第5話

なんだか振り回されている。

水咲の頭の中はぐるぐるしていた。

「うーん、どれがいいかなー」

大地とは玄関で別れてヒロトに家?の中に案内されたと思ったら服だらけのウォークインクローゼットみたいな部屋に連れられた。

「しかし水咲ちゃんほっそいなー。ちゃんと食べてる?」

水咲が驚いたのは部屋の中にある大量の服だった。どれもきちんと整頓されていたが、まるでお店のディスプレイを見ているような感覚に襲われた。

ヒロトはたくさんある服の中からいくつかをチョイスしだした。そして水咲の前に持ってきては合わせる、を繰り返す。

というか、着替えさせられる?なぜ?

「あの……ヒロト、さん」

「ヒロでいいよ。なに?」

「これって……どういう……」

ことなのか。

ヒロトは最初きょとんとしたが、にやりと笑って言った。

「ああ、ただの着替えだから気にしないで」

「でも」

「大丈夫大丈夫。着替えの間はちゃんと外に出るから」

だめだ。話が通じない。

というか、大地がもう1人いるみたいだ。

そういえば。

「どうして……私が兄さんの妹だって分かったんですか?」

ヒロトとはこれが初対面のはずだ。

「知りたい?」

水咲は黙り込んだ。知りたい、のだろうか。

「あ、でもやっぱやめとこ。先輩に怒られそうだし」

「?」

「さ、ほらほら。とりあえずこれとこれとこれ着てみて。サイズは大丈夫なはずだから。俺外にいるから、着たらノックで呼んでね」

そう言ってヒロトはさっさと外に出ていった。

やっぱり振り回されている。水咲は思った。



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