アノ有名すぎるアイテムを得て。確信する勝利。

「アステマ、聞かせてくれ『ドラゴン追い祭り』の勝利条件は?」


「……すんごい凜々しいねダイスケ。顔つきが違う。……別人」


「茶化さないでくれアステマ。オレには目標がある。このために生きてきたと言っても過言では無い」


「数を多く仕留めるか。いちばん大きいサイズのドラゴンを仕留めるか、だけど……」


「だけど?」


「毎年、帝国の騎士団長が優勝してるんだよねー。だから盛り上がりに欠けるっうか。騎士団丸ごと参加でグルだからさー」


「なんて汚いやつらだ」


「そんで皇帝が褒美の望みを聞くと『帝国の永遠の繁栄でございます』とか騎士団長がいうの」


「うっわ、サブっ……」


「そこで風穴をあけようと、異世界のお祭り男を喚んだんだよね……。そしたら盛り上がる」


「喚んだというか、『撥ねた』だけどな」


「あと……」


「あと?」


「なんか面白そうなので転生させてみたっ!」


「それ! ダメ女神の典型的なやつ!! ネタにされるぐらいダメなやつ!」


「だいたい、ダイスケっていう名前が紛らわしいのがダメなんだよ。おしかったなー」


「……いや、オレの世界ではわりとある名前だ」


 ……全国のダイスケさんよかったですね。被害者がオレで。




                  😈




「アステマよこせ」


「――ついにあたしを歯牙に……」


「そのボケはいい。チート能力だよ。オレによこせ。なにがなんでも騎士団に勝たねばならん」


「?」


「いいかアステマ。異世界に転生させた女神は、もれなくチート能力を転生者に与えるのが、女神としてのしきたり、伝統であり、礼儀だ」


「え? そうなの……」


「そうだ。それだけは譲れない」


「うーん。なにかあったかな……」


「どんなに使えない能力でもいい。なぜなら、その使えない能力が後に花開く展開というのがアツいからだ。むしろその意外性が「――おっ?」となり、多くの読者の心をわし掴む」


「……何目線かよくわからないけど、説得力はハンパないね」


「どうせ駄女神のおまえのことだから、ちんけな能力しかないんだろう。微塵も期待はしていない」


「――本音!?」


「なにかあるだろ? 「じゃんけんで必ず勝てる」能力とか、「子供が風船を飛ばして木の枝にひっかかっているときだけガンチート覚醒」能力とか、「卵をどんな割り方をしても破片が入らない」能力とか」


「すんごいバカにしてるよね、あたしのこと」


「なにかよこせ」


「うーん、そうだなあ。能力は思いつかないけど、アイテムなら……あるよ」


「おっ、能力じゃ無くてもいい。チートアイテムというのでもぜんぜんアリだ」


「じゃあ、これあげる」


 渡されたのは一冊の黒いノート。


 おい、これってまさか!? あの有名すぎるアイテム……あのノートか!?

だとすれば、最強のチートアイテム。まさか!



「書くと対象を殺すことができるのですっ☆ノートだけど……」



「うお、きたぁああああああああああああああああああああああああ!! くはッ、あははははははははははははははははははははははッ!」



「ダイスケ。なんていう哄笑。貴方まるで……」



「――勝ッ―――――――――――――――――――――――――――――た!!」

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