履歴書・願書の空白
同じ様な学力同じ様な生活態度
その2つを分かつものは部活動だ!!!!
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なんで私この教室なんだろ。
随分前から自問自答しているが、それは自分の中だけであって結局どう考えても不当だと思ってしまう。したがって、このクラス分けにした奴らをかなり恨む。
いや、違うな、もう少し厳密にいうなら、
なんでこの担任なんだよ。
と、先程から黒板の目の前で力説をしている新しい担任を見上げた。
なんていうんだろうね、眼鏡のレンズが光を乱反射して、正直言って担任の目が見えないんだよ。これでも一応人の目を見て話を聞く様に育てられてきた。
あの両親の教育方針と言ってはかなり聞こえがいいが、ぶっちゃけそうしないとあとが怖いのだ。
まあ、何がひどいかっていうのは今は割愛させて頂くが、とにかく、色々あって小学校で割り算を習うあたりにはもう、相手の目や口や手の動きなどの所作から大体の心理状態の予想をするようにし始めていた。
大体人は顔にでる。
どこにでるかは人それぞれだが、私は目と所作に重きを入れている。
だから担任がどういう心境でどういう人間なのか予想したくても、光を乱反射する眼鏡のせいで全く予測不能。むしろ何処で売ってるんだよその眼鏡!!よく買い手がつきましたね!良かったですね!ああ、この教師だから買ったんですね!無関係な筈の眼鏡屋に対してもキレそうになる。
ましてや所作なんて、チョーク握りしめ机をバンバンと叩くこの担任には無意味。
しいていうなら、
今!俺が超大事なこと言ってるから!!
俺はこんなに考えているんだ!
俺が正しい!!!お前らは俺が担任で本当に良かったな!!学年1..いや、学校1いいクラスになる!!
と言った誰が見ても予想のつく事で、
もう半分自棄になりかけている。
あー、まじなんなんだろこの高校。
バンバンと机を叩くのと比例して自棄になっていく私の心。
何こんなに力説してるの、
新野だったら「高校の部活動ー?!やっといた方がまあ、有利だろうけど、白澤は必死こいてやるとか好きじゃないだろ?やるならやるでその時はやるんだろうけど、白澤はみんなが思ってる様なやつじゃないからなあ。今所属してるバスケ部だってアレ、お前適当に目立たずやってるから顧問の先生気付かないだけで実際はセンスかなりあると思うんだけどなー。
まあ、話が脱線したけど、結局それは白澤がやりたいならやればいいと思うし、何かあれば話は聞くけど、白澤とその周り次第でだいぶ変わると思うよ。特に部活なんて。」
とか言ってきそうだ。
現に部活動について、初めて新野が担任になった中学ニ年の頃から言われていた。新野は学生時代アメリカに住んで居たことがあるらしく、その当時はよく仲間内でバスケをしていたらしい。クラブとして活動はしていなかったから顧問にならなかっただけで、実際当時のバスケ顧問よりはるかにバスケに詳しく異常にフリースローが上手かった。新野曰く周りと比べると体格が劣っていたから体格差で勝てるのは唯一フリースローだったらしい。
アメリカでは至る所にバスケが出来る施設があり自由に使えるそうだ。まあ、うん、くそ、ちょっとだけ新野が羨ましかった。
中学時代、バスケ部は程々に目立たず楽しくやってたし、先輩との関係も京君が居たしでそれなりに良好。ただ、何というか、部活をやる事に抵抗があるというか、好きな事を部活としてやるのは正直、苦手だと思った。
もう関わりたくないというか。だから、新野の環境が羨ましかった。
部活ってさ、疲れるじゃない。いろいろさ。
中学は部活強制参加型だったからさ。
高校ではいいかなって思ってたんだよね。
生活態度や部活でも目立たずに何かと平々凡々な事をしていたのに、新野にはそういう所を結構見透かされていたと思う。
新野は私と親友のみゃーちゃんが違う高校に行くことになった時も
「それぞれ進む道は違うから高校も違うのはわかるけど、七瀬も白澤も高校は違くてもずっと友達なんだろうなとは俺は思うよ。
ただ、白澤が心配だけどねー。」
と新野担当教科である科学の授業が終わった時、1人だけ残る様に言われ理科準備室に通されて上記のことを言われた。
「だいじょーぶー、
みゃーちゃんとはずっと友達だし、年取っても一緒。お茶飲みながらぽくぽくするんだもんー。
というか、なにそれ、せんせーに心配される程とか、これでも一応子供っぽくはないと思うんだけどなぁ。」
「そーいうとこが、心配なのー。
高校でわかってくれる奴がいると良いけど、
だってお前勉強出来る七瀬と違って勉強やらないお馬鹿な癖に器用貧乏というか...。
本当は出来る癖に目立ちたくないってだけでやらないし。なのに異常な程の器用貧乏。
まあ、俺も七瀬もお前のそんなへんちくりんなところが好きだしさー。
お前とよく
知ってるー?クラスのみんなになんて言われてるか。」
「...せんせーが生徒にお前とか言っちゃーダメなんですよー。
...しかも馬鹿とかー。ひどいですねー。
クラスのみんなになんて言われてるかなんて興味ない...あ、違うか、そんな事聞かされたらガラスのハートの女の子なんだから泣いちゃいますよー。」
「ははw
今更そんなお利口ぶってもせんせーには通用しませんw
お前もご存知の通りこのクラスの中にさ、3つのグループあるでしょ?
