的を得る(射る前である可能性。つまり正しい言い回し)

 基本的な部分は「正鵠を得る」の項をご覧いただくとして、ここでは少し視点を変えています。


 「的を得る」はどんな場合に使われるでしょう?


「この案件について何か意見は?」

「○○を××するのはどうでしょう?」

「なるほど、『的を得て』いる。では○○を××することについて考えてみよう」


 こんな感じで出て来たりはしないでしょうか。

 しかしこの場合、「的を得る」の意味とされる「事の要点を的確に捉えている」「本質を突いている」「理にかなった正しい見方である」と言ったものとはどこかずれてはいないでしょうか。


 辞書での「的を得る」の意味は、弓で的を狙って射る様子から来ているものと思われます。

 しかし話し言葉として使われる際には、譬えるなら「流鏑馬やぶさめで的を視界に捉えた」あるいは「クレー射撃で射出された的を視認した」ような状況ではないでしょうか。

 つまり、矢を射る前、弾を撃つ前の段階を指していると思われるのです。的を射ているのではなく、見ているだけです。


 先の譬えで言うなら、「論点を拾い出した」「問題が何であるかを捉えた」状況となります。


 こう考えると、「的」即ち「問題点」「論点」を正しく「得て」いないでしょうか。


 ……まあ、こんな感じの使われ方が誤用だと言われたらそれまでですが。




 派生する問題として、「的を得る」の意味が「問題が何であるかを捉えた」だとした場合、「正鵠を得る」とは少し意味が違って来そうです。

 「正鵠」は「的」の真ん中ですから、「的を得た」後に「正鵠を得る」ことになります。

 「的を得る」で「問題が何であるかを捉え」、「正鵠を得る」で「問題の道理を捉える」訳です。

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誤用岡っ引き 西居ちき @akasatana

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