第22話 幻術って、使いようによっては最強の武器になるね

 大剣を水平に持ち、グリップ部分にあるリボルバーを回すヤマト。

 剣先を下に向けて地面に突き立てると、魔法陣が現れる。


「魔装‼︎」


 魔法陣が光を放ち、ヤマトの姿を隠す。

 その光が消えると、魔道士タイプの魔装衣をまとったユーキが現れる。



「ああっとー‼︎ 出ましたー! 純白の魔装衣をまとった、魔法使いユーキちゃんだー‼︎」



「待ってましたー! ユーキちゃーん‼︎」

「やっぱりかわいいー‼︎」




「魔道士タイプに変身したか……だが解せないな……」

「どうしました? アイバーン様」

「剣士タイプの時に発動させた水魔法を使っていない……あれはいったい何だったのか?」

「あ、そう言えばそうですねー……使い所無くて消しちゃったんでしょうか?」


(ンフフー、あれはこの後の為の布石なのですぅ)




(魔装を変えた? あたしの様な魔道士タイプが相手なら、剣士タイプの方が有利なはず……何でわざわざ? それにさっきの水魔法はどこに?)



 パティが色々考えを巡らせていると、ユーキが両手を左右に広げて叫ぶ。


「ホーミングアローズ!」


「アローズ対決は、前回あたしが勝ったはずよ? それとも、これもリベンジしたいのかしら?」



「ハンドレット‼︎」


 続けてユーキが叫ぶと、ユーキの周りに100本のアローズが現れる。



「何ですってー‼︎」

 驚愕するパティ。


ロッドを回しながら命令するユーキ。

「行け‼︎ アローズ‼︎」

 100本のアローズが、あらゆる方角からパティに襲いかかる。



「これは凄い‼︎ 凄まじい数のアローズが飛び交っております! パティ選手、防ぎきれるのかー?」




「すげえ! あんな数防ぎようがないよ!」

「ユーキ、行けー‼︎」



(あたしでも同時に出せるのはせいぜい15本ぐらいまで……こんな数、幾ら何でもあり得ない……となると)


 かわしながら杖でアローズに触れてみると、杖に当たる事無く、通り過ぎて行くアローズ。


(やはり幻!)


 だが一本のアローズがパティの背中に直撃する。


「あうっ!」

(いったー……なるほど、そう言う事ね)



 仕組みに気付くパティ、そしてアイバーン。



「そうか……無数の幻の中に本物のアローズを潜ませる事で、かく乱しているのか」


「なるほど、確かにほとんどが幻だと分かっていても、本物が潜んでいる以上全てを警戒しなければならない訳ですね」


(ンフフー、半分正解ですぅ……それもありますがぁ、今回の目的はユウちゃんがぁ、戦法の中に幻術を織り交ぜて来ている事をぉ、パティちゃんに意識させる為ですぅ)




 杖や防御魔法で向かって来るアローズに何とか対応しているパティだが。


(ダメだわ……幾らほとんど幻だと分かっていても、本物が混ざっている以上対処しない訳にはいかない……ユーキがずっと威力を上げ続けているから、当たれば致命傷になりかねないし、ウォールもすでに抜かれつつある……今からアローズを出しても的が多過ぎて本物だけを狙うのは困難……まとめて吹き飛ばそうにも、魔力を高めている余裕が無い……しかも防いだそばから、ユーキがどんどん新しいアローズを出して来る……ならば)


「フライ‼︎」


 飛行魔法で上空に舞い上がるパティ。


「距離を取って一気に吹き飛ばす‼︎」



(ンフフー、当然そうしますよねぇ)

 


「パティ選手! たまらず上空に飛び上がったー! さあ、ユーキ選手は追撃するのか?」



 アローズを追撃させると同時にロッドを水平に持ち、またリボルバーを回してからロッドを一回転させ叫ぶユーキ。



「魔装‼︎」


 

 魔法陣がユーキの体を通り抜けると、アーチャータイプの白い魔装衣が装着されたヤマトが現れ、魔装具も弓タイプに変化していた。




 その姿にまた観客がどよめく。



「キャー‼︎ またあのイケメンよー‼︎」

「あれ? でもさっきとはまた魔装具が変わってないか?」

「ホントだ、今度は弓を持ってるぞ!」




「な、何とー‼︎ ユーキ選手が再びヤマト選手の姿に変身したー! し、しかも今度はアーチャータイプの魔装具だー! これは一体どうなっているんだー‼︎」



 上空に飛んだパティも驚いている。


(アーチャータイプ? え、どう言う事? 確かユーキがコピーしたのはあたしとアイ君の2つだけのはず……アーチャータイプって事はもしかしてメル君の魔装をコピーしたの? いやでも、メル君はまだ魔装が出来なかったはず……あたし達が居ない間に出来る様になった? それとも、これも幻術なの?)



(ンフフー、今迷ってるでしょぉ? パティちゃん……でもその迷いがぁ、命取りになるんですよぉ)



 ヤマトがパティに向けて弓を構える。


「サウザンド、アロー‼︎」



 弓から放たれた千本の水の矢が、アローズと共にパティに向かって飛んで行く。



「あれは、僕の技!」

「ん? 僕の技? メルクがあんな技を使っている所など、私は見た事はないが?」

「あ……いや、その……」


(メルちゃんのドジぃ)




「先程のアローズとは比べ物にならない程凄まじい数の水の矢が、パティ選手に襲いかかるー‼︎」



「くっ! これも幻術? いや、迷ってる時間は無い! 水なら炎で焼き尽くす! ファイアーウォール‼︎」


 パティの前に炎の壁が現れるが、ほとんど威力が弱まる事無く壁を貫いて行く。


「幻術じゃない‼︎ くっ! しかも防ぎきれない……なんで? 今回ヤマト君は魔力を高める事も、威力を上げる動作もしてないのに? ……はっ! もしかして……」



 パティが気付くのと同じくして、アイバーンも気付いた。


「そうか! さっきの剣士タイプの時に発動させた水魔法を、あれからずっと威力を高めていたのか! パティ君に悟られない様に、幻術で隠して」



(ンフフー、正解ですぅ……この形になる事を予測してぇ、あらかじめ威力を高めておいたのですぅ……さて、これで決まってくれればぁ、楽なんですけどぉ)



 水の矢がパティに襲いかかっているが、炎の壁を可能な限り小さくして防御力を上げ、何とか致命傷だけは避けているパティ。

 そして、何とか全ての矢をしのぎ切った。



(やっぱりそう甘くはないですねぇ)



「フッ……フフフッ……やってくれるじゃないの、ユーキ‼︎」



「だから、俺はヤマトだって言ってるだろ? いい加減覚えねーとお仕置きするぞ? 子猫ちゃん」


「そんな事はどっちでもいいニャ‼︎」

「どうやらあたしを本気にさせたみたいニャ!」

「覚悟するニャー‼︎」

 パティから黒いオーラが溢れ出る。




「パティ君……頭に血が登って、何やら変なキャラになっているぞ?」

「猫キャラのパティさん……何だかかわいいです」




(最終局面ですぅ)













  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る