第21話 何で女の子の事を、子猫ちゃんと言うのかニャ?

 魔装具を構えるユーキとパティ。



「魔装‼︎」

「魔装‼︎」

 2人ほぼ同時に魔装するが、ユーキの姿に客席がどよめきだす。



「え? ユーキちゃんは?」

「ユーキちゃんの代わりに鎧着たイケメンが居るぞ?」

「キャアー! 凄いイケメン!」

「あのイケメン誰だ?」

「ユーキちゃんどこ行った?」



「ああっとー! これはどう言う事だー? 突如ユーキ嬢の姿が見えなくなり、代わりに剣士タイプのイケメンが現れたー? ユーキ嬢はいったいどこに行ったんだー?」



「そりゃ、初めて見た人は誰だって驚きますよ」

「ふむ……私だって未だに半信半疑なのだからね」

「ユウちゃんカッコイイですぅ」




「ちょ、ちょっとストーップ!」


 突然の状況に試合を止めに入るレフェリー。


「ユーキ選手はどこに行った? 試合中の選手交代は反則になるぞ!」

 ヤマトを問い詰めるレフェリーだったが、パティがそれを訂正する。


「問題無いわ、だってそこに居る彼は、ユーキが変身した姿なんだから」

「何? 本当かね?」

「ああ、間違いない……俺がユーキだ……もっとも今の名前はヤマトだがな! ……さあ、この姿はあまり保たないんだ、さっさとどいてくれ!」


「わ、分かった……パティ選手がそれを認めてるなら良しとしよう」

 実況席に説明しに行くレフェリー。



「今、レフェリーより説明を受けましたが、な、なんと驚くなかれ、あのイケメン剣士はユーキ嬢が魔法で変身した姿らしいのです! 因みに男の姿の時はヤマト、と言う名前らしいです」



「嘘おおおお‼︎」

「性別が変わる魔法なんてあるのか?」

「そんな魔法、聞いた事もないぞ?」

「最高ランクの魔装具といい、ホントユーキちゃんって何者なんだ?」


「いや、ちょっと待てよ? ユーキちゃんって以前は魔道士タイプの魔装してたよな? 今のって明らかに剣士タイプだぜ? どうなってんだ?」




「そうなんです! ユーキ嬢がイケメンに変身した事も驚きなんですが、魔装具が魔道士タイプから剣士タイプに変わっているのです! 違う魔装具に契約し直したのかとも思いましたが、先程までは確かに前回と同じロッドタイプの魔装具を持っていました! これはいったいどう言う事なのかー?」




「えっと……ヤマト君、だっけ? あたしはまだあなたの事はよく分からないんだけど……あなた、本当にユーキなの?」

「フッ、試してみるか?」

「ならもう一度力比べと行きましょうか」


 また自分のペースに持って行こうとするパティだったが。


「いや、断る」

 そう言った直後に、パティと顔が当たりそうなぐらいの近くに現れ、そっと腰に手を回すヤマト。

「え?」


「そうやって自分の流れに引き込むつもりか? フッ、悪い娘だ」

「んなっ! は、離れなさい!」


 顔を真っ赤にしながら杖を振り回し、ヤマトを遠ざけるパティ。

「危ない危ない……だが怒った顔もかわいいぜ? パティ」


「あ、あああ、あんた‼︎ あたしをからかってるの?」

「事実を言っただけだ」




「ユーキ、いや、ヤマト選手! 一瞬にしてパティ選手との距離を詰めましたが、特に何もする事なく離れましたー! これは余裕を見せているのかー?」




「いや……おそらく、パティ君の動揺を誘っているんだろう」

「動揺、ですか?」

「うむ……前回は終始パティ君のペースに持って行かれてしまったからね……ああやってパティ君のペースを乱そうとしているんじゃないかな?」


(ンフフー、アイちゃん正解ですぅ……パティちゃんを動揺させたりぃ、怒らせたりするのが目的なんですぅ)



(くっ……何なの? 彼、本当にユーキなの?)

 明らかに動揺しているパティ。

(いけない! 彼のペースに巻き込まれる……落ち着けー、落ち着けー)



「ふうっ……ストレングス‼︎」

 一息入れ、肉体強化魔法をかけてから、魔力を高めるパティ。



 大剣を鞘から抜き、ウォーターの魔法を剣にかけてからまた鞘に収めるヤマト。


(あれは、ワイバーン戦の時にやった戦法……ああやって威力を上げているのね)

「やらせない! ファイアーボール!」

 パティの周りに現れた、数個の野球のボール大の火の玉が、ヤマト目掛けて飛んで行く。


 それを鞘に収まったままの剣で弾き落として行くヤマト。

「甘いぜ? パティ!」

「さて、甘いのはどっちかしらね? バインド‼︎」


 ヤマトが弾き落とした球から炎の帯が伸びて、ヤマトを捕まえようとするが、寸前に姿が消えて再びパティの目の前に現れるヤマト。


「甘いって言っただろ? 子猫ちゃん」

「来ると思ったニャー!」


 腰を落とし、ヤマトのみぞおちにボディブローを打ち込むパティ。

 ガアンッ‼︎ 

 だが大剣でガードしているヤマト。

(これもかわされた? くっ!)

 追撃されないように距離を取るパティ。



「あっとー‼︎ わずかの間にいくつかの攻防がありましたが、お互いクリーンヒットはありません‼︎」



「ア、アイバーン様! 今パティさん、素手で剣を殴ったのに凄まじい金属音がしましたよ?」

 少し震えているメルク。


「う、うむ……最早パティ君の拳は凶器だね……格闘家に転職する事を進めるよ」

 同じく震えているアイバーン。


「あんなパンチもらったらぁ、お腹のアンコが全部出て来ちゃいますぅ……ああっ‼︎」


「ど、どうしたんですか? セラさん!」


「何だかぁ、おまんじゅうが食べたくなって来ましたぁ」




「せ、せめてこの試合が終わるまで我慢してくださいね……」


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