第9話 魔力残量を調整したいと思います…(9話)
さて、いよいよ魔法大全の読んでない部分もあと20ページほどとなった。
これまで地水火風の4属性がそれぞれ20ページ弱で説明されていたことから、あと1つ魔法があると思われる。
空間魔法だろうか?
それとも時間魔法だろうか?
私は期待を胸に、魔法大全の1ページ目を見た。
『魔法の基礎』それがこの第1章のタイトルである。
考えてみれば当然だ。
私は基礎をすっ飛ばして属性魔法のページから読んでいたことになる。
やはり基礎は大事だ。
基礎がしっかりしていないと応用は利かない。
前世で励んだ古武術柔術もそうだった。
私は反省を込めて基礎のページを読んだ。
納得の内容だった。
長いので要約するとこうなる。
この世界には体力、魔力、力、素早さのパラメーターがあり数値化されたものを認識することができる。
自分のパラメーターは意識すれば見れるが、他人のパラメーターを見るには専用の魔道具がいる。
魔力は生き物全てがその体内に持っており、魔力に意志を込めて対象へとぶつけることで魔法が発現する。
規模や複雑さなどによって必要な魔力は変化する。
魔力が少なくなると回復のため眠くなり、完全になくなると意識を失う。
魔力は使えば使うほど絶対量が増える。
空にしたときの絶対量の増え方が一番大きいことになる。
年齢とともに、魔力の増加量は小さくなる傾向にあり、子供ほど増えやすいが、小さい子供は自身の魔力を上手く使えないので、子供のうちから魔力を育てるのは難しい。
早い子供で5歳頃から魔力を操作でき、この頃から魔力を増やすことができた人物は宮廷魔道師クラスになることが多いが、実際にそれができる子供は少ない。
この世界の成人(18歳)の平均的なステータスは体力100、魔力100、力100、素早さ100 くらいであるが、5歳から鍛えた子供は魔力の数値が1000を超えることもある。
とこんな内容だ。
ステータスは自分で見ることができるんだ…。
私は早速自分のステータスを見ようと意識を集中した。
体力3、
魔力9999+、
力1、
素早さ1
何か一つだけ数値がおかしいんですが?
胎児なので体力の3や力1、素早さ1は納得できる。
魔力9999+、何これ?
考えられる原因は胎児のくせに何度も魔力切れを起こすまで魔法?(超能力)を使い続けたことくらいだろうか。
それにしても9999ってカンストですか?
後ろの+って何でしょう?
不思議に思って魔力の欄に意識を集中すると詳しい情報が開いた。
魔力9999表示限界オーバー(約7.26×10^8) 習得済み魔法26
10^8って10の8乗のことだろうか?10の6乗が100万だから、魔力7億オーバー…。
これってばれたら解剖されるレベルじゃないだろうか。
生まれる前からエライ問題にぶち当たってしまった。
必死になって考えているとふとひらめいた。
このステータス画面には分母がないのだ。
前世のRPGとかではHP10/10 MP8/8など、最大値と現在値が表示されていたが、この世界は最大値が無いのである。
ということは、調べられたときに通常の人間レベルまで魔力を減しておけばいいのだ。
しかし、魔力7億オーバーの状態から、上手いこと一般人レベルだけ残して魔力消費できるだろうか。
そもそも一般人の魔力ってどれくらい?
いや、迷っているひまはない。
できるできないじゃない。
やるんだ。
私は新たな決意を胸に、魔力を少し残す練習を始めた。
まずは風魔法で挑戦だ。
生物が全くいそうにない北極近くの海上に風魔法を行使する。
四方八方から強風を吹き荒らし北極の海上に数え切れないほどの竜巻が発生している。
ステータスを確認すると魔力は6億に減っていた。
しかしまだまだだ。
いまできている竜巻のおよそ6倍の数竜巻を作ればいいのだろうか。
早速チャレンジする。
なんか眠い。
ステータスを確認すると魔力0だった。
やり過ぎたのだ。
難しい。
『ピンポンパンポン サイコキネキス ミリオントルネードもどき(100万竜巻もどき)を習得しました』
次に目を覚ますと魔力がまた増えていた。
一旦0にしたのが悪かったのか20億を超えている。
ということは前回の3倍ほどの竜巻を作らないといけないのか。
ため息が出そうになりながら視点を北極海上空に移すと、海は大荒れだった。
どうやら前回の竜巻の影響がかなり残っているようだ。
海上には打ち上げられた深海魚らしき魚がおなかを見せて浮いている。
これ以上はまずい。
環境破壊だ。
私は竜巻による魔力消費をあきらめた。
次に私が考えたのは地魔法による謎ビルの建築である。
滅多なところでやれば騒ぎになるが、建築予定地はお月様だ。
一番近くを公転している青い月は自転と公転の周期が等しいらしく、いつも惑星に同じ面を向けている。
これは地球の月と同じ現象だ。
私にはクレヤボヤンスでこの月の裏側を見ながら、惑星からは絶対確認できない位置に謎ビルの建築を始めた。
砂浜の謎ビルの経験を生かし、地盤固めなどの基礎工事も一切手抜きしない。
青い月の土はどうやらニッケルや銅などの金属を多めに含んでいるらしい。
建築物を作るついでに、岩石からニッケルと銅を取り出し、白銅の金属鏡を作ったりして室内の装飾にも気を配る。
大きな家を作るときとさほど変わらぬ魔力を消費しながら精密な装飾を施していく。
もちろん階段と入り口や玄関の装飾も忘れない。
慣れてきたところでスピードを上げ20軒ほど2階建ての謎ビルを仕上げたところで魔力を確認するとあと10億ほどに減っていた。
この調子なら、あと18軒か19軒建築すればほどよく魔力が調整できる。
用心しながら18軒目を立てたところでふと気がついた。
整然と並んだ建物だが、荒野ににょきにょきと立っており道が全く整備されていない。
魔力を確認するとあと1億少しだ。
よし、残りの魔力で道路を整備しよう。
サイコキネキスでビルの間に片側2車線の道路をつくる。歩道も完備だ。町の半分ほどに敷設したところで眠気が来た。
夢中になりすぎた。
ステータス確認すると魔力は0だった。
『ピンポンパンポン サイコキネシス クリエイトタウン(町創造)を習得しました』
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