第16話
「水咲ちゃん、悪いんだけど、ちょっと留守番しててくれる?店は閉めておくから。大地の馬鹿が起きたら昼飯作りおきしてあるって言ってやってくれる?」
「は、はい、でも――」
「好きにしてていいよ」
そう言って司は出ていった。
取り残された水咲はどうしようか悩んだ。店の中の装飾を見てぶらぶらしたり、本を読んだり。でもすぐに飽きてしまってすることがなくなってしまった。
(どうしよう)
チラリと店の奥を見る。大地はまだ起きて来ない。
(大地さん、そんなに疲れてるのかな)
寝てしまうほど疲れているのになぜ水咲を連れ出したのだろう。大地のことを考えると分からないことだらけだ。
水咲はカウンターに座って頬杖をついた。
学校のクラスメイトや同級生たちとは極力距離を置いているので、特に親しい友人もいない。だから休日に出かけることはあっても1人だし、水咲もそのほうが気楽だ。
だから今日みたいに学校をサボって誰かに振り回される、なんて思いもしなかった。
でも。
ちょっとだけ。
本当に、ちょっとだけ。
楽しいと思える自分がいた。
それからどのくらい時間が経っただろう。いつの間にかうたた寝をしてしまったらしい。
司は……まだ帰ってきていないのだろうか。カウンターの中には誰もいない。
その時。
「おはよう」
ふいにかかった声に水咲はびくりとした。
隣を見ると、頬杖をついて微笑みながら水咲を見ている大地が座っていた。
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