普通科1年6組
「16番 白澤 奏 」
「はい。」
シロサワ カナデ それが私の名前。
「一年間よろしくお願い致します」
今は自己紹介も兼ねてのHR。
後ろの席ではわが子の姿を見守る保護者が立ち、どこか気取ってるような印象の眼鏡の男が目の前の教卓で堂々と出席番号と名前を読み上げている。
っていうか、もうすでにやる気ないんですけど。
そもそもあんな入学式しちゃう高校なんて絶対やばいって。
もう3年どころか1年だって居たくない。
あー。無理無理。
どうしようかな。なるだけすっと終わらないかな 飛び級とかあれば本気でやりたい。冗談でも無く、本気でだ。
正直もう【夢】とか ないし。
なんなら 入学式早々【早く卒業したい】 と思っている時点でもうお察しだ。
どうにもならない以上は、馬鹿高い学費を払ってる両親の為にも通い続けなければばならない。
ま、なるべく目立たず、ひっそりとすごそう。
そんなことをおもって もう諦めたかのように外を見る。
あ。そっか。この教室って二階なんだ。
ちょうど目線の高さに桜の木が。
へえ、これは、いいなあ...
でも、
うわあ...入学式なのに 桜全部散ってる.....
さっきの代表挨拶でなんか、桜がーとか、春の訪れがー。みたいなこと言ってた気がするけど、もう散ってますやん...。
うわ、
なんか、私の心境といっしょだ..
なんて半目で桜の木を眺めていると、スズメが飛んできて、ちょうど桜の木の枝に留まった。実や枝をついばんではチョンチョンと動き回る。
ツンツン...チョンチョン... ツンツン....ツン...
うん。
かわいい。
とりあえず 一年がんばるか。
どこか、まあいっか。という気持ちになっていると いつの間にかHRが終了した。
あ、やべ。聞いてなかった。
というか担任の名前聞いてない。
眼鏡の 男..... まあいい。今後わかるだろう。
とりあえず情報があればいいんだ。
両親達には、【眼鏡の男】とでも言っておけばいい。
名前よりも 【どんな人??】 って絶対聞くはずだし...。
うん。そうしよう。
周りががやがやしだして、ああ、そっか みんな友達作り出すよなあ。なんておもっていると、前の席の子が急に振り向いて話しかけてきた。
「何見てるの?」
「んー。スズメがかわいいなあって。」
とたん固まる前の子。
あ。しまったかも。
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彼女はのちにこう続けた。
「奏、まっじで天然チャンかとおもったよー」
「うん。私もあの時はちょっとね....」
「なになになにーーー??」
いや、今後の事で絶望してたなんて言えないよ。
とりあえず、なんかやばい子認定されました。
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