第7話

この気持ちを、なんと呼べばいい?


「よし、出来た!俺天才!」

ヒロトの満足気な声が部屋の中に響く。

「あのう……」

「やっぱモデルがいいとやりがいあるなぁ」

話をまったく聞かないヒロトに完全に弄ばれた水咲は今の自分がどんな状態なのか分からない。髪をセットしてメイクまでされた。が、鏡がないから確認出来ない。

でも、ヒロトが選んだ服はなんというか……

(普段着、みたい)

もっとドレスみたいなのを着せられると思っていた。

よくよく見ると部屋にあふれている服はカジュアル系ばかりだ。しかも女物ばかり。

なんだか大地のイメージと合わないような。

「ヒロトさんはスタイリストなんですか?」

口からぽろりと疑問がこぼれた。

「残念。俺はただの凡人」

「でも……」

「ホントにそうなんだよ」

ヒロトはくすくす笑った。

「俺、先輩に拾われてさ。住むとこないからこーやって住み込みさせてもらってデザインの手伝いしてたら自然に覚えちゃったんだよ」

「そう、なんですか」

「うん。意外?」

「いえ……」

真面目な答えが返ってきたことにびっくりした。

「ついでに言うと、先輩の服も俺が選んでるって言ったら信じる?」

「えっ!?」

思わず大きな声を出してしまって慌てて口に手を当てた。

「ホントホント。あー見えて……いや見えないけど先輩って自分に興味がないんだよ。仕事で人に会うのにテキトーな服選ぼうとするから俺が見立てるようになっちゃって」

水咲は目をぱちくりさせた。自分に興味がない?大地が?そんな風にまったく見えない。

いつも自分勝手で竜樹に怒られてるのに。今日だってこうやって水咲を振り回している。

「お?水咲ちゃん、いい顔になってきた」

「?」

「さっきまでオバケみたいにしてたけど、今はちゃんと笑ってる」

あれ?

「やっぱり女の子は笑わなきゃ」

ヒロトがニヤリと笑う。子供みたいな無邪気な笑顔につられて、水咲はふふ、と声をこぼした。

「さ、緊張もほぐれたみたいだし。先輩呼んでくるよ」

もしかして、水咲の不安を見抜いていたのだろうか。だから大地はヒロトに任せた、とか。

いや、そんなはずは……

「どうしたの?水咲ちゃん」

「あ、なんでもないです」

「じゃあちょっとここで待っててくれる?」

「はい」


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