第6話 はじめての異能戦闘

「わ、わあーッ! ひろーいッ!」


朱羅は”スタジアム”に着くと、その広さに驚いた。


見渡す限り一面の緑。 空はどこまでも続く青。


天界には”競技場”、”スタジアム”と修行する場がある。


異能をもたない者が武術や剣術を修行するときは”競技場”

異能を持つ者は”スタジアム”で戦闘訓練をする。



そこにはすでに零と風花がいた。


「っしゃー!戦うぜー!今日は誰とだー!」

そういうと竜王は走りだしウォーミングアップし始めた。



「はーい、じゃあ今日の訓練メニューを教えるねーっ」


そう言うと孔雀はみんなを集めた。



「れーちゃんはなーちゃんとペアで戦闘訓練。どーんな手使ってもおっけー♪」


「うーちゃん、さーちゃんはお歌の訓練ねー。もうちっと共鳴率あげてみよっか」


「あーちゃんは・・・適当にしててっ♪」


「で、初めての朱羅は、ふーちゃんとペアで戦闘訓練してみよっか♪」


孔雀はニコリと笑いみんなに告げた。


「っしゃー!零の盾壊してみせるぜーっ!」

「・・・フン、」


零と那伽はそう言うと移動し始めた。


「・・・じゃあ”キューブ”に行こうか、右近」

「うー・・・。」

左近は、嫌な顔をする右近の手を引いて”スタジアム”を後にした。


「じゃーぼくは日陰で本でも読んでるねー。」


アレンは木の日陰に座り本を読み始めた。



「・・・せ、せんせー・・・。」

風花は不安げに孔雀を見上げた。


「だいじょうぶだいじょうぶ♪朱羅はまだ異能戦闘したことないからふーちゃんでも戦いやすいと思うよ?」


孔雀は風花の頭を優しく撫で宥めた。



「・・が、がんばります・・・。」


「おーしっ♪いっちょやってみよーっ」



孔雀は朱羅と風花の戦いを見守った。



風花と朱羅はお互いに距離を置き、相手の出を伺った。


(わたしのが年上だし・・異能使うのもわたしのが慣れてる・・・もしかしたらっ)




先手を打ったのは風花だった。


か、風よレバンテ・・・ッ」


風花は呪文を唱えると空中に扇子が表れた。

それと取ると風花は戦闘態勢ととった。


「な、なにいまのー!手品??」


朱羅はどこからともなく表れた扇子に視線を向けた


「ち、ちがいます・・・異能使うための武器です・・・ッ」


風花は扇子で自分の口元を隠しながら説明した。


「ま、参ります・・・ッ!」


風花は扇子を高く舞い上げた。そして落ちてきた扇子受け取りを仰いだ。


「第一の風・・・ッ!」


シュパッ ! 


空気を切り裂く音が聞こえた。



朱羅は反射敵的に左へ避けた。すると朱羅の後ろにあった花が切り裂かれた。


[ッ! お花が、切り裂かれた・・・?、」


(距離離れちゃだめだ・・ッ詰めよう!)


「よーしっ今度は朱羅の番ッ!」


朱羅は気を足の裏に集中させた。

その瞬間風花の目の前から朱羅の姿は消え、後ろに立っていた。


(これは・・・瞬動術しゅんどうじゅつッ!)


風花はとっさの行動に瞬時に動くことができなかった。


(まずはあの扇子を取るんだ・・ッ)


朱羅は手を伸ばし扇子を取ろうとした。



しかし風花はその扇子で朱羅の手を弾いた。


「くッ・・・!第二の・・風ッ・・!」


風花は扇子を仰いだ。すると朱羅の体の下に小さな風が集まり台風となった。

朱羅の体が浮き、空高く吹き飛ばされた。


「うきゃああぁあーッ」


空高く飛ばされた朱羅は動転した。


「とどめです・・ッ!第三の風ッ!」


風花は扇子を数回素早く仰いだ。


シュパパパパッ !

           

すると無数のちいさなかまいたちが吹き飛ばされた朱羅に向かって飛んできた。


「ッ! かまいたち・・ッ! 」


朱羅は体制を整えた。 かまいたちに向かって手を伸ばした。すると、手の中心から炎が溢れ出た。 


向かってきたかまいたちは朱羅の炎によってかき消された。


「・・・ッ! わたしの・・・風が・・・。」


 かき消されたかまいたちをみて風花は後ずさった。


(まだわたしにはここまでしか力は出せない・・・ッ)


朱羅は空中で体を方向転換させた。 そして空中を蹴るかのような動作を

した後、またもや風花の後ろになっていた。


(虚空瞬動こくうしゅんどう・・・ッ!こんな上級者ワザできるなんて・・・ッ)




朱羅は基本の土台は孔雀とカルロスから教わった。

それもあってか異能を持たないものとの闘いでは剣術も体術では誰にも負けなかった。



朱羅は風花に向けて手を向けた。すると炎は風花を覆った。


「きゃああああぁああッ!」


風花は悲鳴を上げ、炎から逃げようとするが炎は逃がさないかのように風花の

体に纏わりついた。


「きゃあああッ!あ、あつい・・ッ! いやぁああッ!」


風花の着ている着物は炎によってだんだんと燃えていった。





「はい、そこまで。」


戦いを見守っていた孔雀は、いつのまにか風花を抱き上げていた。


「ッあ!風花・・・ッ!」


朱羅は炎を収め、抱き上げられている風花のもとに走った。


「風花・・・ッ! ごめん・・・ッ!風花・・ッ!」


「だいじょーぶ。気絶してるだけだよ。少し火傷しちゃったね。」


孔雀は燃えて焦げた着物から赤くなった腕をやさしく撫でた。


「風花・・ッ! どけ・・ッ!」


そこに零が焦ったようにやってきて朱羅を押しのけた。



「風花・・ッ!風花・・・ッ!」


「れ・・・れい・・ちゃ・・ん、」


風花はかすかに目を開け零を見つめた。


「ッ! 先生・・”キューブ”に風花を・・ッ!」


「うんうんいそごーいそごーっ」


風花を抱き上げている孔雀と零は、急ぐように”スタジアム”を出て

”キューブ”へと向かった。




自分の異能の力に、傷つけてしまった風花をみて朱羅は呆然していた。


(朱羅の・・炎で風花が・・・、)



朱羅は考えるやめるかのように頭を振った。


「風花のところ・・行かなきゃッ・・・!」



朱羅は急いで後を追った。


-はじめての異能戦闘-終




















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