第56話 会談

 四月十二日日曜日


 日曜日の午前九時に道場に出かけた。

 もちろん、週に一回の道場に開く集会である。

 他は一時間ほどの会合が週に一、二度あるそうだ。

 幹部となった俺だが、下っ端なので見ているだけで済んだ。

 巫女スタイルの要、純子、そして初めて見る小学生の女の子が隣に並び、その後ろに俺は控える。

 だが、後ろでも前の女子の背が低くて前に立っている気分になる。

 その子は初めてだったので声をかけてみた。


「俺は広瀬って言うんだけど君、名前は?」

「あたし、浅丘結菜だよ。お兄さんも保持者って言う人?」


 俺の声に振り返った彼女は、愛くるしく笑って答えてきた。


「ああっ、そうだよ。これからよろしく」

「ハイな」


 彼女の髪の毛がツインテールで、どことなく彩水に似ていて納得できないものがあるが、巫女姿は、ぬいぐるみのようで実に可愛い。

 お持ち帰りクラスだ。

 それに比べて、俺がげきの服飾を着るとコスプレをしているみたいで、合ってない気がして恥ずかしい。

 ちなみに俺の横に、なぜか今村陽太が同じげきを着て立っていた。

 宗派違うだろうと思いながら、服が似合ってたので歯ぎしりする。


「信者になったばかりのお前が、何でここに立っている?」

「僕も知りませんよ」


 今村は投げやりに言ってきた。


「知らないで幹部に昇進か? 頑張れよ」

「嫌です」

「そうか、彩水様に報告しておこう」

「そっ、それは止めろ。止めてください。頑張りますから」


 あっさり懇願してきたので、彩水が何を握ったのか聞いておこう。

 そんな考えの俺の前では、二十人ほどの老若男女の信者が来ていて道場主の話を聞いていた。

 これは長い説教で、次第に睡魔に襲われだす。

 足のひざから力がぬけそうなところで、説教が終わって安堵する。

 道場主が退き、代わりに直人の竜笛りゅうてきの音に合わせて、千早を羽織った真打の彩水様降臨。

 孫にも衣装で、絵になるので写真を撮りたくなる。

 髪を下ろした彩水が中央の席に座り直人が後ろに控えると、信者が何人か立ち上がり用紙を台の上に置いていく。

 悩みを箇条書きして折りたたんだ無記名用紙だそうで、このやり方は栞のときから続けているそうだ。

 それを手にとって彩水は、書いた人物の素性を克明に言葉にして悩みの助言を与える。

 その用紙の信者が喜んで御礼の声を上げた。

 俺の占いの上位バージョンで、あまりに立派に行事をこなすので嫉妬しそうになる。 

 彩水を軽視してたことを改めようと考えていると、大きなクシャミを三回して鼻水を信者の用紙につけてしまった。

 脇にいた直人がすかさずハンカチをあてがって拭く。


「かんなぎ様、ふふっ」


 信者たちに小さく笑われていた。

 やはり彩水だった。

 ひととおり終えると、台の前に出て祝詞を口ずさみ舞を披露する。

 この前、練習してた舞だ。

 相変わらず切れのある動きで感心してしまう。

 直人の竜笛も良くて、いいコンビである。

 舞が終わると信者たちの拍手が起き、行事が終了した。

 老人の信者たちが彩水に握手を求めて群がる。

 もてもての彩水だが、今日は持て余し気味のようだ。

 集会の解散で信者たちが帰り、なじみの幹部だけ残った。

 千早を着た彩水が近づくので素直にほめてやる。


「教祖様をこなす彩水は見直したわ。立派で嫉妬した」

「惚れるなよ」


 当たり前のようなテンプレ発言。


「人のみぞおちにパンチを入れてくる人物には、見えなかったが」

「一言多い」


 神楽鈴を持った手で俺の胸を叩いてきた。

 ちょっと痛いが安心する。

 そこへ要が加わってくるが、巫女姿は久しぶりで、偽者イミテーションでも綺麗なので見入ってしまう。


