第210話 終結の繭
――一方。エリーを追ってガイたちも必死に創世樹内部を上へ、上へと駆け上っている最中だった。
だが、最初に創世樹を見た時以上の謎にガイたちは触れていた。
「――せいッ!! りゃあッ!!」
――二刀を振るい、飛び上がりながら、ガイは鋭く刺しに来る木枝や絞め殺そうと伸びて来る触手を叩き斬っていった。その斬った感触と断面に、彼は違和感を覚えた。
「――機械!? こりゃあ、機械じゃあねえのか――――!?」
――斬った手応えは、樹木のそれではなく、鉄骨のようなそれだった。機械仕掛けのロボットでも斬ったような手応えだったのだ。
「――確かに、機械のように感じるな……『創世樹』と聞いてずっとでかい樹だと思っていたが……機械なのか…………!?」
セリーナも
「――今まで、創世樹と聞いて思い込んでいたが……思えば生命の
テイテツも戸惑いながらも
イロハは、さすがに相手が木枝や触手ではハンマーで打ちづらいので、ハンマーをカプセルに仕舞い、腰に備えていた大型ナイフに練気の電磁圧を通して対応していた。
「――確かに、こいつらどっちかっつーと植物より金属っス! ウチの電磁圧を込めたナイフで斬ると、纏めてスパークしたように壊れていくッスよ!! ここ、ホントに一体何なんスか――――!?」
――訳のわからない疑念は焦燥を生み、戸惑う一行。
「とおッ!! ――ここであれこれ考えてもしょうがねえ! とにかく上だ! 上を目指すんだ!!」
――この場で何か思案しても無意味。そう判断したガイは全員に号する。皆も納得したのか、邪魔しに来る木枝や触手は切り払い、焼き払い……とにかく上層を目指すことにした。
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「――さあ…………とうとう辿り着いたよ。ここがこの創世樹の中核であり、『養分の男』と『種子の女』が融合を果たして創世樹を完全に発動させる部屋であり――――そして君と私が初夜を迎えるベッドルームさ。」
「――ここが…………。」
アルスリアとグロウの眼前には、巨大な種籾とも、巨大な繭とも似付かぬ大きく、そして柔らかな質感を感じる碧色の物体が光を放っていた。
「――――ああ…………とうとう、この瞬間だ。私にとっての悲願だ。君とひとつになる。ひとつになって、この星を作り変えるんだ――――人間をはじめ、生命の存在しない、死の星へ。さあ……共に行こう…………。」
「………………。」
――アルスリアに手を引かれ、グロウも歩き出す。
お互いに危害を加えられないのであれば、もはやこれ以上講じる手立ては無い。アルスリアとの融合を以て、彼女の邪念に対しグロウ自身の精神の抵抗に全てを賭けるしかなかった。
身体は、もう目の前の繭を求めているようだ。自然と吸い寄せられるように足が動く――――
「――――さあ、入ろう。私と君の、永遠の世界へ――――。」
物言わぬ繭のような目の前の『ベッドルーム』。アルスリアもグロウも、共に招かれるまま――――その身を繭の中に埋めた――――。
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――一方。ガイたちは何とかエリーに追いついた。エリーの後ろ姿を見つけ、声を掛ける。
「――エリー!! 無事だったか!! すぐにグロウを助け――――エリー?」
――ただ疲労しているだけではない、エリーの後ろ姿。やや暗い空間に各々の目が慣れ、光景が見えて来る――――
「――――うげっ。この真っ黒い炭くずになってんの…………エリーさんがやったんスか?」
エリーは、伏した目で答える。
「…………そうよ。あいつが……昔の、アナジストン孤児院にいた頃のあたしをコピーして、襲わせたの――――もう、あんな悲劇は誰にも味わわせないと固く誓ったつもりだったのに――――。」
「――むっ……これは…………原型を留めていないが、確かにエリーと共通の遺伝情報――――!!」
――科学者として生体実験などのえげつない行ないを繰り返してきたテイテツですらも……悪臭を放ち、筆舌に尽くし難いほどに傷んだエリーの
心中を察し、セリーナも声を掛ける。
「――エリー…………惨いことになったな。よく耐えた。すぐに――」
「――すぐに、グロウを助けに行こう。もうあたしらには悲しみに浸っている暇も無いの。」
エリーは顔を上げ、頭上を睨んだ。創世樹全体が揺れ震え、上層部の繭はどんどんと肥大化していた――――創世樹による
「――あの、変な塊の中にグロウが…………今行くわ、グロウ!!」
――エリーは、さらに己の限界を超える練気を高め、肥大化する繭へと飛びついた――――
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