第4話 ボクシングかっ!

「くそ! 勝手に話進めやがって……まあ何にせよ、絶対に負けられないんだ……ゲーム機の為に!」



「さあ始まりました、ユーキ嬢争奪戦! 最初の挑戦者はライト選手、見事勝ってユーキ嬢をゲットできるかー!」



(さて、どうする? 僕が使える魔装弾はシルバーが2個……でも今までの事を考えると、おそらく魔装した状態では5人目まで保たないと思う……ならばとりあえずこのままで行けるとこまで行ってみるか)


 魔装具を具現化させて、シルバーカートリッジを2個共セットするユーキ。


「さあ! 行くよ!」

「ストレングス!」

 ユーキの全身を、光のオーラが包み込む。

(よし、使える)

 魔法の発動を確認するユーキ。



「ストレングス……あたしが使ったのを見て覚えたのか、それとも元々使えたのか……?」

「あの時点ではユーキさんは知らなかったみたいですから、パティさんのを見て覚えたんだと思います」

「だとしたらホント、反則級の能力よねー」



「魔装はしないのかい? ユーキちゃん」

「こっちにも事情があってね……気にせずどーぞ」

「では遠慮なく……って言いたいけど、魔装してない娘を相手に魔装して闘うのはさすがにかっこ悪いからね……」


 そう言って魔装具を具現化させるライト。

 両腕の拳から肘の辺りまで、防具が装着される。

「僕もこの状態で行かせてもらうよ」

「お心遣いどーも」



 トーン、トーンとその場で何度かジャンプするユーキ。

(よし、体が軽い……それじゃあ試してみるか)


 着地した瞬間ライトに向かって走り出し、頭上にロッドを振り下ろす。

 それをガードして払いのけ、パンチを繰り出してくるライト。

 右に回転してかわしつつ、ロッドを振り抜くが素早くガードするライト。

 ユーキを掴みに行くが、素早く後ろに飛んでかわし、クルリとロッドを回すユーキ。



「まずはユーキ選手が仕掛けましたが、お互い決定打にはならずー‼︎」



「中々素早い動きだけど、重さが足りないね……今度は僕から行くよ!」

 再びユーキを掴みに来るライト。

 ユーキはロッドでガードするが、そのままロッドを掴み、グイッとユーキごと引き寄せる。


「さあおいで……抱きしめてあげるよ」

 ユーキを抱きしめようとするライト。

「き! も! い‼︎」

 ロッドを回転させて掴んだ腕を振り払うと、1歩分距離を開け、ロッドを振り下ろすユーキ。


「重さが足りないって言っただろ?」

 またしてもガードされるが、何故か不思議そうな顔をしているライト。

(ん? 気のせいか? さっきより打撃が強くなったような……?)



「ライト選手、投げ技を狙ったのか? ユーキ選手に上手くかわされたー‼︎」



「投げ技というより、完全にユーキ君を抱きしめに行ったね」

「アタシ、アイツ、コロス!」

「何故片言なんだ? パティ君」



 再びロッドをクルリとまわし、ビリヤードの様に構え、そのまま突きに行くユーキ。右腕で殴るようにして横に受け流すライト。

 はらわれたロッドの勢いのまま回転して右側頭部めがけてロッドを振り抜く。

 だがまたもガードされてしまう。


(く……気のせいじゃない! 明らかにさっきより重くなってる)



 またロッドを回してからライトの脳天に振り下ろす。

 ガードするが、受けるのが精いっぱいで反撃に行けないライト。

(ぐ……何だ? お、重い)



「妙だな?」

「え? 何がですか? アイバーン様」

「初めのうちは楽にユーキ君の攻撃を受け流していたが、だんだん彼に余裕が無くなって来たように見える……それに、先程からのユーキ君のあのロッドを回す動き……何か関係があるのか……?」


「は……そういえば!」

「パティ君、何か心当たりがあるのかね?」

「ええ、あたし達がサイクロプスと戦った時、ユーキは最初ファイアーを出して、そこから火力を上げて行ったのよ……その時にも確か今みたいにロッドを回していたような……」


「ふむ……魔力を高めてから技を出すのが普通だが、一度放った魔法の威力を後から上げるなど、そんな事が可能なのか?」

「でも実際にユーキはそれをやったのよ」


「そうか……では今もああやってストレングスの威力を上げている、という事か?」

「ええ、おそらく」



 ロッドを回してから頭部へ攻撃するというパターンを繰り返すユーキ。

「ああっと! ユーキ選手凄まじい連続攻撃だー‼︎ ライト選手防戦一方ー‼︎」



「だが先程からユーキ君の攻撃が単調すぎる……頭部ばかりを攻撃しているような……」

「何か狙ってる?」



 反撃する為にずっと片腕でユーキのロッドを受けていたライトだったが。

(く……受けきれない!)


 脳天への一撃を、ついに両腕でガードするライト。

 瞬間ユーキはロッドを手放し、ライトの懐に潜り込んでみぞおちへ渾身の右ボディブローを叩き込む。

「ぐえええ‼︎」

 膝から崩れ落ちるようにして倒れ込むライト。



「強烈ー‼︎ ユーキ選手のボディブローがライト選手の腹に突き刺さったー‼︎」


「よし! うまくいった!」


「ダウン‼︎ カウント‼︎ ワーン! ツー!……」



「あ、あれは! パティ君必殺の悶絶ボディブロー‼︎」

「べ、別にあたしの技じゃないわよ!」


「でもユーキったら、やっぱりこれを狙ってたのね」

「そのようだね……いくらストレングスで強化しているとはいえ、魔装具で受けられては決定打にならない……だから攻撃を頭に集中させてガードが両方上に行った瞬間にボディに一撃……じつに理にかなっている」


「……ナーイン‼︎ テン‼︎」

「ライト選手立てないー‼︎ ユーキ嬢の勝利でーす‼︎」



「やったね!」

 ニカッと笑ってVサインをするユーキ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る