「忍君のげきの姿、素敵です。今度シャメ撮らせてください」


 栞は誰かの目線で俺の服飾を見て、気に入ったようだ。


「似合ってないし、恥ずかしいんだけど」

「着なれてないだけです。問題ないです。オッケーです」


 彼女にほめられるとその気になりそうだ。


「さー、そろそろ着替えて。お昼までに道場を閉めますから」


 グレーの作業着を着た経理の中村女史が、幹部に声をかける。

 彼女は昨日の希教道創立メンバーに入ってなかったので、彩水と同じで後から入った人のようだ。


『着替えて食事をしたら、会長の病院に移動してください』


 耳の後ろに栞の念話が入ってくる。

 目の前の要が俺にいちべつすると、他の女子と一緒に更衣室に向かった。






 移動したあとの俺の行動は、トラブルコントラクターのバート・アフレックを会談が終了するまで居場所の確認と監視。

 要がバックアップで栞たちと連絡を取る。

 道場主と女医が、栞と一緒に公園で会長と会う手はず。

 高田さんは揉め事に備えて三人の後ろで待機。

 栞の調査では、バートは会長の病院にいるとのこと。

 公園に一緒に来るかも知れないけど、一番に目が話せない人物だから行動を確認していてほしいと俺が任命された。

 彼女と一緒に居たい気はしたが、手伝うと買って出たのだからしかたない。

 それと撤収の合図は、女医から携帯電話にワン切りが入る予定だ。

 希教道メンバーと別れて、そのままバスで柳都中央病院まで行く。

 中学のとき入院してたから、病院内は大体把握していた。

 外来者の付人気分で病院の受付ロビーを抜ける。

 昼食を病院内のレストランですませてから、十階展望ラウンジに上がると数人の患者がベンチに座っていた。

 時計を見ると十二時を回ったところ。

 誰もいない展望デッキのベンチに座り遠景を見ると、会談場所の公園も見通せた。

 ひととおり周りを見たあと、バートを思い出しイメージしてみる……が何も起こらない。

 これは想定内で、前日もらっていた会長の新聞写真をポケットから出して見る。

 やせているが狡猾さがにじみ出ている人物写真の会長は、どこかの組長かと思わせる重みがあった。 その写真からイメージを試みる。

 しばらく集中すると、額の先から新たな映像が周りに開けてリンクに成功した。

 病室の中で、手に持ってる書類を前にいる女性に渡している。

 秘書だろうか。

 その奥の壁沿いに、黒スーツを着て黒サングラスのバートがいた。

 すぐ見つかり安堵する。

 窓側には孫の谷崎さんもいる。

 会話もなく静かな状態だ。


遠隔視オブザーバーは上手くいってます?」


 隣から声がかかり、振り向くと要がいつものスタイルで座っていた。


「ああっ、前よりすぐ使えるようになった。栞先生にコツを教わったお陰だよ」

「覚えの良い生徒なので教えがいがありました。ただ使用するときは失敗の繰り返しは厳禁ですからね」

「ははっ、特訓の成果が出ることを願ってくれ」

「そうですね。期待してます」

「会談組みはどうなの?」

「はい。今、叔父たちは車に乗ってこの病院の側にある、指定された中央公園に向かってます」

「会長行くかな? 今見たらまだ動きがないけど」

「代理って可能性も捨て切れませんけど」


 要の話を聞きながら、会長をのぞいてみる。

 谷崎さんがバートの場所へ移動して、何か無線機のようなものを受け取っていたが、奥で声が聞こえない。

 ここで栞先生に教わった連続移動をやってみる。

 谷崎会長から谷崎知美にイメージ変更してみると、テレビのチャンネルボタンを押すように瞬時に谷崎知美の目線に代わる。

 上手くいった。

 バートが谷崎さんに渡した物が、はっきり見て取れた。

 だが、何かわからない。

