すべからく(「当然のこととして~すべし」の意味)
「すべからく」はその語感から「全て」の意味と誤解されやすい言葉です。
漢字で書けば「須く」で誤解しようがないのですが、訓読みが常用漢字に無いためにひらがな書きされて誤解を増やしています。
常用漢字は何とも奇妙で、新聞などでは全ての人が全ての常用漢字を読め、全ての常用漢字でない漢字を読めないのを前提として印刷されているように思えます。ふりがなを殆ど振らず、漢熟語の一部分をひらがなで書いたりでは、漢字の教本の役割も果たせません。
勿論書かれている内容の方が重要なのでしょう。しかし、読者側からすれば「ふりがなが無ければ読めない」「読めないから読まない」となりそうです。新聞離れ、活字離れが叫ばれる昨今、供給側に問題が有りはしないでしょうか。
その点、ライトノベルの書籍の場合、かなりのふりがなが振られています。小学校低学年で学習するような漢字を除いて全てと思える本も有ります。一冊の中で既出の単語については省略されている部分も有ったりはしますが、それでもその本を読み返すだけで少なくとも読み方だけは判ります。
これはターゲットとしている読者層の関係かも知れませんが、重要な事だと思います。アルファポリスさんの決算報告の中に「縮小傾向の印刷市場でライトノベルは伸びている」と言った事が書かれていますが、ふりがなが関係しないとはとても思えません。
話を元に。
「須」だけでは「何だこれ?」となりもしますが、「必須」と言う単語を見れば「あ!」となりはしないでしょうか。「必ずすべし」の「すべし」の部分なのです。
だから漢字で書いた方が良いのだ。
となるのですが、少々残念なことも有ります。
「須く」とふりがなも無く書かれていて「すべからく」と読めるかと問われれば、個人的にも「直ぐには無理だ」と答えることになりそうな点です。はっきり申しましょう。難読です。
また、漢文では再読文字となっていて「すべからく~すべし」と読みます。
これも不思議なもので「すべし」だけでも意味が通じそうなものなのに「すべからく」が付きます。「須」が漢文における強い意味の言葉で、読み下しで強調したかったと言ったことかも知れません。
一体「すべからく」はどこから来ているのでしょうか。
語源辞典を見れば、「すべし」がク語法で名詞化したものとなっています。「すべからく」と「すべし」の「すべ」の部分が共通していることに気付けば、答えに辿り着くのは簡単なのではないでしょうか。
「すべし」の未然形「すべから」に「く」が付いた形です。正確には助動詞「べし」の未然形「べから」にです。
こうして見れば、「なんで『全て』のように見えたんだろ」てなものです。
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