橙
秋之
入学式
あたたかな春の光に誘われて桜のつぼみも膨らみ始めた今日のよき日。
大きな希望を胸に抱いて、私たちはこの
目の前で新入生代表が挨拶をする中、まだ固い生地の制服のスカートから出る足を冷気から守るように組み替える。
あ。
やっぱ あれって お母さん来たがってたのかな。
そんなことを思ってふと振り返る。
新入生だろう子たちの顔のあいだから見える大人たち。
意外と保護者来てるんだ...。
入学が決まってから母親は入学式本当に行かなくてだいじょうぶ?と今朝まで残念がっていたことを思い出す。
今朝まで粘って粘って行こうか?という母に対し、だいじょうぶだよ。高校生になったんだし。と母親をおいてきた。
まあ。過保護なんだよなあ。
認めたくはないらしいけど。
小さいときからそうだ。 目立つことが嫌いな私と目立つことが大好きな母。
入学式なんて来たらきっと気合い入れるに違いない。
それはそれは 新入生がかすむほど。とまではいかないだろうが、周りの保護者が圧巻するほど小綺麗に着飾るだろう。それが似合わないと滑稽なんだろうが、むしろ顔立ちがなぜか異常に綺麗なため、似合ってしまうのだ。どれ程異常かというと、母親の実家の田舎ではちょっとした有名人で、知らない人はほとんどいない。幼い頃から顔立ちがハーフ寄りだったらしい。純日本人の割に鼻が高く、三角定規をひっくり返したような
その美貌は現在もさらに拍車が掛かっているが..
もし入学式に来たとしたら、
誰のお母さん??
どこのお母さんかしら?となるのは明白。
それに加え うちの娘をよろしくから始まるマシンガントーク うちのこはぁ~というアレだ
まあ、内容は全部けなされてる内容だと知っているから余計脱力。
「お母さん、また うちの子はぁ~.....って私の事けなしたでしょー。」
「本当のことじゃないの」
あー、はい。そーですね。
そうなのだ。本当の事だから質が悪い。
と少し溜息を吐く。
過保護で 人一倍きれいなお母さんは 少し面倒。
なんてことを考えて目の前の壇上にいる恰幅のいい大人を見ていた。
ああ、新入生代表挨拶終わったんか。 今の人は校長かな...? と思っていると 急にマイクを持ち机の前まで出ると
「歌います」
と一言。
は?
学園歌。アカペラ。
しかもうまくない...
お母さん、やっぱり連れてこればよかったなあ。
こんなの絶対笑いだすに決まってる。
あの人なら絶対笑いだす。
いや、私もわらいたいよ.
いや、普段なら絶対笑うよ。わらって転げまわるよ。
でも、これが私の通う高校。
ねえ、おかあさん。
とんでもない高校に入学したみたいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます