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怪奇! ひまわりの村で信仰される、とこしえの生を騙る新興宗教組織!
都市伝説では「幻の村」などと書かれ、耳目を集めるものが出てくる。その村では大量虐殺が起こり、住人は全て悪霊となって現世に留まっているという。そのような荒唐無稽なウワサ話。しかし今現在、まさに都市伝説のような村が存在しているのを、ご存知であろうか。
筆者が半年に渡って取材を続ける限界集落の、A市H村では、怪奇としか云えない事態が起きている。すでに死したはずの老人たちが夜な夜な徘徊しているのだ。彼らは熱に浮かされたように同じ言葉を吐き、迷い込んだものを追い返す。気味の悪いことこの上ない。
(ここで中略が入る。恐らく執筆途中だったのだろう)
どうやらこの事案の背後には、「ひまわりの國」という新興宗教団体が絡んでいるらしい。自治体が管理する、H村フォーラム:おらが村ソーシャルに根を下ろすひまわりの國は、地元のフォーラム運営会社Bに業務委託された後、急速的にローカルネットでその名が散見されるようになった。筆者は、この企業Bに取材を申し込んだが、にべもなく断られた。何か不都合でもあるのだろうか。
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原稿はそこで途切れていたが、参照項目として「M氏」というタブがついていた。リンクすると別ファイルが開かれる。うだつの上がらない青年が明後日の方を向いている写真と、恐らくは藤崎がまとめたであろうプロフィールが並ぶ。
馬淵だった。
九条は藤崎の評価をいくらか上げる。なかなか迫っていたんじゃないか。だから殺されたんだろうが。
九条は須永に一瞥をくれる。
「馬淵、康太。知らないなあ」
「藤崎も話題に出しませんでした?」
「止してくださいよ。そこまで親密だったわけじゃないんだ」
いまや須永は完全に臆病風に吹かれていた。無闇に通報するほど愚かではないと思うが。
九条は馬淵のプロフィールを追っている内に、大学名や企業名といった堅苦しい文言に紛れて、場違いな単語が何度も踊っているのに気付いた。
「――ホシミ@社会不適合者」
何かしらのハンドルネームだろう。馬淵自身のものだろうか。ここで検索しても良いが、とりあえず横に居る須永に確認を取ってみる。
しかし返って来たのは「さあ」という素っ気ないもの。もう考える素振りすら見せない。
「ありがとう。これで結構。もう行くことにします」
一方的に背を向けた九条に、須永は声を掛けられないでいる。飄々と部屋を後にする直前、ドアを開ける手を止めて、九条は言葉を足す。
「僕のこと追ってみますか? 面白い記事になりますよ」
「やめておくよ」と須永。
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