各クラスとの派閥争い真っ只中の女子グループと、ツンツンしだした可愛い思春期男子グループ、そして何故かお前達の3つのグループが出来てるの。
しかもお前達のグループって思春期には珍しい男女ごちゃ混ぜのグループで。女子は七瀬とお前の2人、男子は6人。男子は変人に磨きが掛かってる天才秀才野郎が集まっててさー。
お前達のグループって男子女子共に異常に成績優秀な奴らが集まってるのにお前だけお馬鹿さんで、他の先生達が結構びびってるよー。あのグループはなんだ?!ってwまあ大体白澤兄の妹ですって言えば納得されるんだけどねw
普通そんな状況じゃ、女子からは男子に媚び売ってるー!!!って言われたり、男子からはあいつらウゼエ。って言われるだろうに、お前達そんな経験1個もないだろ?」
京くん...貴方は教師の間でも有名人なんですね..と若干引いたが、それはさておき、
...まあ、確かにないですね。
今までの事を思い返してみる。
自分の陰口とか聞いた事ないしなー。というかむしろ陰で言うから陰口な訳で聞いているはずもないんだけどね。
まあ、嫌味とか言われた事ないし、むしろその逆で良くしてもらってる気がするけど...。
「お前って嘘つけないし、頼られたらやっちゃうし、誰でもなんだかんだ
それに、お前ってただ目立ちたくないだけで、みんなお前と話しててお前の負の要素が見えてこないんだよ。
誰でも同じ様に話すから、話しているとすごく安心するんだよ。
それが、お前の良い所。
七瀬の良い所はもちろんお前が1番よく知ってるんだろうけどな。」
優しさが違うって言われてもわかんないよ..。ってなに?!みゃーちゃんの良い所?!
「みゃーちゃんは全てがいい所。
存在がもはや神。
みゃーちゃん大好き。みゃーちゃんのパパとママが大好き。弟達も可愛くて優しくて大好き。みゃーちゃんを産んでくれたパパママには本当に感謝してる。
みゃーちゃん大好き。愛してる。
みゃーちゃんの花嫁姿は絶対妖精さん。
そんな姿見たら泣いちゃう。
みゃーちゃんと結婚する人は絶対いい人。でも、ヤキモチ妬いちゃうかもしれない..みゃーちゃんが大好きだから幸せになってほしいのに、でもきっといい人だから、すごく幸せになるとおもう。
みゃーちゃん好きすぎてつらい。好きなのに、好きって言葉でしか気持ちを表現できないのが辛い。
みゃーちゃ...「はいそこまでー。そして泣きそうにならないのー。七瀬はまだ中学生で結婚とかしてないからねー。ほんっとうに白澤は七瀬が好きだなー。」
......みゃーちゃん愛が暴走した。
いかん、
気をつけねば。
「まあ、そんな七瀬と白澤について男子達グループの奴らがそれぞれ俺にきいてきたんだぜ。
あのグループの中で七瀬と白澤は誰と付き合ってるの?ってww
さすがに俺もビックリしたけど、
お前達見てると全然そんな感じないしなー。
まあ、誰に聞かれたなんて言わないけどさ、
おモテになる事でせんせーはうれしーぞー。」
「......。」
「 おーい、黙らないのー。お前が目立ちたくないのはわかるけど、お前達の良い所が良い意味で、お前達を目立たせてるんだよー。
でもな、そういうお前の良い所がお前にとって苦しくなる時があるかもしれないんだよな。目立ちたくない優しいお前は、その優しさに付け込まれるかもしれないことを頭の片隅にでもちゃんと覚えておいてほしい。
これは俺から言わないとって思ってさ。
それなのにお前ってば個人面談で高校どこ行くのかって言う話し合いでも【付属大学ある所どこー?】って言うから、いろいろ資料出したのに1番上の高校指差して【ここにするー】って絶対資料が1番上にあったからって理由だけで選んで、その後も高校見学行ってないし、
そもそもお前が行く予定の高校って荒れてるしなあ、それでもお前ってば、【まあ、付属大学あるなら良いやー。】って言うもん、
適当すぎる癖に、嘘をつかないんじゃなくて、嘘をつけない純粋かつ器用貧乏な生徒を持った心優しーせんせーは心配なわけですよー。」