 また別の物も渡した。

 それは無線の小型マイクのようだ。


『……なのね? じゃあ、このボタンは?』


 谷崎さんがバートに質問している。


「信号音のボリュームダ」

『そっか。それで向けるだけで鳴るのね』

「ヒートシーカーはそう言うものダ」


 バートが言ったが、わからない。

 展望デッキに戻って、要にヒートシーカーを聞いてみると驚かれる。


「ちょっと待って」


 そう言ってしばらく押し黙り、確認に行ったようだ。


「見てきた。谷崎先輩が持っているのは、赤外線熱探知機よ。狩猟で使われている簡単なやつね。人体の熱源を周囲の温度差により探知して光の点滅と信号音を出して知らせるわ。範囲は300メートルはいける」

「詳しいな」


 俺は要に尊敬の眼差しを送る。


「あっ、た、高田さんから聞いて……」


 ちょっと口ごもる要。

 だとすると高田さんの知識はなんだろう? 

 本人も変わっているが、ボディーガードの知識なのだろうか。

 だが、今は詮索するときじゃない。


「その赤外線熱探知機って何に使うわけ?」

「私が本物か偽者イミテーションなのか、見極めるためですね。失礼だわ」

「用心深いけど、こちらに知られた段階でアウトだよな。栞は本人だし、今回は問題ないんじゃない?」

「バートは、残留思念抽出サルベージ遠隔視オブザーバーの遮断ができて、ヒートシーカーを持ってきた。それは零の翔者しょうしゃを認識して対抗処置をしていることです」

「やはり危険人物だな。……でも、遮断ができることは零の翔者しょうしゃって可能性も出てくるんじゃ?」

「バートが保持者なら、私のところにアクセスするはず。でも来たのは忍君だけです」

「保持者の可能性が薄いなら、今までに零の翔者しょうしゃと出会ってた?」

「そうですね……でなければ、零翔者ぜろしょうしゃハンターかも」

「ハンター?」

「いえ、まだ断定はできないですが」


 零翔者ぜろしょうしゃ狩人がいる話になれば……狩られる側に入ってしまったことになり、少し緊張しだす。


「いるのか? そんなのが」

「異能者が増えれば、排除する対抗者が現れると判断してます」


 要の想定段階の話だと知って落ち着いた。


「排除するって?」

「もちろん社会を混乱させる脅威として保持者は消されるでしょう」

「えっ?」

「私の予想の未来図ですけど、ありえないことじゃないです」


 彼女は近い将来、殺人が多く起きると踏んでいるのだ。

 能力を保持しただけで、殺される未来なんて考えたくもない。


「それを防ぐためにも、今日の会談が足がかりになればと思っています。……公園に着きましたので、バートの監視をお願いします」


 そう言うと要は、俺から離れて見えなくなった。

 栞側が忙しくなったようだ。

 俺は引き続き谷崎さん目線で監視に戻ると、会長が上着を着て杖を突いて立っていた。

 これは公園に出向くようだ? 

 黒服の男が一人入ってきて、会長を付き添うように廊下に出て行った。

 そのあとを追うように、書類を持った女性と谷崎さんも病室から出ていく。

 ドアは閉めずに腕を組んで窓から外を眺めてるバートの姿を、谷崎さんは振り返って見ている。

 病室にバートだけ残るんじゃ監視ができなくなる。

 栞の教育訓練で覚えたやり方で、谷崎さん目線の映像を額辺りに小さくして、初期のフラメモの見方に変更した。

 これで移動しながら相手の様子を確認できるが、ターゲットが違う。

 展望デッキからラウンジに戻りエレベーターで降りて、当たりをつけていた七階病棟の北側の廊下へ移動する。

 人の通りがない廊下でバートとの鉢合わせは怖いので、早足で開いてるドアの中をチェックして回った。

 見つからない。

 部屋のドアを閉めたか? 

 一階上か? 

