4-4:魔王城の現在
「おはよう、バルン」
「ああ、おはよう」
朝、ノエラが起きてきた、今日はもう頭痛もなく体調もよさそうだ。
「朝食は食べられるな」
「うん、今日は大丈夫」
「そうか、すぐ用意しよう」
ロミロフがいないいつもの朝だ、今回は予めロミロフが言ってから出発したこともあり、拗ねたりはしていない。
「そろそろノエラも一緒に買い物にいくぞ、ここ数日は俺一人でしか行っていないから店の親父さんが心配していた」
ノエラはどうしたと行く度に聞かれるのは大変だ、しかもノエラがいないとバルンへの当たりも強くなる。
うっかり殺してしまわないように抑えるのも大変なんだ。
少し待ってノエラの準備ができたようなので出発する。
「お、ノエラ久しぶりじゃねーか」
「お久しぶりです」
久々に来たノエラに店主の顔は柔らかくなる、バルンだけで来た時とは表情が全く違う。
「最近はどうしてたんだい、全然見なかったが」
「ちょっと家にこもってまして、これからは前みたいにくるようにしますよ」
「それは良かったぜ、バルンだけだとなぁ、おまけのし甲斐がなくていかん」
「悪かったな」
そんな理由ではないだろう、と思ったがバルンは言わないでおいた、余計に当たりが強くなるだけだ。
そうして一日の買い物を終えてもすぐには帰らず、ロミロフがいるときと同じようにあまり人通りがないところを歩いて回る。
散歩以上の意味はないが、もうそれが習慣になってしまっていた。
→ → →
ロミロフは魔王城にたどり着いた。
(最初にインクリスの影に会ってからは魔族に出会うこともなく順調に来れたな)
以前来た時に使った道がそのまま使えたし、思ったよりも早く着いた。
(さて、どうするか。インクリスには来ていることはバレているし、忍び込む意味もないか)
もとより忍び込むのは性に合わない、新魔王の顔だけ見たらさっさと帰ることにしようか、一応宝物庫からいろいろとくすねておこうか、とかいろいろ思案している。
とりあえず、新魔王の顔でも見て、一応インクリスの本体がどこかに隠れていないかを探してから帰ることにした。
魔王城正面の大扉を開けてすぐの大広間、魔王バルクロムと戦った場所。
そこはかつてと何にも変わっていない、戦いの際にできた床や壁のひび割れもそのままだ。
魔王城の中は何の音もせず静まり返っており、冷えた空気が溜まっている。
(誰もいない? 新魔王が魔王城にいるんんじゃなかったのか?)
周囲を見回しても、動くものの気配は一切ない。
ロミロフの歩く音だけが響く。
目についた扉を一つ一つ開けていくが、誰もいなく特にめぼしい物もない。
どうやらこの城は完全に放棄されているようだ。
「もしかしたら新魔王の魔王城ってのは別にあるのか?」
独り言に返事はない、もしかしたらインクリスの影がどこからともなく現れるかと思ってのことだったが、あてが外れた。
一応、探索を続ける。
「お、これはいいな」
ロミロフが見つけたのは元々魔王が使っていたと思われる豪奢なベッドだ。
この部屋は魔王の寝室だったのだろう。
一応城の探索は数日かけるつもりだったし、誰もいないしここを寝床にしても問題はないだろう。
→ → →
朝になって、ロミロフは探索を再開した。
結局誰も何もいないみたいだし、もう帰ってもいいのだが、もしかしたら何かあるのではないかと思って探索を続けることにした、一応3日ぐらいは探索してくると伝えたのもあり、宝物庫でも探すか、とも思った。
ひたすらに扉を開け続け、何かないか探していく。
もしかしたら何かいいものがあるかもしれないと思ってのことだ。
思ったよりも魔王城は広く、探索しきれていない区画も多い。
(こりゃあ3日では探索しきれないかもしれないなぁ)
とりあえず、来るのに2日かからないぐらいだったから、4日程探索してから帰ることにしよう、それ以上だと二人を心配させてしまうだろうし。
扉をひたすら開けていくと、本棚がたくさん並んだ部屋を見つけた。
「蔵書室か、何かあるかもしれないな」
一応、場所を記憶しておいて、今度、時間に余裕を持って来ることにした。
そして、他にどんな部屋があるかの探索に戻る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます