第4話
「おかえりなさい」
靴を脱ぐ大地に向かって声をかける青年は扉の奥に佇む水咲に気付いたようだった。手にしていた飲みかけのペットボトルをぼとりと落として大地に詰め寄った。
「ちょ、なんすか先輩。朝っぱらからナンパしてきたの!?この子高校生でしょ。てか未成年はさすがに犯罪――」
「うるせえ」
耳元で騒ぐ青年の頭を大地がはたく。水咲はびくりと肩を震わせた。
「誤解を招く言い方するな」
「いや、誤解もなにも」
「ケンカなら買うぞ」
「ほら先輩、その子怖がってるじゃないすか」
大地がくるりと振り返る。
「あー、ごめん。びっくりした?」
「え、い、いえ……」
呆然と立ち尽くす水咲に大地が声をかける。
「水咲ちゃん、こいつの言うこと信じなくていいから」
「はあ……」
水咲は生返事するしかなかった。
と、ここで青年がなにかに気付いたようにマジマジと水咲を見た。
「あれ?君、もしかして……竜樹さんの妹さん?」
「えっ」
「やっぱり。なんだ、そうならそうと早く言ってくれたらいいのに」
竜樹の知り合い、なのだろうか。兄の交友関係を水咲はほとんど知らない。大地以外は。
「先輩もスミにおけないなぁ。俺てっきりいてててて」
大地が青年の頬を片手で思いっきり掴んでいた。
「ムダ口たたくのはこの口か?」
青年がすぐにギブアップの合図を送ると大地は手を離す。
掴まれた頬を擦りながら、青年は改めて水咲に向き直った。
「えーと、水咲ちゃん?俺、ヒロト。よろしくね」
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