 そう思っていると一階に降りた会長と谷崎さんたちは、黒のBMWに乗り込んでいるが、そこにバートはいない。

 会談には出向かないのだと、少し安堵する。

 病室の中で移動して確認できなかったこともあり得るので、今度はゆっくり廊下を引き返してドアの中をのぞいて行く。


 ――いた。


 先ほどは見逃していたんだ。

 廊下の曲がり角に立って窓から外を眺めるように、部屋から出るのを監視する。

 だが、バートが出てきて廊下の反対側を歩き出したので、後姿を追うがエレベーターに乗り込んでしまった。

 閉まった扉の前で、階数表示がなく上に向かったことしかわからない。

 用がありそうな階はどこだ。

 もうすぐ会談が始まる、公園の様子を見るなら屋上。

 300か400メートル先だ。

 三十倍位の望遠のデジタルビデオカメラがあれば、動画が取れる。

 そう思ったらエレベーターのボタンを押していた。






 先ほどの展望ラウンジへ戻ったところで、人はいなくなっていた。

 そのまま展望デッキに出ると、金網の外の給水タンクの奥で金髪巨漢の影を見る。


「忍君」


 後ろから声がして、振り返るとラウンジから要が駆け寄ってきた。


「今ね。高田さんからバートの情報の連絡が来てわかったの!」

「情報?」


 人影を方向を気にしながら、要に対峙する。


「専門家に調査してもらってたんだけど、トラブルコントラクターを送り出した会社が実態のない架空の会社で、バート・アフレックも存在しないから偽名だろうって」

「それ、本当なら何者よ? マジ怪しくね?」

「偽っているのは、主に谷崎会長たちをあざむく為だと思う。近づいて情報を得る、または犯罪行為を行うためにですね」


 要は低くつぶやいた。


「バートの目的は、谷崎製薬の運営に支障をきた原因と排除だったけど、これも偽りかな?」

「あるいは。谷崎製薬内部の内偵が目的なら、私たちは監視するだけです。けれど目的が利害の一致なら、偽って潜り込んだことになリます。やはり警戒しないといけません」

「目的はやはり……零の翔者しょうしゃを見つけて排除」

「昨日の段階で、わたしのことは谷崎先輩から情報を得て知ったと思います」


 自分が関係してたことで、相手に栞の正体が知れたことを今さら悔やんだ。


「ごめん。俺がリークしたことになるな。浅はかだった」

「いいえ。忍君は意図的に流してないじゃないですか。私も甘かったですし、谷崎先輩も残留思念抽出サルベージを使えるからいつかは露見することです」


 俺をかばう要は、天使に見える。


「……あっ、それなら谷崎さんもやばいんじゃ?」

「今は使われている状態だから、たぶん大丈夫でしょう」

「そっか……バートは何か仕掛けてくるだろうか?」

「どうでしょう。そのバートは今どこです?」

「探していたところなんだ」


 俺は急いで網戸にしがみつき、先ほど見えた人影の場所をのぞくがわからない。


「あっ、ごめん。忍君。会長が来たわ」


 要の声が後ろから聞こえたが、生返事をしてバートを見つけるべく動き回る。

 遠隔視オブザーバーで小さくした谷崎さん目線の映像は健在で、のぞくと車から降りているところだ。

 バートは何か仕掛けるつもりだったら、早く見つけて情報の共有を要としなければ。

 巨漢を見た網戸の外は、給水タンクが並んで設置してある空間になっている。

 回ってみると網戸のドアがあり、手で開けられた。

 網戸の外に出て、給水タンクを静かに回ってバートを探す。

 展望デッキから外れた、いくつかの給水タンクの間に隠れて視界を見下ろしているバートを発見。

 何か持っているが、真後ろからだとよくわからない。

 やはりデーター収集でデジタルビデオカメラだろうか。






 中央公園では、二人の黒い服の男に引かれて会長が杖を突いて前に出ていた。

 その斜め後ろで、谷崎さんが立って周りを見ている。

 3メートルほど向かいに車椅子に座り、髪を下ろして束ねている栞を道場主が押して来ていた。

