第9話 白い天使と黒い悪魔

「さあ、それでは改めてパティ選手のプロフィールを紹介させていただきます! 名前はパティ、17歳女性、クラスは魔道士、魔装具はワンドタイプ、魔力レベルは5、魔装具ランクは素材3プラス魔石4のランク7でございます‼︎」

「魔装具ランクはユーキ選手よりわずかに劣るものの、魔力レベルは圧倒的にパティ選手の方が上……ユーキ選手! これは厳しい闘いになりそうだー‼︎」




「パティ君……どこに行ったのかと思えば……」

「ユーキさんと闘うなんて、パティさんどうしたんでしょうか?」

「ユーキ君の実力を肌で感じたかったのか、もしくは……」

「もしくは?」


「いや、案外ユーキ君の人気に嫉妬してイジメるつもりかもしれないぞ!」

「もう、パティさんに怒られますよ?」



 闘技場に現れたユーキ。



「ユーキ頑張れー! あと1人だぞー!」

「ユーキちゃーん! 頑張ってー!」

「レベル差なんて吹き飛ばせー‼︎」

「嬢ちゃん、死ぬなよー!」

(縁起でもない事言うなっ‼︎)


「パティちゃんもかわいいー!」

「素敵ー! お姉さまと呼ばせてー!」

「パティ様、踏んづけてくださーい!」

「罵ってください!」

(何であたしの声援は変なのが多いのよ)



 双方への声援が飛ぶ中、恨みがましい目でパティを見つめるユーキ。

「な、なによーその目は?」

 パティに聞こえないぐらいの小声で何やらブツブツ言っているユーキ。


「せっかく4人勝ち抜いて、あと1人勝てばゲーム機ゲット出来たのに、何でよりにもよってパティが出てくるんだよ……とてもじゃないけど、魔装しないと勝てる相手じゃないし、魔装するだけの魔力が残ってるかどうかも分からないし、いや、仮に魔装出来たとしても勝てるかどうか分からないし……ブツブツブツ……」


「ブツブツ言うんじゃありません!」

「ユーキ? あたし言ったわよね? むやみに人前で魔装具を見せちゃダメって……それなのに、これはどう言う事かしら?」

「ぐっ……いや、これはその……こちらにも事情がありまして、ハ、ハハハハ」

「笑って誤魔化すんじゃありません‼︎」

「ハイッ‼︎」

 ビクッとなるユーキ。


 パティ、フウっとため息をつき。

「まあ、見せちゃった物は今更仕方ないわ……あ、でもここに居る全員の口を封じれば大丈夫か?」

「いや、怖い事をサラッと言うんじゃないよ‼︎」



「みなさん、たいへんお待たせいたしました! ユーキ選手、5人抜き達成なるか? はたまたパティ選手がそれを阻止するのか? ユーキ嬢争奪戦最終戦!試合開始です‼︎」



「ユーキ嬢争奪戦……そう言えばそういう事になってたわね……ならあたしが勝ったら、あたしの言う事を何でも1つ聞いてもらおうかしら?」

「か、可能な範囲ならね」



「ユーキ? まさかあたし相手に魔装しないで勝てる、なんて思ってないわよねー?」

 魔装具を構えるパティ。

「やっぱ無理だよね」

 同じく魔装具を構えるユーキ。


 2人の立っている場所に魔法陣が現れる。

「魔装‼︎」

「魔装‼︎」


 2人同時に叫ぶと、お互いに魔装衣が装着される。


「ああっとー! 2人同時に魔装したー‼︎ しかもユーキ選手は5戦目にして初めて魔装しました! 失礼ながら私、ユーキ選手はもしかして魔装が出来ないのでは? などと思ったりもしてましたが、どうやら魔力を温存していたもようです!」


「お互い魔道士なので同じタイプの魔装衣ですが、ユーキ選手は白、パティ選手は黒、正に白と黒のコントラスト! さながら白い天使と黒い悪魔の戦いだー‼︎」

「悪魔ゆーなっ‼︎」

「まったく……」



「さて……じゃあまずは……ユーキ、サイクロプスを倒したあの魔法で力比べしましょう」

「サイクロプス……オーケー」


 魔装具を構えて魔力を高めるパティ。

 ファイアーを出してから、ロッドを回して火力を上げるユーキ。

 そして同時に発動させる。

「バーニング……ファイアー‼︎」

「バーニング……ファイアー‼︎」


「2人が共に放った炎の塊が、両者の中央でぶつかり合っているー‼︎ 押し勝つのはどちらかー‼︎」


「互角、か……ちょっと傷付くわね」


「互角……まあパティ君の能力をコピーしたものならば、当然と言えば当然なのだが……いや、ユーキ君が動く」


 ロッドを回転させ始めるユーキ。

 ユーキの放った炎が徐々に巨大になって行く。


「ぐっ……ここから更に威力を上げるって言うの?」

パティも魔力を高めて対抗しようとするが、だんだん押され始める。


「ダメだ! 堪えきれない……ならば!」

「ホーミングアローズ‼︎」

 パティの放ったアローズがユーキの背後に回り込み、ユーキの背中に直撃する。


「あうっ!」

 ユーキの集中が乱れた事により、均衡を保っていた炎の塊がユーキを襲う。

「くっ!」

 炎が消え去った跡に、ファイアーウォールの後ろでへたり込んでいるユーキが居た。


「ファイアーウォールで何とか直撃だけは避けたみたいだけど、それでもかなりのダメージはあったみたいね」


 パティの戦い方に、客席から不満の声が上がる。

 だが本心から言っている訳ではなく、パティへの親しみを込めて言っているのが分かる。


「何だよー! 力比べじゃなかったのかよー!」

「後ろから撃つなんてひどいわ! パティちゃん」

「レベルの低い相手にそんなやり方して楽しいのかよー! って隣の奴が言ってましたー!」

「いや、言ってませんからねー‼︎」

「大人気ないぞ! 正面から戦いたまえ!」


「アイバーンうるさい‼︎」

「な、何故私だと分かったんだ? パティ君は」

 前の座席の背もたれに隠れているアイバーン。

「喋り方に特徴ありますからねー、アイバーン様は」

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