなんてね。そしてユーキをこれ程戦える様にしてくれた……凄く感謝してるわ……」
「パティ……」
「ああでも、あたしに嘘ついた事に関しては、後でちゃんとお仕置きするけど……ね!」
そう言って客席のセラをにらむパティ。
ゾクっとなるセラ。
(みんながぁ、パティちゃんを恐れる理由がよく分かりますぅ、レベル7の私を震え上がらせるとはぁ、パティちゃん恐るべしですぅ)
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