『ドラゴン追い祭り』終幕への光明
疑問は晴れた。2人と1匹を殺めた犯人……というか、原因は『ですっ☆ノート』だった。
ジェラートが絵を描いたといっても、そこに悪意はない。まして好意からノートを渡したニケアにも、管理を怠ったオレにも、アイテムを出したアステマにも、明確な責任があるとは思えなかった。
悲しいことだが、ロークとブッケは運がわるかった。事故のようなものだろう。
運がわるいといえば、いちばん運がわるかったのは、子猫のガバナーだ。絵のモデルとなったブッケの膝で寝ていただけでジェラートの絵に描かれてしまい、ノートの効果の犠牲に――
……って、あれ?
「あのさアステマ。ちょっと気になっていたんだけど……」
「なに?」
オレは心に引っかかっている、とある疑問を口にだした。
「『ですっ☆ノート』だけどさ、ロークやブッケにノートの効果が発動したのは解るんだ。でもさ、いっしょに描かれたガバナーも死んだじゃん? ネコなのに……」
「そうだね。ガバナー可哀想に……」
「これってさ、人間以外の生物にもノートの効果が有るってことだよな?」
「なにがいいたいのダイスケ?」
「別の生物……。たとえばモンスターとか……ドラゴン。なんかにも、ノートの効果があるのかなーって、思ってさ」
「は? 言ったでしょ『ですっ☆ノート』は、イラストで描かれた対象を死に至らしめるんだよ。それがドラゴンでもエルフでもゴブリンでもエルフでもオークでもエルフでもエルフでもエル──」
「……あの、アステマさん。エルフに何か?」
笑顔でニケア。でも目は笑ってない件。
「フン、べつにー。で? それがどうかした?」
こいつホントにおバカだな……。ここまでいえばフツー判るだろ。
オレはある思いつきを口にだす。
「だからさ、ドラゴンだよ。もしかして……だけど。闘技場に居座っている黒ドラゴンも『ですっ☆ノート』で、倒せるんじゃないか?」
「「「ああっ!?」」」
オレ以外の3人の声がきれいにハモった。
😈
「たしかに……そうかも」
「ダイスケさん! ぜったいに成功しますよ!」
「さすがは異世界の勇者殿だ」
3人のリアクションを眺めながら、オレの中での思いつきが、確信に変わる。ここへきて初めてみえた『ドラゴン追い祭り』終幕への光明。
『ですっ☆ノート』で黒ドラゴンを倒すのだ。いまなら肝心の絵を描けるジェラートもいる。ドラゴンと直接やり合う必要はまったくないので、こちら側のリスクは、ほとんどないように思えた。だとすれば、この作戦を試してみる価値は十分にある。むしろ今はこれしかない。
「(……ありがとな、ローク、ブッケ。そしてガバナー)」
オレは横目で世話になったロークとブッケ、そして、この作戦を思いつかせてくれた子猫のガバナーの遺体を確認する。心中で彼らに祈る。
2人と1匹の魂に冥福を……。
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