異世界万歳! エルフのニケアと出会えた

「追え追え!」


「逃がすな! 悪魔を殺せ!」


「そっちいったぞ! 死ね!」


 シュンシュンシュン

 ド。パパパパパパ。


 様々な飛び道具がアステマに浴びせられる。

 しかし、そのことごとくが空や地に消える。すべてを避けまくるアステマ。


「やったか!」

「やったぞ。当たった!」

「!?……い、いや、残像だ!」


 ……残像て。

 ニューな存在のなにかだよ。もうなんか覚醒してるだろオマエ。

 ほんとに逃げ足すげえよ、アステマ。


 しばらく闘技場を逃げまわったあと、そのままの勢いで外に逃げていった。


 そんないざこざがあった中、肝心の黒ドラゴンはつまらなそうにしていた。

 っうか、途中から首をたたんで寝てしまっている始末。出た当初こそ怒って暴れてはいたのだが、基本的にじぶんから積極的に人を襲おうという意識はないらしい。今のところ。


「……あ、あの? 勇者サマ……落とし物」


 アステマと、それを追った祭り参加者が消えた先をぼんやりと眺めていると、かすれて、とぎれそうな声がオレにかかる。


「ん? なに――って、おったわー!!!!」


 気弱な声をかけてきた方を向くと、なんとも可憐な金髪碧眼の美少女がいた。

 手にはオレが投げ捨てたアステマの黒い『ですっ☆ノート』ノートを抱えている。……それはどうでもいい。植物由来の染料で染めたであろう、緑を基調とする衣装。丈がミニなスカート&皮のブーツ。

 これだよ、これ!

 おお神よ。エルフ娘よ。

 しかも、いままで遠目に見た、どのエルフ娘よりもかわいい。


「……え」


 オレの大声に驚いて、尖った耳がピクンと揺れる……。いい。

 うっわあ、かわええ。なにこの可憐さ。そして可憐さ、やはり可憐さ。

 くうう、これだよこれ! これを求めていたんだよ!

 

 異世界万歳!

 転生万歳!!

 ファンタジー万歳!!!


「うおおおおお!(∩・∀・)∩ワッショ-イ!!!!」


 オレの血が沸く。せりあがる心の底からのワッショーイ! がでた。オレの想い大噴火。ボルケーノ春! 彼女を見た瞬間。オレの中で大きくなにかがはじけた。自分の殻。いや種?


「どうしましたお嬢さん? オレと結婚しましょう」


「う、あ……え……はい」


 目を白黒させるエルフ娘。そして、はい。


 オレは決心した。この娘を嫁にすると。いや嫁です。嫁でした。

 この娘はオレの核心的利益。

 永遠に愛することを誓います。もう前のめりで、ええ。


 心にビビッときた――どころか、もうドカン、ズガンときました。

 むしろ、カッ――からのキノコ雲きました。

 衝撃と閃光でオレの心は荒廃しました。

 でも、その荒廃したオレの世界に一つの芽が咲きました。

 その芽こそ君です。エルフ娘さん。

 ここからオレの世界は始まります。新世界が。夜明けががが。



「きみの名は?」


「ニケ……ニケ・アムステルダム。です」


「ニケアか。いい名だね」


「いきなり名前を略された!?」


「オレの名はダイスケ。さあ行こうか」


「え? どこへ……、ですか?」


「ここではないどこか、かな。ハハッ」


 きっとオレの歯はキランとしたにちがいない。

 オレはニケアの手をひいて、血と火薬の臭う闘技場を後にした。

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