永遠と(「延延と」を誤用)

 文脈として「延延と(えんえんと)」と書くべきところで「永遠と(えいえんと)」と書く向きが少なくありません。

 どちらも長い時間を表す言葉のためか、誤用に気付きにくいと考えられます。


 ではどうしてそんな誤用が広まるのでしょうか。

 恐らくは憶える順番に起因します。


 「永遠」は文学的に使われやすい言葉で、小学校の国語の教科書にも出てくるのではないでしょうか。

 それよりももっと頻出する場も有ります。


 歌詞です。


 「(なんちゃら)は永遠~」のように歌う曲は数多く、割りと憶えるのが早い言葉でしょう。


 一方、「延延」は話し言葉としていつの間にか憶えている類の言葉です。

 憶え立てでも、校長辺りの話が長いことに不満を持ってぶつくさ言う時に使うくらいのもので、頻出はしません。

 恐らく初めて耳にするのも「永遠」より後になります。


 初めての事象に遭遇した場合、人の脳は既知の事象に当て嵌めようと試みるのが知られています。

 初めて「延延」を聞いた時に「永遠」が既知であれば、脳内補完されて「永遠」と認識してしまうと考えられます。

 そして意味が似通っているので間違いに気付かないままになるのでしょう。


 テレビ番組で雛壇芸人などが「永遠と」と言っていたりして、憶え間違いの再生産もされています。


 では逆に誤用された場合にどうして違和感を感じてしまうのでしょうか。

 これは活用の差です。


 「永遠」は名詞又は形容動詞、「延延」は形容動詞として使います。

 同じ形容動詞ですが活用が違います。

 「永遠」は「なり」、「延延」は「たり」です。


 「永遠」は「なり」活用ですから「な行」の音が付いて「永遠に」。

 「延延」は「たり」活用ですから「た行」の音が付いて「延延と」。


 この形が崩れてしまうのが違和感の元と思われます。


 ただ、活用の違いは単語毎ではなく集合で憶えるようなものですから、単語単位では勘違いしていることも多いでしょう。

 更に「永遠」は名詞でもあり、格助詞「と」が付いて「永遠となれ」という風に文脈として「永遠と」となる場合も有ります。


 これでは違和感すら感じず、いよいよ自己での訂正が難しいかも知れません。

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