と笑っていた。
窓から差し込む夕陽が逆光になって、先生の顔はよく見えなかったけど、困ったように笑っていたように見えた。
なんかめちゃめちゃに言われているけど、
「.....ほんとーはちゃんとしてるのに学校ではちゃらけて抜けてる様に見せてる新野せんせーも、一緒にお茶しても..良いかなって思ってるよ。」
「おい、俺は抜けててちょうど良いんだぞwwしかもそこは是非参加して下さいませ!だろーがw」
なんだか見透かされてるような、それでも温かく見守って心配してくれるのがとてもくすぐったくて思わず笑ってしまった。
まあ、心配してくれてるのはありがたいんだけど、ぶっちゃけ新野が気を利かせて準備室の鍵を閉めて話して居たせいで、なぜかコソコソ残って様子を伺ってる奴らが後々騒いでたのは正直めんどくさかったよ。その辺は素で抜けてる新野だったな。
と、1人だけ長々と回想に浸っていると、
バンバン!!!!!
という音で現実に引き戻される。
うるっさ!!
先程よりも大きい音にイラつきながら音のなる方を見ると、黒板にいる担任が教卓をバンバン叩きながら、「履歴書や願書の空白を埋めるために部活動に参加する!!!それが唯一勉強等で同じ様なレベルのやつを分かつ方法だ!!」
と叫びだした。
あーこれさ、嫌な予感しかしない。
絶対全員部活強制参加とかi..
「このクラスのやつはよっぽどの理由がない限りほぼ全員部活動強制参加だっ!!!!!!!!!!」
ほーら、ね..
めんどくさいことになった。
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ここで部活動強制参加に抗う術は
家庭の事情
怪我や病気
しかないだろうねぇ、
ただでさえ私立で運動部もやたらめったら充実してそうなのに、広い校舎使い放題と考えると運動部だけではなく文化部もかなりありそうだ。
あ、そうだ!コンピュータ部とか幽霊部員いけるんじゃないか?!
と閃いた瞬間、
「ちなみに、コンピュータ部等は商業科がほとんどで、資格取得者数を増やすため日々の部活に力をかなり入れている。」
と生徒たちを見すかすような担任の言葉。
思わず舌打ちが出そうになる。
もうやだよう。この学校、
新野。まじごめんね、荒れてるなら関わらなければ良いって思ってたけど、違う意味で向こうから関わってきた。
適当に過ごしてたツケがまわってきたのか、
とにかく無難に関わらずに
少しだけしょんぼりして、ぐしょくしょとめげていると追い討ちをかけるように、
「今日から部活見学が行われる!!確実にどこかの部活を見学すること!!そして明日朝に用紙を配るのでどこの部活見学に行ったか、行く予定なのか記入した後に回収するぞ!!
それを部活見学1週間の期間毎日続け、最終日に部活決定して提出するように!」
そういって じゃあ解散!!と付け加えるように言い放った担任はそのまま教室から去っていった。
もうやだ..
1人うなだれ脱力していると目の前の子が振り返って話しかけてきた。
「部活どうする?」
「んー、まだかなぁ。
どこか決まってるのー?」
「部活の推薦で入学してるからもう決まってるの。」
「まじかよ、すごいね、何部?」
「吹奏楽部だよ!
楽器はクラリネットなの!ほら♪」
と嬉しそうに楽器ケースを見せてくれた。
眩しい。
眩しいです。
と少し目を細める。
「あ、私は
「私の名前は白澤 奏っていうんだー。
呼び捨てで良いよ〜。私はあーちゃんって呼ぶー!
あーちゃんよろしくね♪」
すると少し驚いたように笑ったあーちゃん。
「かなでってよぶー!!!
あーちゃんとか今まで呼ばれたこと無いから新鮮!!すごく嬉しい♪よろしくね!
..ところで、かなで、
今日からお昼一緒に食べない?」
もじもじと恥ずかしそうに笑ったあーちゃん。
可愛い..愛でたい。
「もちろん良いよ〜!!私も嬉しい!
