第208話 大樹の抵抗
――――リミッターによって大きく抑えられていたエリーの力。その全てを開放し、まさに鬼神の如く戦場を駆け抜けて、創世樹の前まで辿り着いた。
「――ガイ!! みんな!! 大丈夫!?」
「――エ……エリー…………俺らのことはいい……早く、アルスリアを止めろ…………!!」
アルスリアのプレッシャーにやられるガイだが、唯一にして最強の戦士であるエリーに全てを託そうとする。
「――――むう……目の前に迫るのがかつての『鬼』の力に肉迫するほどの力を持つ姑……これは、他の奴らをプレッシャーで捕らえている余裕は無いね――――確実に葬ろう。」
アルスリアは、自ら放つプレッシャーを解いたのち、制御盤のような装置を
「――創世樹という
すると、創世樹の内部の壁と言う壁が、禍々しく妖しい輝きを放ち始めた。
「――プレッシャーが……解けただと!?」
「――アルスリアめ。随分舐められたものだな!」
ガイもセリーナも、自由になった身体を馴らしながら、再び臨戦態勢を取る。
「――この中に入って上、みたいね…………みんな! あたし、先行くから!! ついてきて!!」
「うおおおっ!?」
――リミッターを解除し、洗脳されたセリーナと戦い、青天井のように高まり続けるエリーのエネルギー。創世樹の内部へと飛び込んだだけで、反動のエネルギーで吹き飛ばされそうになり、思わずライネスが悲鳴を上げる。
「――へっ。あいつ……『ついて来い』なんて、滅茶苦茶難しいこと平気で言いやがって――――行くぜお前ら!! とうとう来たぜ、俺たちは――――創世樹に!!」
――ガイは半ば虚勢にも似ているが、ともかく全員を鼓舞し、内部へと走った――――
「――何っ!? ちちう……ヴォルフガング!!」
だが、内部に侵入してすぐに、近くの壁にめり込むようにして倒れているヴォルフガングをリオンハルトは見付けた。
――『殺し切る』と決めたはずの相手。思わず『父』と呼びそうになった己自身に舌打ちしつつ、駆け寄る。
「――何があったのだ!! アルスリアは!?」
ヴォルフガングは意識を朦朧とさせながらも、答える。
「――あ、アルスリア…………あいつは、危険だ……我々ガラテア軍にも――――私という養父にも、彼女は初めから忠誠を誓ってなどいなかった…………い、急げ…………世界が、滅ぶ…………。」
「忠誠を誓ってねえだと!? だとしたら奴は何をするつも――――」
「待て、ガイ!! 周囲の様子がおかしい…………創世樹の内部のあちこちが、殺気を放っている――――!?」
――創世樹そのものから感じる殺気に、セリーナが注意を促す。
――俄かに、壁中から無数の木枝とも、触手とも似付かぬものが襲い掛かってくる!!
「――気を付けろ!! これはどうやら…………創世樹自身の防衛システム。セキュリティのようなものらしい!!」
「――オワアアアッ!! ちょちょちょ!! 触手で絞め殺されるなんて、冗談じゃあないっスよ!! よいしょ本じゃああるまいし……」
「――今更ビビってられっか!! あちこちに足場はある!! 全速力で上を目指すぜ!!」
――先行するエリーを追う形で、ガイたちは真上を目指して、壁のあちこちの足をかけられそうな窪みを頼りに飛んで跳ねて登っていく。
「――くそっ……私が天誅を下すまで……勝手にっ…………死んでいるんじゃあない、ヴォルフガング!!」
――リオンハルトは冷酷に父に引導を渡す――――のではなく、まず壁からヴォルフガングを引っ張って起こし、地に寝かせた。
『セキュリティ』の触手が迫り来る。
「――――この男を殺すのは私だ。殺してよいのは私だけだ!! それまで、こんなところで殺させてなるか!!」
――実の父を殺す資格は己のみ。気概を見せるリオンハルトは独り、練気を集中した――――
――一方。ガイたちよりかなり速く、触手や木枝程度は焼き殺しながらエリーは猛然と真上を目指す。
「…………呆れたものだね。あのエリーとかいう女は。馬鹿力だけでセキュリティを強引に突破するとは。ならば――――こういうのはどうだい。」
ひらけた空間から様子を見下ろしていたアルスリアは、創世樹の情報を参照しながら、『種子の女』の力を引き出した――――
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