第17話

「大地、さん……?」

「うん」

なんだろう。夢、だろうか。

「起きた?お姫さま」

「――!!」

一気に目が覚めた。

「え、あ、い、いつから――」

起きていたのか。ここにいたのか。

「さて。水咲ちゃんの貴重な寝顔見れて楽しかったなあ」

大地は大きく伸びをした。くすくす笑いながら、

「俺も寝ちゃって悪かったね」

「い、いえ――」

どうしよう。なんだかすごく恥ずかしい。

水咲は俯いて顔を隠した。

「せっかくのデートだったのに勿体ないなあ。俺たちふたりとも寝ちゃったから」

残念そうに大地が呟く。

店の外を見ると、もうすっかり日は傾いていた。

「もうちょっと遊びたいとこだけど、そろそろ帰らないと竜樹に殺されそうだな、俺」

そうだ。

振り回されててすっかり忘れていたが、学校をサボった(サボらされた)のだった。無断欠席だから竜樹に連絡がいっているはずだ。

怒られる、だろうか。

「大丈夫だよ。ちゃんと俺が言い訳するから」

そういう問題ではない気がするが。

「叔父貴が留守番させてごめんって言ってたよ」

「いないんですか?」

「なんか用事が終わらないって言ってたけど」

「そう、ですか」

「また遊びにおいでって。気に入られたみたいで良かったじゃん」

水咲はちょっとだけ嬉しくなった。ここは確かに居心地が良かったから。司と話をするのも楽しかったし、楽しみが出来た。

ふと、水咲は疑問に思った。

「あの……大地さん」

「なに?」

「どうして、私をここに?」

「どうしてだと思う?」

話をはぐらかそうとしている。が、水咲は踏みとどまった。

なんだか、まるで、

今日の大地の行動は水咲を慰めようとしているような。

なぜ?

なぜそう思うのか。

なぜ、胸がどきどきするのだろう。

水咲の、なにかに、気付いている?

大地はじっと水咲を見ていた。水咲は……目を逸らすことが出来なかった。

沈黙が訪れる。

やがて。

大地がふっと笑った。

「そろそろ出ようか」

「誤魔化さないでくださ――」

「誤魔化してなんかないよ」

「でも」

「嘘は言わない。誓って」

「…………」

やっぱり、大地はなにかを隠している。

「帰る前に、ちょっとだけ付き合ってもらおうかな。君に見せたい場所があるんだ」

 


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