貴弘との約束

 午後四時になって、バイトを終えた私達は、着替えを済ませて店外に出た。



「この後、時間ある? まだ瑞貴に、イチゴシェークご馳走になってなかったこと、思い出しちゃった」


 店の前に出たところで、麻衣が私に言った。


「ごめん。今日この後、貴弘の家に行くことになってるんだ」


「そっか、それじゃあ仕方ないよね。残念だけど、イチゴシェークは、また今度の楽しみにとっておくとするか。でも瑞貴。貴弘と昔みたいな関係に戻れて、ほんと良かったね」


「うん」


「それにしても、羨ましいなあ。彼氏の部屋で二人きりなんて。あーあ、私も、命がけで私を助けてくれるような、素敵でカッコイイ男の人と巡り合えないかなー」


 麻衣が、身体を伸ばしながら、誰にともなくねだるように。


「麻衣には、正樹がいるじゃない」


「まさきぃ? あんなのダメダメだよ。普段はかっこつけてるけど、いざって時は、てんで頼りにならないんだから」


 麻衣は凄く不満そうに零すと、


「さてと、そういうことなら、私は、街でぶらっとして帰るから。バイト代まだ貰えてないから、ウインドウショッピングしかできないけどね」


「バイト代入ったら、一緒に買い物しようね」


「そうだね。それじゃあ、よろしくやりなよ」



 励まされながら、私は麻衣と別れて、貴弘の家に向かった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る