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『榊田清盛:話があるんだが』
そしてそんな今時のJKの会話をぶった切って割り込んでくるのは、例のキモオ……ではなく「清盛」である。
真珠とのやり取りもあったが、一切動きのなかった三人のグループにおいて一石が投じられたのだ。少し気にはなる。
真珠とのやり取りを切り上げた私は、「清盛」からのメッセージを見ようと、トーク中のグループ一覧の画面に戻す。
すると気付いたのは、「清盛」のメッセージは三人のグループの中でのものではなく、私個人にあてられたものだということだった。
え……、ナニコレ…………、思わず鳥肌が立った。
いや、これ気持ち悪い。何? 話って。怖いこわいコワイ。
スルーしようかとも思ったが、メッセージは続く。
『いや、違う。変な話じゃない。ちょっとさっきの「Sei」の話について話がしたかっただけだ。だからお願いだからスルーしないでくれ。いや、しないでください。お願いします』
…………この子、辛い思いをしてきたんだなぁ……。なんかちょっと可哀そうな気持ちになる。いつも気持ち悪がられてスルーされるから、予防線を張っておいたんだろうなぁ……。
『うん、分かった。あんたが可哀そうなぼっちであることは分かった。だから、遠慮せずに話してごらん』
思わずメッセージを返してしまった。いわゆる同情心というやつだろう。
『何で急に上から目線なんだよ』
『いいっていいって。本当は反応してもらって嬉しいんでしょ? 隠すことないんだよ、
『そのあだ名は歴史で平清盛が出てくるたびに一瞬だけ流行るんだよ。おそらく俺が最も輝いている時期だ』
『そうかい、平清盛に感謝しないとね』
『だな、少なくともあだ名がまっしろさんよりはマシだからな』
『やからまっしろちゃう!』
『はいはい、方言アピール入りますー』
流れもノリもいつも通りだ。まるで漫才の挨拶かのように、決まりきった流れを二人で繰り返してしまう。恐ろしいもんだ。
『で、話って何』
『ああ、さっきの話だけど、どう思った』
『どうって何? 相変わらず言葉足らずやな』
『まっしろさんは相変わらず頭が回りきってないですね。普通に考えて、「Sei」の提案についてでしょうが』
『うっさいわ、言わんと分からん』
『おーコワイ。中国地方の人間は気性が荒いのかな?』
『ちゃうわ! そもそもじいちゃんばあちゃんばっかりじゃし!』
送ってからしまったと思うが、後の祭り。
『って聞いたことある。友達から』
うん、これで誤魔化しただろう。たぶん、きっと。
『へー』
たった二文字の返事。続いて何か送られてくるかと思いきや、音沙汰はない。
『その二文字で堂々と話を繋ごうとするのおかしくない?』
『だって放っておいたら勝手に喋ってくれるし』
『話を振ったのはあんたでしょうが!』
『だからさっきから言ってるでしょ。何回も繰り返さないといけないのかな?』
本当に、勝手に自分の意図が相手に通じていると勘違いするのはやめてほしい。いちいち
だけど、言い返しても堂々巡りなのは目に見えているので、もう一度読み返して理解する。
『さっきの話でしょ』
『そう』
また二文字でコミュニケーションを取ろうとしやがって……。
『一応了承はしたけど、あれはあくまでも了承しただけで、納得はしてない。どう考えたってあいつは私たちのことを信用してないからああいうことを言ったんだと思ってる』
長い、長いよ。二文字に対して送る分量じゃないよ。
『よかった。まっしろさんでもそのくらいは理解できたか』
でさぁ、短文の癖に余計な事しか言わないのはどうかと思うんだけど?
言い返そうかと思うが、それを遮るように続きのメッセージが送られてくる。
『分かってるなら話は早い。二人でこの謎を解くぞ』
いや、全く話が繋がらないんだけど。
『何であんたと二人で』
『分かんないの?』
『分かるか』
『「Sei」はムカつくだろ?』
『あんたと同等程度には』
『で、同じ目に遭わせてやりたいと思うだろ?』
私の皮肉は無視して、物騒なメッセージが送られてくる。
『いや、あんまり』
『えー』
だから二文字はやめろって……。
『逆にどうしてそう思うの』
『目には目を歯には歯を、って言うだろ。ああいうやつは同じ目に遭わせてやらないと分かんないんだよ』
続いて、
『だから期日より先に謎を解いて、勝手に送ってしまう』
というメッセージ。
『あんた、性格悪い』
『最近よく言われる』
逆に今まではあまり言われなかったのか……。
『だけど、面白いだろ』
やり口はゲスいのだが、まあ確かにこのままやられたい放題というのも癪だと思う。
『面白くはないけど』
こんな謎解きにムキになるのも変な話だが、看過できないというのも事実だ。私は続けて送る。
『乗った』
こうして、全く話の嚙み合わない二人の、
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