第6話

竜樹が成人を迎えたのを機に中学生になった水咲は施設を出て兄とふたり暮らしになった。初めて自分の部屋を与えられて喜んだのを覚えている。

でも、どこかで不安があった。

水咲は家族を知らない。だからだろうか。兄と暮らせるようになって嬉しいかったけれど、小さい頃みたいに抱きついたり甘えたりすることは中学生になるとさすがにしなくなっていた。

水咲がどこかよそよそしい態度をとっていても、竜樹はなにも言わない。そんな優しさが逆に辛くて、苦しくて。

胸が、痛くて。


環境の変化といえば、もうひとつあった。

「俺、大地。よろしく。水咲ちゃん」

紹介された青年は竜樹の親友だと言われた。なぜか兄は苦い顔をしていたが。

水咲は初対面の大地を前に竜樹の後ろに隠れた。

それから大地は時々水咲たちの家に遊びにきたり時には泊まったりするようになった。でも水咲はあまり関わるのを避けた。


そういえば。

1度だけ、プレゼントをもらったことがある。

高校の入学祝いと言ってもらったのは、ペンダントだった。四つ葉のクローバーのリングをチェーンに通してあるだけのシンプルなもので、水咲は素直にお礼を言った。大地はどういたしましてと笑った。

なんだかその時だけちゃんと大地を見た気がする。



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