第7話 双子の歌

 3人が”キューブ”の部屋に着くと、そこには右近と左近がいた。


 右近と左近は手と繋ぎ、空中に浮いているピンクの球体に向かって歌っていた。


「うーちゃん、サーちゃんごっめんね~。お邪魔するよ~。」


 孔雀は近くにある寝台に風花を横たわらせた。


「さーて、治癒しよっか。杖よメア・ウィルガ



 鉄で造られた頭部の輪形に金輪が複数通してありその音がシャラン、と鳴って表れた。


朱羅は不思議な杖の形に驚いた。


「孔雀・・それは・・・?」


「ん?これは俺の錫杖しゃくじょうだよー。治癒くらいしかできないけどね。」


そう言うと孔雀は神経を研ぎ澄まし、風花の火傷後に杖を向けた。


治癒クーラ。」


錫杖から光が溢れでて、風花を包みこんだ。


しかし、光は消え去り、風花の火傷は治っていなかった。


「ありゃー炎に囲まれたとはいえ風楯デフレクシオー発動してるから軽度の傷だと思ったんだけどなー。」


「ッ!風花のけが・・・治らないの・・ッ?」


朱羅は不安げな瞳を孔雀に向けた。


「・・・ッ、おいそこの双子・・・ッ」


零は焦るかのように右近と左近を呼んだ。


「・・・何・・、」


氣吹戸大祓いぶきどのおおはらへを、歌ってくれ・・・ッ」


「・・・・左近 、」


右近は右近を見つめた。


「・・・わかったよ、右近」


二人は手を繋ぎ、風花のそばに寄った。


「「 氣吹戸大祓いぶきどのおおはらへ 」」


呪文を唱えると、二人の周りが光り始めた。




  高天原爾神留坐かむづまります神漏伎神漏彌命以かむろきかむろみのみことをもちて


  皇神等前爾白久すめがみたちのまえにまうさく集侍吾友達乎うごなはるわがともたちを恵比幸給閉止まもりめぐまひさきはたまえと。 

                             」

                          


歌が始まると、光は風花を包み込み、風花の火傷はみるみる内に治っていった。


「・・・すごい、」


朱羅は唖然とした。 歌う双子の姿がとても美しく、かっこよかったからだ。


「わーお、完全治癒呪文だ。さすがだね~。共鳴率も上がってるね~。」


孔雀は感心するかのようにうなずいていた。



「・・・んッ・・・、」


歌が終わると、風花の意識が戻り目をうっすらと開けた。


「風花・・・ッ」


零は風花の顔を覗き込んだ。


「れい・・ちゃん・・・」

風花は、少しだけ微笑んだのをみて零は安心した。




「・・・今の共鳴率は・・・?」


左近はピンクの球体に向かって話しかけた。すると球体から女性の声が聞こえた



” ・・・・78パーセント・・だ、 ”


「ッ!球体がしゃべった・・・」


「これは・・・じゃないよ・・・マリアベル・・異能の力を測ったり武器を修復してくれる・・・」


右近はマリアベルを優しく撫でた。


「・・・朱羅様・・・今の歌・・・どうだった、?」


朱羅の服の端っこを掴み右近は不安げに朱羅を見つめた。


「すっっごいかっこよかった!きれいだったしッ! 」


「・・・ッ!・・え、えへへ・・。」


朱羅はパチパチ、と笑いながら拍手をした。

右近は顔を真っ赤にしてもじもじとした素振りをみせた。


「・・・78・・もうちょっとで80・・・どうすれば・・・」


左近はブツブツ言いながら親指の爪を噛み悩んでいた。


それを見た右近は、申し訳なさそうな顔をして左近に近づいた。


「ご、ごめん左近。僕のせいだ・・・。」


「そんなことないよ。もっと、心を一つに・・しなくちゃだね。」



左近は右近のあたまを優しく撫でた。



-双子の歌-終


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る