第3話 男なら、命をかけて勝たねばならぬ時がある
ユーキを見た観客達が騒ぎ始める。
「おい! あの娘メチャクチャかわいいぞ‼︎ 彼女にしたい‼︎」
「いや、俺は妹がいい! お兄ちゃんって言われてぇー!」
「キャー‼︎ かわいいー‼︎ ユーキちゃーん‼︎ こっち向いてー‼︎」
「応援するよー‼︎ 頑張ってー‼︎」
「お嬢ちゃん‼︎ 頑張れー‼︎」
「や……ハハ……どもども……どもです」
照れながら手を振って応えるユーキ。
メルクの隣の席に座るパティとアイバーン。
「まったくあの娘ったら、目立つ事しちゃダメって言ったのに、目立ちまくってるじゃないのー」
「まあまあパティ君、出てしまったものは仕方がない……いっそこれは戦闘経験を積むいい機会になるさ」
「それに、私はまだユーキ君の実力を測りかねている……変身能力も含めてね……だから闘いぶりをちゃんと見てみたい」
「さあ、それではユーキ選手のプロフィールを簡単に紹介させていただきます!」
「名前はユーキ、14歳女性、クラスは魔道士、魔装具はロッドタイプ、魔力レベルは1です……ですがみなさん! レベル1と侮るなかれ! 使用する魔装具は、素材ランク5プラス魔石ランク5の、なんと最高ランクの10だー‼︎」
「うおー! 凄え‼︎」
「俺、ランク10の魔装具って初めて見たよ!」
「ランク10なんて、とても個人で買えるような金額じゃないだろー? もしかしてあの娘ってどこかの国のお姫様か? ハハハ」
「あちゃー!」
頭を抱えるパティ。
「もう! 魔装具の事、全員にバレちゃったじゃないのー」
「まあまあ、仮によからぬ事を考える輩がいても、ここではうかつに手は出せないさ……それに、今日は我々が居るんだ」
「それはそうなんだけどさー」
「さあ! こちらのユーキ選手に挑戦する者は居ないかー‼︎」
「レベル1だぜ? お前行ってきたら?」
「馬鹿野郎! あんな女の子相手に大の大人が挑戦できるか! かっこ悪い……」
ユーキが少女という事もあって、中々名乗りを上げる者が現れなかったがーー
「僕が挑戦するよ」
1人の青年が闘技場に現れる。
「はい! 挑戦表明ありがとうございます、ではあちらで簡単なプロフィールをご記入ください」
「ああ、分かった……」
去り際に何故かユーキの方を見て、ウインクする青年。
「ゔえ! な、何だ? あいつ……気持ち悪」
ゾッとするユーキ。
「さあそれでは、挑戦表明してくれた彼のプロフィールを紹介させていただきます……名前はライト、16歳男性、クラスは武闘家、魔装具はナックルタイプ、魔力レベルは2、魔装具ランクは素材1プラス魔石2の合計3です‼︎ 」
「魔装具ランクはユーキ選手より遥かに劣るものの、魔力レベルは彼の方が上! これはいい勝負になるんじゃないでしょうか? 投票の締切は15分後となっております! みなさま、ふるってご参加ください‼︎」
ストレッチを始めるユーキ達。
「この試合、どう見る? アイ君」
「そうだね……変身状態のユーキ君ならば、全く相手にならないだろうが、おそらくユーキ君は無闇に魔装は出来ないだろうね」
「でしょうね……」
「え? どういう事ですか? アイバーン様」
「ふむ……先日の戦いぶりを見た限りでは、ユーキ君の変身能力はかなりの魔力量を必要とするのではないかと思っている」
「あたしもそう思うわ……初めてユーキが変身した時はブロンズカートリッジを使ってたけど、魔法を一発撃っただけで魔装が解けていたもの……」
「メルク、今日ユーキ君は魔装弾を購入したのかね?」
「ええ、パティさんに返す分も含めて、シルバー3つとブロンズ2つを買ったらしいです」
「そうか……ユーキ君自身も魔力量の事を把握しているなら、なるべく魔装は控えるだろう……そうなった場合、果たしてユーキ君がどれ程闘えるのか……」
パティがふと見ると、席に付いている端末を操作しているアイバーン。
「アイ君、券買うの?」
「ああ、せっかく来たんだから楽しませてもらおうかと思ってね」
「ねえ、あたしの分も買ってくれない? 当然ユーキで」
「それは出来ない……君はまだ17だろう? 未成年に券を渡す事は禁止されている」
「ええ? いいじゃない別にー」
「ダメだ! 私の責任問題になる」
「黙ってたらバレないわよー」
「いい加減にしないか! ダメだと言っているだろう!」
カチン‼︎
「あんたは何でそんな時だけ妙に常識人ぶるのよー!」
アイバーンの頬を思いっきり左右に引っ張るパティ。
「ふぁ、わはふぃわほぉほほぉほふぉーふぃふぃふぃんふぁ(私は元々常識人だ)」
「どこがよ! この変態海パン男がー‼︎」
「お、お二人共! そろそろ試合が始まりますよ!」
「只今をもって、投票を締め切らせていただきます!」
「それでは両選手中央へ!」
「簡単にルールの説明をさせていただきます……試合時間は無制限、勝敗は10カウントダウンもしくはギブアップのみ、試合ですので相手を殺す様な行為は禁止です……その他レフェリーが危険と判断した場合は、試合を止める事もあります、よろしいですね?」
「うん、分かった」
「オーケー」
「やあユーキちゃん、1つ提案があるんだけど?」
「提案? 何?」
「僕は見ての通りのイケメンだ」
(うわー、自分で言っちゃったよこいつ)
「だから何人もの女の子に付き合ってほしいと頼まれ困っている」
「あ、そう」
「だが君のかわいさも相当なものだ! そこでだ! もし君が勝ったら、君を僕の彼女にしてあげよう‼︎」
聞き流そうと思ったが、ふとおかしな点に気付き。
「はあっ? 僕が勝ったら? いやいやいや! それじゃあ僕、勝てないじゃないか!」
「ハッハッハッ! 照れ屋さんだなー!」
「いや、照れてねーし!」
「分かった分かった……じゃあ君が負けたら君は僕のものだ! それでいいね?」
「まあ、それならまだ納得……あれ……? ま、いいや! 要は勝てばいいんだ!」
「おっと? 何やら新たなルールが追加されたようです……何と! 試合に勝てばユーキちゃんを彼女に出来るようだー‼︎」
「何ー‼︎ マジかー‼︎ 次俺‼︎ 俺が挑戦するぞー‼︎」
「俺もやる‼︎」
「わ、私も行くわー‼︎」
「わ、わしも……」
「おおーっと‼︎ 今の新ルールを聞いて次々と挑戦者が名乗りを上げるー‼︎」
「は? いや待てって、それはこの試合に限っての事だろ?」
レフェリーに詰め寄るユーキ。
「だってその方が盛り上がるじゃん‼︎」
ニコッと笑ってグーサインを出すレフェリー。
「こ、こいつ……」
顔が引きつるユーキ。
「あいつらー‼︎ 勝手な事言ってー‼︎ ユーキはあたしだけのものなのにー‼︎」
黒いオーラが溢れ出るパティ。
「いや、それも違うと思いますが……」
「どこへ行こうとしてるんですか? アイバーン様」
闘技場に降りようとしていたアイバーン。
「あ、いや、ユーキ君の闘いぶりをもっと近くで見ようかと……」
「座ってなさい」
「はい……」
「それでは、ユーキ嬢争奪戦! 試合開始‼︎」
「いや、趣旨変わってるだろっ‼︎」
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