 斜め後ろに高田さんがいて、背後には乗ってきたワゴンがあり運転席に竹宮女医がいる。

 谷崎さんはヒートシーカーを持って、体を左右に移動させて栞と道場主をタブらないように操作している。

 ヒートシーカーは光や音が鳴りっぱなしで、操作に苦労しているようだ。


『バート、人数分光ってるわ……』


 無線マイクに向けた小さな声が聞こえてきた。

 連絡を取り合って、会談の内容も盗聴するつもりだ。


「こんにちは、谷崎会長」


 栞と道場主が続けて挨拶をする。


「うむ。二人とも今日で会うのは二度目かな」

「二度目でしたか?」


 と栞が答えた。


「よく当たる拝み屋がいて、孫だと知らずに会ったことがある。企業の一年先の株価を教えてもらったんだが」

「いえ、四度目ですよ。警告と罰でお邪魔してますから」

「何の話だ?」


 会長が杖を横に突き直す。


「なぜ中止しないんですか?」

「……やはり、あの催眠劇か? かかわっているなど嘆かわしい」

「孫として、改めてIIM2の一般販売の停止をお願いします」

「ふん。異能保持者が出るとか、そんな馬鹿げた話を受け入れられるか! そもそも竹宮とか言う偽医師の思想は危険なんだ。離れるといい。そのための資金援助なら提供する用意はある」

「竹宮女医は本当のことを言っているだけです。IIM2で谷崎製薬は将来に禍根を残すことになりますよ」


 栞は抗議するように言った。


「洗脳されているな。死んだ両親が嘆くぞ」

「……IIMの話ではないのですか?」


 叔父の道場主が口をはさんだ。


「そうだったな。わしの息子の……勝は行き違いがあって疎遠になってしまったのだが、研究は千金に値する業績だ。その発案者としてほめておこう。IIMの試作品は完璧だった。そこでIIM2で補完が必要でな。もっと実用性というか、効力を挙げるために試作品のIIMが知りたいのだ。重要な部分がわからないままになっているからな」

「それは経済的価値を持つ情報になりませんか?」


 道場主が続けて聞いた。


「んっ……いや、そんなことはない。ただ技術 秘密シークレットにあたる資料が紛失しているのだ。その存在かあるいは情報を知ってないか聞いておきたくてな」

「両親の事故のあと、実家は放火で焼失しました。父が持ち込んだ研究の開発資料は灰になってます」


 栞が冷たく言い放った。


「それは知っている。だが、お前はIIM2を反対している。それは技術の中核にあたる秘密を握っているからだろう?」

「その情報を知っていたとして、引き換えに一般販売の停止を約束してもらいますか?」

「動き出しているプロジェクトに待ったはない。だが情報の提供でIIM2の修正が可能になるだろう」

「そんなことありえません。廃止です」

「廃止はない。わしやお前の意見で止めれるほど小さな事業ではないぞ」

「バイアウト・ファンドの顔色でもうかがっているのですか?」


 栞は車椅子のハンドリムを前に動かし言った。


「何千もの家族の生活がかかっている。その重みなど知らんだろう」


 会長は杖を両手で持ち、大仰に話す。


「私たちの未来がかかっています」

「お前のやっている小さな町教団には興味はない」


 会長の言葉に呆れて顔を背ける栞。


「ふん……技術供与は無理ということか」

「技術の開示は、世の中を混乱させるだけです」

「世迷言を……話せるのは今のうちだぞ」


 会長は業を煮やしたように言った。


「……バートですか? ですが会長はだまされてます。内偵者かもしれませんよ」

「何?」

「バートは架空会社の架空人物です」


 そこで栞たちの右側で地面の弾ける音が三発連続で聞こえ、道場主が驚き車椅子のハンドグリップを放す。

 駆けよった高田さんが車椅子を引っ張り、ワゴンまで下がらせながら叫ぶ。


「狙撃だ。病院方向からだ」


 栞は車椅子の上でぐったりして、胸は鮮血で染まっていた。

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