第10話 早くトドメをさせって言われると、逆にやりづらいよね
「パティ選手の奇襲攻撃により、炎を一身に受けてしまったユーキ選手! はたしてこのまま試合を続行出来るのかー!」
「勝負としてはパティ君の勝ちだが、単純な力比べではユーキ君が勝っていた」
「パティさんに押し勝つなんて凄いです」
「治癒魔法使えるんでしょ? 早く回復しなさい」
「まあ、あたしも少し大人気なかったかなーって思うから、回復するまで待っててあげるわ」
「そんな余裕見せて大丈夫? 今やっとかないと、後で後悔するよ?」
「ああ、それもそうね! じゃあとどめを」
「あ、ごめんなさい、ウソです! やっぱり待ってください!」
「じゃあ回復するまでの間に、ホーミングアローズの事を教えてあげるわ」
「アローズは一の矢が術者を追尾して、二の矢三の矢はそれぞれ1つ前の矢を追尾する……そして術者が矢と共に飛行して、加速すればするほどその威力は増す」
「そうか……だからあの時、僕を追いかけて来たのか……」
「ホーミングアローズ!」
アローズを出現させて、指先で操作するパティ。
「こんな風にあまり速度が出てない状態なら、自由に操る事が出来るけど、加速するに従って操るのが困難になって行くの」
「パティ選手の周りを3本の光の矢が飛び回っていますが、特にユーキ選手を攻撃する様子はありません。 どう言う事でしょう?」
「余裕のつもりかー! パティちゃん!」
「ユーキちゃんを舐めてたら痛い目に合うぞー!」
「そんなお姉様も素敵ー!」
「ドS悪魔ー!」
「アイバーン‼︎ 後で覚えてなさいっ‼︎」
「普通に喋ったのにバレたぞ? メルク」
また座席に隠れているアイバーン。
「うーん……声、ですかねー?」
「さっきは面白いアローズを見せてもらったわ……そのお礼に、本家のアローズを見せてあげる」
ダメージの回復が終わったユーキが魔装具を構えて警戒する。
「さあ! 見事防いでみなさい‼︎」
「フライ!」
「フライ!」
先にユーキが飛翔し、少し遅れてパティも飛翔する。
「来なさい! アローズ‼︎」
アローズがパティを追尾し始める。
「2人共空に舞い上がったー‼︎」
逃げるユーキと追いかけるパティ。
「ユーキ! ただ飛んでるだけじゃアローズからは逃げ切れないわよ!」
「行きなさい! アローズ!」
パティに操られたアローズがパティを追い越し、ユーキに襲いかかる。
アローズがユーキに迫って来た時。
「フラッシュボム‼︎」
閃光魔法を放つユーキ。
「くっ……目くらまし?」
「アクセル‼︎」
強烈な閃光により、一瞬ユーキを見失うパティとアローズ。その隙に一気に加速してパティの後ろに回り込むユーキ。
「ホーミングアローズ‼︎」
ユーキもアローズを出現させる。
「頼んだよ! アローズ‼︎」
ユーキに操られたアローズがパティに向かって行く。
「これであたしの視界を封じたつもり? 甘いわよ、ユーキ!」
目をつぶったまま振り返り、空中で静止するパティ。
ユーキも警戒して同じく静止する。
「例え見えなくても魔力を辿れば!」
指先でアローズを操作して、ユーキのアローズをことごとく撃墜して行くパティ。
「全部迎撃された?」
「言ったでしょ? 加速すればするほど威力が増すって……あたしのアローズは既に加速していた……出したばかりのユーキのアローズより強いのは当然よ」
「納得……」
「アローズ対決はパティ君の勝ちだね」
「あんなに加速した状態のアローズを操れるなんて」
「熟練度の違い、と言う事だろうね……コピーしたてのユーキ君と数々の戦いで使ってきたパティ君の」
「ほら、油断しない! あたしのアローズはまだ生きてるわよ!」
パティのアローズが再びユーキに向かって行く。
「くっ……ウィンドウォール‼︎」
風の壁が一の矢を防ぐが、二の矢三の矢が壁を突き抜けて、それぞれユーキの右腕と右足を貫く。
「あぐっ‼︎」
激痛の為飛行魔法が維持出来ず、落ちて行くユーキ。
「ああっと! 光の矢を受けたユーキ選手が落下して行く! あの高さから落ちたら危険だー‼︎」
「いかん、ユーキ君‼︎ 飛行魔法を発動するんだ‼︎」
「ユーキさん‼︎」
「キャー‼︎ ユーキー‼︎」
「ユーキちゃん、危ない‼︎」
「何とかしろ、ユーキ‼︎」
「フ、フラ……ぐうっ‼︎」
痛みの為集中出来ないユーキ。
地面に激突すると思われた時、スッとパティがユーキをお姫様抱っこですくい上げる。
「パティ?」
「あたしがユーキを死なせる様な事、する訳ないでしょ」
地上に降り立つパティ。
「あっと間一髪! 何と敵であるパティ選手がユーキ選手を救ったー‼︎」
「ユーキちゃん、良かったー」
「パティちゃん、ありがとう‼︎」
「よくやったぞパティー‼︎」
「それでこそパティちゃんだ!」
「パティ、ありがと……と、ところでさ……もうそろそろ降ろしてくれない? このかっこ、ちょっと恥ずかしい……」
パティにお姫様抱っこされたままのユーキ。
「いいじゃない、もう少しこのままで」
「いや、あの……」
顔が真っ赤になるユーキ。
「キャー‼︎ パティ王子様ー‼︎ 私も抱っこしてー‼︎」
「ユーキちゃんもお姫様みたいでかわいいー!」
「このツンデレひねくれ娘ー!」
「アイ君、三枚下ろし確定ね」
「こ、声まで変えたのに何故バレるんだ?」
隠れながらガタガタ震えているアイバーン。
「いや、怖いならヤジらなければいいでしょ? バカなんですか?」
「君も怖いよ、メルク」
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