第97話 もっととんでもない修行の成果
途端に発生したのは――――
竜とは言っても、まだ幼い小さな竜のように見える。青白いエネルギーを帯び、身体が清く、透けている。
「――むう……今の練気の練り方だとこの程度か…………もっと練気のエネルギーの総量を増やせればいいんだが……」
セリーナは幼竜に跨り、翼で飛ぶように念じてみるが、やはり大した高さは飛べないようだ。
「――くそっ。これじゃあ、
「空中走行盤……あっ! そうだセリーナ! 空中走行盤だよ!!」
「……何?」
グロウが思い当たり、セリーナに告げる。
「僕がこの前木の枝を媒介にして弓矢を創り出せたように…………セリーナの練気も、何か空を飛ぶ別の物を媒介にしてみれば上手くいくんじゃあない? 試してみようよ!!」
「むっ。そうか、なるほど……やってみるか。」
セリーナは一旦練気の竜から降り、近くの木に立て掛けてあった愛用の空中走行盤を持って来た。幼竜の前で念じてみる――――
「――ふううううう…………はああっ!!」
またも練気の光が瞬く。すると――――
「――おお~っ!! まだちょっと小さいけど、何だか竜が逞しくなった!!」
――幼竜は空中走行盤の噴射機構などを媒介とし、大きさは一回り大きくなった程度だが、素早く空を駆けられそうな翼を持つ翼竜と化した。
「――さて、これならどうだ――――飛べッ!!」
セリーナが再び跨り、念じると――――まだ飛び方に不安定さはあるが、まさに翼竜そのものの素早い滑空飛行を伴い、素早く辺りを飛び回れるようになった。
「――凄いじゃあないか、セリーナ!! 立派な竜を創り出したよ!!」
――仲間の鍛錬の成功に、心から喜ぶグロウ。
「――ふうっ……もう少し安定感と高度が欲しい所だが……まあ、悪くないか…………」
自身の練気による具現化にやや厳しい言葉を付けつつも、セリーナは笑顔でそう呟き、練気を解いた。
「――よーしみんな! 一旦休憩だ。水分を摂るんだ。」
組手をしていたエリーとガイもカシムの声を聴き、臨戦態勢を解いた。
「――みんな……すっげえじゃあないっスか!! 3ヶ月でここまで強くなるなんて!!」
「あ、イロハ! ういーっす!!」
「おめえも来てたか。気が付かなかったぜ。」
挨拶をするエリーとガイ。イロハは心から感嘆の声を上げ、一行に拍手を贈った。
「イロハ。お前は……練気とは違う、いわば商人や職人としての武者修行をしていたわけだな。何か成果はあったのか?」
セリーナの問いかけに、イロハは大きく首肯する。
「――ハイっス!! 業物もいっぱい作ったっスよ!! 例えばっスねえ――よっ、と…………」
イロハは手持ちのインスタント・ポータブル・カプセルを取り出し、中から戦闘用の巨大なハンマーを取り出し、担いだ。
「――皆さんの練気の修行を見て、自分なりに調べて、創ってみた物もあるっス…………あの岩がイイっスかねえ――――」
すると、イロハは今度は小さな薬のカプセルを懐から取り出した。徐に飲み込むと――――
「――えっ!? 嘘ッ!? それは…………練気!!」
――エリーが声を上げた通り、イロハは練気の修行を少ししかしていなかったはずなのに、急に充分な出力の練気を立ち昇らせた!!
「――これはインスタントなモンで、一時的でしかないっスが、練気使いでなくても練気が少しの間使えるようになる妙薬っス。ニルヴァ市国の学者さん、商人さん、僧侶さん、職人さんとの共同開発っスよ。ウチの場合は、何かと便利なエネルギー……電気を発生させる
イロハはバチバチと電気をスパークさせながらハンマーに電気を集中し――――思いっ切り地に振り下ろした!!
――地は鳴動し、激しい電撃を波立たせながら自然界の雷に匹敵する力が走り――――的にした岩を一瞬で焦がし、割り砕いた。
――――カシムとヴィクター含め、一同、唖然。
まさか一時的とはいえ、練気を使えるようになるほどの妙薬を創り出してしまえるとは――――ある意味、エリーやグロウの力以上に
「――パワーは見ての通りッス。後は……まあ、脳の電気信号を刺激して素早く走れるようになったり、バッテリーを充電するくらいっスかねえ。どりゃりゃりゃりゃ!!」
全身に練気から変化させた電気を纏い、手足を素早く動かして猛スピードで走り回るイロハ――――イレギュラーな練気の会得法とはいえ、その効力はまさに練気の達人クラスのものだった。
「――――んな便利にも程がある薬が創れるんだったら、俺らの努力は何だったんだっつーの……」
「何言ってんの、ガイ! 貴重な戦力がまた増えたのよ? それに練気使いになれるっつっても短い時間らしいし。いいじゃん、いいじゃん!! はっはっはっはっはー!!」
「――ふはははははは!! どうっスか、この油虫も真っ青な素早い動きは!! ふははははははあーっ!!」
――――けたたましい嬌声を上げて元気に走り回るイロハ。最も常識外れな練気使いの登場に、ある者は頭を抱え、ある者は素直に歓喜するのだった――――
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