第157話 クレイジーモーターサイクル
――――ゴッシュの開始の合図と共に、全員がそれぞれの乗り物で一斉に駆け出した――――!!
「――――うわッ!?」
――途端に、スタート地点で爆弾による大爆発が起きた。
――開始の演出などではない。轟音と共にスタートダッシュが遅れた多くの挑戦者が爆発に巻き込まれ、死傷したようだ――――他の挑戦者による罠である。
「――始まっていきなり爆弾を仕掛けるなんて――――!!」
――思わず驚き、ガンバから悲鳴を上げたグロウだが――――振り返って他の挑戦者の身を案じている余裕はない。
爆発に巻き込まれず走っているのはエリー、セリーナ、ガンバに乗るガイとグロウ、そして『黒風』で風よりも速く疾走するイロハ。全員無事だ。
だが、無論他の挑戦者もいる。
ガンバより小型だが、レーシング用にカスタマイズしたレーシングカーで猛然と走るものが1機。操縦席に1人、後部席に1人。後部席の者はどでかい銃器を構えて周囲を警戒している。
小型の飛行機でルールギリギリの低空飛行しているものが2機。両方ともただの飛行機と言うより戦闘機で、バルカン砲やミサイルなどを装備している。赤と青の2種類のカラーリングだ。
さらに、異彩を放つものが1機。一見すると巨大な人間が甲冑を着て走っているように見えるが……よく見るとそれは実際の肉体よりも大きな補助拡張機構……解りやすく言えば、肉体の運動性能を大幅にカバーする
――――現在の暫定順位はこうだ。1位レーシングカーの2人。2位強化機械装甲。3位イロハ。4位5位がほぼタイで戦闘機2機。6
ただのレースならば速さと技巧を競うのみだが…………それぞれが武装していることは自明の理。そして、先に走っている方が後続の者たちに何かしら攻撃や妨害を仕掛けやすい。そういう意味ではスピード特化ではないガイとグロウの乗るガンバでは不利かもしれない。
円形闘技場内のトラック、走行コースは計5周。5周廻り切るまでにそれぞれの攻撃から身を躱しながら走り続けなければ――――俄かに、全員の額や手に汗が噴き出す。
1周目のまだ8分の1程度をそれぞれが過ぎたところ。早くも1位を走るレーシングカーが仕掛けて来た――――
「――ふっ。ゴツい鎧を着て走っているが……さぞかし足元は不安定だろう。喰らえ――――ッ!!」
後部席に座る挑戦者が、スナイパーライフルで照準を強化機械装甲の足元に合わせ、引き金を引いた。立て続けに2連射――――
「――――何ッ!?」
――後部席の狙撃手は名人らしい。こんな猛スピードで不安定に各々が重心をブレさせて走行している最中でも精密に強化機械装甲の足に弾丸を2発とも当てた。
――――だが、強化機械装甲の強度は予想以上だった。ぎぃん、ぎぃん、と鈍い金属の破裂音と共にスナイパーライフルの弾丸を2発とも弾いて砕いた。どうやら傷ひとつ負っていないし、衝撃で倒れもしない。
「――――ちいっ!! あいつ、只者じゃあないな……なら、バイクの小娘からだ――――!!」
後部席の狙撃手は素早く弾を込め直し、今度は少し後ろを走るイロハに照準を合わせて来る――――!!
(――――や、ヤバい……狙われてる――――来るッ!!)
イロハは咄嗟に、あらかじめ服用しておいた
「――喰らえッ!!」
サイレンサーの、チュンッ、とか細い銃声を吼えさせながら、イロハの心臓、そしてタイヤの前輪を狙って撃って来た――――
「――くッ!」
――――辛うじて、回避。イロハは『黒風』の車体を左右に揺らして何とか銃弾を躱した。
――だが、やはり狙撃手はかなりの腕前だ。『黒風』の装甲部分を掠め、イロハの目元を守るゴーグルの端の金属部分を僅かに掠めた。共に小さく火花が散り、イロハは熱で眉を顰め、冷たい汗がだらり、と流れる感覚を味わう。
何とか狙撃を躱したイロハだったが、今の回避動作で少しスピードが落ち……その隙に後方の戦闘機2機がイロハの前と、すぐ頭上へと飛び出た。恐らく、攻撃を躱して減速するのを示し合わせてスピードを上げたのだろう。この戦闘機2機の搭乗者も戦闘とレーシングの達人だ。
すぐ前と頭上に陣取られてしまったイロハだが、幸いこの戦闘機には前面にしか武装はしていないようなのでイロハがこの戦闘機の搭乗者に攻撃されることはなさそうだ。すぐ前を飛ぶのなら楯として利用する手もあるかもしれない。
――だが言い換えれば前に陣取られると進路を塞がれたも同然。追い越すことが出来ない。『黒風』の小回りを利かせて振り切ろうとするも、向こうも巧みに操縦して機体で行く手を阻む。
「――――このままじゃあ、先に進めないっス!! 皆さん、援護を頼むッス――――!!」
窮したイロハは、仲間の助けを乞うた――――
現在順位、1位レーシングカー。2位強化機械装甲。3位戦闘機赤。4位戦闘機青。5位イロハ。6位セリーナ。7位エリー。8位ガイとグロウ――――
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