Mission3 2nd part 榊田清盛と反逆の狼煙
1
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俺は思いがけず、全くもって気の合わない女と誠に遺憾ながらも同盟関係を結ぶこととなってしまったのだ。
いや、ほんとにだよ? たぶんまっしろさんからしたら、俺がノリノリで「俺と組んであいつをぶっ潰そうぜ!」とかいう漫画的展開を持ち掛けてきたのだと考えているだろうが、実際の所はそんなことはない。
「……で、どうなの。ちゃんと送ったの」
俺の目の前にいるのは、やけに大人びた印象を持つ小学生。いや、もしかしたら見た目は子供だけど頭脳は大人な名探偵的な何かなのかもしれない。
ともかく、少女は自身を「
俺は、見ず知らずの高校生たちと謎を解きながら(大体口論をしてる気もするが)、同時に、この小学生の
「送りましたよ、頼みたくもないことを頼んで」
当初はこの謎解きに参加するつもりなんて毛頭なかったのに、この少女の鶴の一声に参加が決定。というのも、自分が「アスタリスク」に誘拐されており、俺が言うことを聞かなければ誘拐の犯人を俺に仕立て上げると言うのだ。
それからほぼ毎日のように源は俺の帰り道に現れた。嫌すぎたので、帰り道を変えてみたこともあったが、何故か無駄だった。いつも俺の前に現れ、
「逃げても無駄。あんまり余計なことしたら、分かってるよね」
という脅しをかけてくるのだ。この音声を録音したら、俺、出るとこに出られても勝てるんじゃないだろうか。
仏の心を持つ俺は、そんな非道なこともせずにただただ源の言うことに従属していた。そもそも謎解きなんて面倒なことをする気なんてなかった俺は、「Sei」と「ましろ」の会話にも積極的に参加することもなかった。
そしたらある日、「ましろ」が俺のことを方言全開で
とかなんとかしてるうちに、俺が参加して最初の謎は、「Sei」が勝手に解いてしまっていた。
それを見た俺は、「Sei」の行動を批判した。面倒事には首を突っ込まないのが俺のポリシーだが、何故かその「Sei」の行動だけは引っかかってしまったのだった。
まあ、絶対に会うことがないっていうのが分かっているからこそ、後の関係など気にせずに言えた、という面もあるのだが。ホント、顔を突き合わさなくていいって楽だわ。
俺が「Sei」を非難した後、すなわち昨日の放課後。この日も源は俺の前に現れて言った。
「さ、今日はどんな感じになってるのか、報告しなさい」
そう言って、手を差し出す。要するに、俺にスマホを差し出せと言っているのだが。
俺は大人しくスマホを差し出す。そして、源は俺のメッセージアプリから三人のグループのトーク画面を開いた。
いつもなら画面を見て、「0点」とか余計な採点をしてくるのだが(ちなみに0点以外だったことはない)、今日はじっくりと画面を見たかと思うと、「へー」と一言だけ発する。
「何だよ」
「いや、ちゃんと自分の意見を言ってるから。偉い偉い」
「……お前、何様だよ」
「少なくとも清盛よりは立場が上だと思うけど」
言葉に詰まる。全力で間違ってないから困る。
「いいだろ、ムカついたんだから」
「でもこれからどうするの」
「何を」
「いや、謎解きだよ。一人ひとりでやるの」
「どうでもいい」
本当にどうでもいいことだった。その後の流れで「ましろ」が「Sei」の提案を承諾してしまったため、今さら俺にそれを覆すことなどできないし、する気も起きない。
このまま適当にやってくれればそれでいいとすら思い始めていた。
だが、この少女はそれを許さない。
「どうでもいいとは言わせないから」
「いや、本当にどうでもいいんだけど……」
「ともかく、私の言う通りにしなさい」
そして源から出された指示は、「ましろと同盟関係を結ぶ」ということだった。俺はそれに抗うこともできず、夜になってからそれを「ましろ」に伝えたのだ。
案外乗り気だったまっしろさんはチョロかった。速攻で乗ってくれたので手間が省けた。まあ話の最初にちょっと屈辱的な一文を送ってしまったが。
そして話は巻戻り、今現在の話となる。
翌日、すなわち今日の放課後に現れた源は、俺にうまくいったのかと問うたのだ。
「ふーん、ちゃんと指示を守ったのは偉いけど……」
源は俺のスマホを眺めながら言う。
「それからまともに会話してないよね」
そう。とりあえず同盟関係を結んで安心した俺は、さっさと話を切り上げようとしたのだ。それがまっしろさんのカンに触ってしまったらしい。
『はぁ? せっかくやる気になったんだから今からやればいいじゃん!』
『いや、今日は疲れて』
『時間がないのは分かってるでしょ!?』
『そりゃそうだけど、面倒で』
『面倒!? アンタが持ちかけてきた話でしょうが! 乗ってあげてるのは私なんだから、面倒はないでしょ!』
そりゃそうかもしれないけど、一番乗り気じゃないのは俺なんだよ……。
という流れで、結局いつもの言い争いから、最後はまっしろさんの『もう寝る』の一言で終戦を迎えたのであった。
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