よろしくね♪」
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あずさちゃんっていうらしいですお母様。
なんて思っていると、ふと閃いた。
あーちゃんに担任の名前を教えてもらう事にしよう!
「えっ、、
かなで聞いてなかったの?!ww
あんなにうるさかったのに、ある意味凄いよ!(笑)
ってかマジで聞いてなかったの?!」
平井誠..ね。
「うん、なんか意識飛んでたww
あーちゃんありがとー」
そう言って笑ったらあーちゃんが呆れたように笑った。
「そういや、かなでってば初日でも意識飛んでたよね(笑)
スズメ可愛いなって、マジで不思議ちゃんかと思ったよww」
あー...
「ごめんごめん(笑)」
「かなでは部活動するの?」
「まだ決めてないんだー。
というかやる気もないというか、面倒だなあって。」
「確かにwwやる気なかったら苦痛だし楽しめないしね、私はクラリネット好きだから部活すっごい楽しみだけど、あの担任だと、ちょっとねー、、」
と言葉を濁すあーちゃん。
うん。すっごいわかる。
そうなんだよ。と賛同の意を込め頷く。
「とりあえず、文化部から攻めていったら?
一緒の部活だと私すごく嬉しいけど、この学校吹奏楽部は全国レベルだし、大変かもしれないんだよねぇ、部活色々まわってそれでやりたいところがあれば良いしね♪」
あーちゃんが天使に見える。
「うん、そうする!
あーちゃんありがと!」
と微笑むと嬉しそうに笑うあーちゃん。
すごく良い子と友達になれた。
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あの後放課後になりいよいよ部活見学の時間となった。
あーちゃんとクラスで別れ、いざ、出陣と行きたいところだが、いかんせん何部があるのか..
むむむー...と廊下で考えていると後ろから声が掛かった。
「ねえ...っ..!!!」
「....わたし?」
振り向いて見ると、ロングヘアーのまだあどけなさが残る女の子だった。
誰?
「...どこか、見学する部活とか、入る部活とか、ある?」
と下を向いて言われた。
「..あ、..えっと、
ま、まだ...です...。。」
なんかものすっごい固まっていてこっちにも緊張が移りそうな感じだ。
「あ!ごめん、違くて、あのね、もし良かったら一緒に見学行かない?!」
!!!!
そっか、そういうのもあるよね!
部活見学って1人で周るもんだとおもってたわ。
「あ、うん、いいですよ〜。」
その声に反応して下を向いていた顔が勢いよく上がり目が合った。
「っほんと?!
あ!てか敬語とか無くていいよ!タメだし!
私、
同じクラスだよ!」
まじかよ気付かなかった。
「蜜柑ちゃんっていうんだー!
可愛いな〜。私蜜柑が果物の中で1番好き。
私は白澤 .. 「かなでちゃんでしょ!!!」
「あ、ハイ。そうです。」
「入学式の時からずっとずっと話し掛けたくて、でも席離れてたし、お昼も近くまで行ったんだけど、違う子と話してたから声掛けづらくて..よかった!!話せた!!!」
ニコニコニコニコ笑って、本当に元気な子だなあ。
「そう思ってくれて嬉しい。
ありがとうね蜜柑ちゃん。」
くすぐったくて思わず笑うと、
「蜜柑でいいよ〜♪」とニコニコしている。
「じゃあ、私も奏で良いよ〜♪」
「いや、かなでちゃんはかなでちゃん!!」
と真顔で言われた。
あ、さいですか。
元気いっぱいでこだわりある可愛い子やなぁ。(笑)
ところで、
「蜜柑、どの部活見学行きたいの?」
「んーとねー、とりあえず合唱部かな」
「合唱部?」
「ん、そうだよ〜。うちの中学、合唱強かったんだけど、高校でも出来たらなあって。とりあえず見学ー!!」
「なるほど。」
そうして音楽室へと向かった。
合唱かあ。
中学の合唱祭しかやったこと無いけど、まあ、あれよねクラスの女子の派閥が怖かったことと、クラス対抗故に、各クラスの女子が怖かったわ。
新野ですら黙秘して静観してたわ。
まあ、部活ならそんなに怖い事もなかろうか。
とぼへーっと考えていた。
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当時はどんなに苦しく思っていても、今はあの高校を選んだことは後悔はしていない。
ただ知って、学んだだけ。
あの時、たくさんある選択肢を1つ1つ選んで今の私に至る。
ただ、あの選択1つでも違っていたら、自分は此処にはいなかったと言うことだけ。
ちゃんと自分は選んで歩いてきたから、今こうして生きている。
ただ、それだけのこと。
橙 秋之 @115to795
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