第2章 旅人

「えっ?なになに?」

 母の言葉に、動揺を隠しきれないラナは、身を乗り出して聞いた。

「なんでも、旅人っていう職業ができたって。」

「旅人?」

「そうそう。まあ、詳しくは、知らないからギルドにでも行って、聞いてらっしゃい。」

「ふーん。」

 ラナは、聞いて、胸が膨らんだ。今まで、この国から出たことがなかった。この国を飛び出せるのなら、何が何でもその職業につきたい。

「じゃ、ギルドに行ってくる!」

 ラナは、家を飛び出した。

「気を付けてね!」

 後ろから母の声が聞こえるが、気にしなかった。ギルドは、ラナの家から10分ほど歩いたところにある、職業決めの場所だ。

「こんにちは~」

ギルドは、初めてのラナは恐る恐る入ってみた。

「こんにちは!ギルドにようこそ!」

元気よく答えてくれたのは、20代半ばの女性だった。ラナはその女性の前に立った。

「どの職業になりますか?」

そういって渡されたのは、現在ある職業の紹介文だった。

「あ、あの、新しい職業があるって聞いたんですけど。」

「ああ!旅人ですね!」

「その、旅人って何をするのですか?」

「旅人は、主にファンスにある国と村を回り、各地の人々や文化を知り、交流を深める仕事です。」

ラナは目を輝かせた。自分がこの国を飛び出せる。

「や、やりたいです!」

「はい!あなたが1人です。よろしくお願いしますね。では、この書類に書き込んでください。」

差し出された書類には、旅人になりましたという確認と、署名欄があった。

「これで、いいですか?」

「はい。ラナさんですね。では、仕事は明日伝えますので、またギルドに来てください。」

「はい!」

ラナは、うきうきした気分で家に帰った。

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