第19話 10時のオヤツなんて、知らなかった

 鍛錬場に向かっているユーキとセラ。



「ねえユーキちゃん、ちょっとお願いがあるんだけどぉ」

「ん? 何?」

「ユーキちゃんってちょっと呼びづらいからぁ、ユウちゃんって呼んでもいいですかぁ?」

「ん? まあ、別にいいけど」


「わぁーい! じゃあ今からユウちゃんって呼びますねぇ」

「……マナちゃん……」

「いや誰だよっ! 全然かすりもしてねーよ! 確かプリキ○アにそんな名前の娘居たな? いや関係ねーよ!」

「わ、わぁーい! いっぱいツッコンでもらいましたぁ」


「喜んでんじゃない!」

「もう! 冗談ですよぉ、ユウちゃん」




 鍛錬場に到着した2人。

 パティと出会ってから今日までの経緯をセラに説明するユーキ。



「ふむふむ……それでレベル2になったらぁ、再戦するとぉ……」

「うん……パティは別に勝たなくても、納得の行く試合をすればいいって言ってたけど、僕はやっぱり勝ちたい」


「今出来る魔装がぁ、昨日新たにゲットした2つを入れてぇ、4種類なんですねぇ?」

「うん……この黒いのがパティので、金色のがアイ君、水色のがメル君ので、こっちの紫のがセラのやつだと思う」

 4色の魔装弾を並べて見せるユーキ。



「うわぁ! 色とりどりでなんだかぁ、美味しそうですぅ」

「食べるなよ!」


「中々壮観ですねぇ……世界広しと言えどもぉ、1人で4種類もの魔装を使える人なんてぇ、まず居ないと思いますぅ……これはもう、大変なアドバンテージなのですぅ」


「うん、そう思う」

「そしてまだパティちゃんはぁ、ユウちゃんがメル君と私の魔装をゲットした事をぉ、知らない訳ですよねぇ」

「うん、当然知らないはず」


「これを生かさない手は無いのですぅ……メルちゃんはぁ、後でちゃんと口封じをしておくのですぅ」

「いや、口封じって何か響きが怖いよ……口止めね?」

「それですぅ」



「でもただ闇雲にぃ、メルちゃんや私の魔装を使ったとしてもぉ、すぐに対応される可能性があるのでぇ、ユウちゃんにはぁ、私のとっておきの技を教えちゃうのですぅ」

「とっておきの技?」


「そうですぅ、これをうまく使えればぁ、パティちゃんをビックリさせる事が出来るかもですぅ」

「ホントに? 是非教えてほしい!」


「分かりましたぁ、じゃあ教える代わりにぃ、ユウちゃんにはこれからぁ、毎晩裸で添い寝をしてもら……」

 拳を握り、殴る体制のユーキ。

「……うなんてのは冗談でぇ、勿論今すぐ教えますよぉ」

「よろしい!」





「なるほど……うん、それなら確かにイケるかも」

「あとはユウちゃんがぁ、ちゃんと使い分けられるかがぁ、ポイントですぅ」

「うん、頑張るよ」

「じゃあ今から練習なのですぅ」

「うん!」


「あぁ、でもぉ」

「ん? どうかした?」

「お腹が空いたからぁ、何か買いに行きましょぉ」

「いやついさっき、朝ご飯食べて来たよねー!」


「10時のオヤツは別腹ですぅ」

「10時のオヤツなんてねーよ!」

「ありますよぉ! 知らないんですかぁ?」

「いや、聞いた事無い」

「じゃあ今度ぉ、みんなに聞いてみましょぉ」



 とりあえず、腹ごしらえをする事にした2人であった。




 翌日、闘技場の受付にて。



「あら? おめでとうございますユーキさん、魔力レベルが2に上がってますよ」

「え! マジで?」

「ハイ! マジですよ」


 魔力レベル測定器により、レベルが上がっている事が判明したユーキ。


「よし‼︎ いよいよか……さあ、早く帰って来いパティ! フッフッフッ、目にもの見せてくれよう! フッフッフッフッ……ハァーッ、ハッハッハッハッー‼︎」


「ユウちゃん、笑い方が悪役っぽいですぅ」



 その後、5人勝ち抜き達成して賞金100万ジェルと、副賞としてゴールドの魔力カートリッジをゲットしたユーキ。




 そしてその翌日、パティとアイバーンが無事に討伐を終えて帰って来た。



「お帰り! パティ! アイ君!」

「お帰りなさいませ!」

「お帰りなさいですぅ」


「ただいま! こっちは変わった事無かった?」

「うん、いたって平和だったよー。ねえ、メル君?」

「え? あ、はい! な、何も無かったでしゅ」

「プッ! でしゅって何? メル君」


 ガーゴイルの一件をユーキ達に口止めされているが、真面目な性格ゆえに緊張して噛んでしまうメルク。



「ユーキ君、修行の方はどうかね?」

「あ、うん、そうだった……パティ! 僕、レベル2になったよ! さあ、リベンジマッチだ!」


「そう、こんな短期間でレベルを上げるなんて、頑張ったじゃないユーキ」

「エヘン!」


「じゃあ試合はいつにする?」

「パティも遠征で疲れてるだろうから、あさって……でどう?」

「そんな余裕見せて大丈夫? 疲れてる今がチャンスなのに」


 少し意地悪げに言うパティ。


「あー、それもそうだね! じゃあ今から」

「ああ、ごめんなさいウソです! あさってでお願いします!」

 

 すぐに訂正するパティであった。


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