第12話
こんなに恥ずかしい思いを今までしたことがあっただろうか。
「あー、楽しかったー」
子供みたいにはしゃぐ大地とは対称的に水咲は穴があったら入りたいと切に思った。
なぜなら。
「たくさん取れたなぁ」
水咲の両腕には大きい人形が収まっていた。なにかのキャラクターらしい大きな猫だ。他にもいろいろ入った袋をぶら下げているので、当たり前だが周囲の視線が水咲と大地に嫌でも注目している。
大地が行き先に選んだのはゲームセンターだった。なぜこんな場所を選ぶのか聞くと、面白そうだったから、とあっさり言った。
クレーンゲームで人形を楽しそうに取る大地は本当に楽しそうで、水咲もちょっとだけ楽しかった。まさかこんなに人形を取るとは思いもしなかったが。
「大地さん、取りすぎですよ」
「俺才能あるよね」
「こういうこと、いつもするんですか?」
「まさか。俺ゲーセン来たの初めてだし」
「え!?」
水咲は驚いた。どこから見ても馴染みすぎていたのに。
大地ははは、と笑った。
「俺そんなに遊んでそうに見える?」
心の中を見透かされたみたいに言われてドキリとする。
「いえ、あの」
「まあしょーがないんだけど。俺マジメ嫌いだし」
自覚はしているらしい。
「それよりそろそろ腹減らない?」
そう言えば。大地に振り回されていたらいつの間にかそんな時間になっていた。確かにちょっとお腹が空いている。
「いいとこ知ってるから、そこ行こうか」
「はい」
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